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321:犯罪以外の何物でもない
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トックスさんと別れ、移動でタロスさんの家に行くと、人が何人かいた。
若い女の人だ。
移動するときは必ず気配は消す。
抱きかかえられたまま、マティスが上空に飛んだ。
抱えるよりも魚の皮を浮かすほうが自由が利くので出すが、
抱えられているのは同じだ。
「お店に来ていた女の人?」
「そうだろうな。砂漠の端に住んでいたのは知っているんだ。
トックスが知らんと言っても見に来たんだろうな。
なるほど、怖いな。」
「すごい行動力だね。
雨戸付けといて良かったね。無ければガラス窓で中が丸見えだ。」
「中より、ガラス窓がついてる時点で大騒ぎだろう。」
「そうか!じゃ、ここは外さないとね。」
「ここ?誰もいないじゃない。帰ったっていうけど、まだ街にいるのね。」
「ここで待っていれば会えるわ。」
「砂漠が近いから月が昇る前に街に戻らないと。」
「それはみなおなじよ。月が昇る前には帰ってくるわ。」
「はー、素敵ね。わたしみたことあるのよ。
目と腕のことがなければわたしは誘っていたわ!」
「知ってる?領主様の兄弟らしいのよ?」
「もちろん!剣のマティスって有名だったのよ?」
「いろいろあったけど、王都で領主様の護衛も務めたって話!」
「それほんとの話?」
「不遇を乗り越えて、そして、目も腕も治ってるなんて!!」
「いい男だってことには違いないわ!!」
「きゃー!素敵!!」
「セサミンのにーちゃんってばれてるね。
そりゃそうか。外れとかげは前領主の息子、剣のマティスって
知ってるよね?あらま、大変だーね。」
「まったく大変そうに聞こえんな。」
「うふふふふ。仕方がないね。」
『タロスの家の中にあるもの、すべて戻っておいで』
「どうして?」
「だって、月が昇るまでここにいる気だよ?
月が昇っても戻らなければ、街に帰ってくれればいいけど、
”仕方がなく”家に入りましたっていいわけができるでしょ?
そのとき、ガラスとか、トイレとか見られたら困るから。」
「入れぬようにもできるぞ?」
「いや、それはさすがにかわいそうでしょ?
砂漠の夜だよ?砂漠石のことが無くても寒いでしょ?」
「そうか、砂漠石がなければ欲望が膨らむことはないのか。」
「そうだと思うんだけど、ちょっとわたしたちじゃ確かめようがない。
砂漠に埋まってる砂漠石の影響で欲望が膨らむと思うけど、
月の光の影響、砂漠と月の光っていう組み合わせだと思う。
砂漠石が生まれるなら、なんら土台があると考えたほうがいい。
で、その影響で、ここの人たちは、家に入り込むと思うよ?」
「迷惑な。」
「うふふふふ。」
「なぜ、笑う?」
「それだけ、マティスはいい男ってことだからね。」
「ふふ。あなたがそう思ってくれるだけでいい。」
「じゃ、サボテンの森に帰ろう。我らは砂漠の民。
砂漠に住まないとね。」
「そうだな。帰ろう。」
サボテンの森の家に帰れば、
そんなことも忘れて、ゆっくりと過ごす。
月が沈み、タロスさんの家に行くと、まー、ひどいことになっていた。
「・・・家って簡単に燃えるんだね。」
現在進行形で燃えている。
家に侵入したけど、なにもないわ、帰ってこないわで、
月が沈むと同時に家に火をつけて街に戻ったのだろう。
街に向かう道に数人の気配がある。
「タロスさんの家が燃えたときもこれぐらいの煙は上がったのかな?」
「そうだろうな。しかし、街からは見えないからな。」
「燃えると元に戻らないんだよね。1軒損しちゃったね。」
「顔は覚えているぞ?極悪人たちだ、殺しても構わんぞ?」
「あはははは!その顔の方が極悪人だよ。
んー、どうしようかな。ちょっとお仕置きは必要かな?
家に入ることは許したけど、火をつけるってのはちょっと異常だよ?
領主様に相談しようかね。」
「・・・お前の方が極悪人の顔だ。」
「ぐふふふふふ。そう!我らは極悪人!赤い塊夫婦なのだ!!」
廻りの森に延焼しないように海峡石で水を撒く。
プスプスとくすぶっているので、恒例の焼き芋大会だ。
リンゴも焼いてみよう。
アルミホイルが欲しいな。
「なんか、おおきな葉っぱないかな?」
「葉っぱ?」
「そう、お芋とリンゴをくるんで、焼いてみようかな、と。」
「渓谷の木で大きな葉をつけているものがあっただろ?」
「お!そうだそうだ。」
渓谷の植物園を出して大きな葉を数枚もらう。
それに包んで火の下にいれた。
焼きあがるまで、コーヒーでも飲んでまったりだ。
「誰か来たな。」
「ん?」
駱駝馬に乗った守衛さんだ。
あと、もう一人いてる。
「おーい!大丈夫か!
あんたたち!何やってんだ!!」
なにと言われても、焼きリンゴと焼き芋で朝ごはん?
焼きリンゴはバターをのせるとうまい。
シナモンがほしい。
香辛料のこうしを少しかけてちょっぴりスパイシー&スイートに。
「とにかく無事なんだな?おい!領主様に知らせてこい!」
そういうと守衛さんと一緒にいた若い人は取って返していった。
「煙が見えたのか?」
「いや違う。さっき綿畑の門から若い女たちが入ってきたんだ。
砂漠の門から勝手に出たらしいんだが、
どうも怪しいんでな、質問していったら、
あんたが帰らないから火を付けたというじゃないか!
あんたが領主様の兄だったことは皆知ってるんだ。
領主様には連絡が行ってる。いま走った奴が無事を報告するだろう。」
えっ!セサミンに報告が言ってるの?
(セサミナ!)
(あ!兄さん!兄さん!燃やされたってどういうことなんですか?姉さんは?)
(落ち着け、大丈夫だ。慌てるな。無事な報告もすぐ来る。)
(セサミン、大丈夫だから。また詳しいことは話すから。)
(必ず、報告してくださいね)
(うん、守衛さんに説明した後にそっちに寄らせてもらうよ)
(ええ、お待ちしてます)
「砂漠から戻ったら炎が上がっていた。。
森に延焼しないようにはしたが、どうすることもできなくてな。
それで、ま、休憩中だ。」
「よかったら一緒にどうですか?いま、焼きあがったところです。」
「なにを暢気な!ん?しかし、ま、頂こうかな?いい匂いだな。」
持ち出せるものは持ち出したということで、
納得してくれた。
「それで、その若い女たちは?」
「もちろん拘束しているさ。あんたが、領主様の兄であろうとなかろうと
火をつけるんなんざ、犯罪以外の何物でもない。放火は重罪だ。
それに、砂漠側の門と綿畑の門との出入りを
きちんと把握しなくちゃいけないな。これも報告だ。」
おや、こっちからお仕置きする必要もないね。
「これ芋?こっちは?リンゴ?あの酒の?根?へー。
乳酪はしってるよ。香子も?うまいな。」
守衛さんの話では、最近では多妻をとることは少なく、
女の人は余りがちなんだそうだ。
ちょっと前までは引く手あまただったのに、選り好みをしているうちに
誰も相手をしなくなった娘さんたちらしい。
男の方も、1年通い詰めることもなく、早々に結婚の約束をこぎつけることが
多いそうだ。そのほうが、2人でゆっくり過ごせると。
2人で将来を話し合って、時間を掛けて結婚をするというのだ。
うん、普通だ。
そんな話をして守衛さんは帰っていった。
お土産はもちろん、焼き芋と焼きリンゴだ。
守衛の仕事をしているみなで分けてもらうように。
(セサミナ?今から行くがいいか?)
(ええ)
「姉さん!ご無事で!」
「大丈夫だよ、けど、心配かけたね。ありがとうね。」
「お二人になにも害はないとはわかっていたのですが、
どうして?火をつけたと?」
「トックスさんのところから戻ったらタロスさんの家に女の人がいてね、
ま、マティスを狙ってる娘さんたちなんだけどね。」
簡単に経緯を話していく。
「はー。そうですか。
その守衛が言うように放火は重罪、強制労働です。
ああ、出入りの管理もきちんせねば。」
「しかし、砂漠のはずれだ。街での放火は重罪だが、
あの場所では法も届かない。」
「砂漠は誰のものでもないですが、開拓が進めば領地になる。
綿花畑のめどが立ったから王都に申請するつもりです。あの場所も入る。」
「申請すればだろ?まだ、領地ではない。」
「兄さん!」
「セサミン、いいんだよ、わたしも同じ意見だから。
無罪放免ではないよ?領主様からきつく叱ってくれればいいから。
まずね、なんでそんなことをしたんだって聞いてみて?
きっとね、夜になっても戻らなくて、砂漠も近いし、
危険なので家に入らせてもらったっていうよ。
でも、家の中はなにもなかったって。ここは空き家だったんだって。
自分たちはなんでこんなところで月が沈むのを待っているんだろう?
それで馬鹿らしくなって燃やした。
もしくは、暖を取るために火を付けたら燃え移ったっていうかな?
だから自分たちは悪くないって。
そういったらね、
これから住む家なんだから何もないのは当たり前だ。
お前たちも新しく家を建てた後になにもないからと
燃やされてもいいというのだな?って。
あの場所は法は届かないって知恵のある子は反論するかな?
では、お前たちはいかなる時にでも法は守ると?って聞いてみ?
みんな頷くよ。
では、これから先、法を破った時はどんなささいなことでも罰があると思えって。」
「姉さん、なんて重い罰なんだ。」
「?重いのか?」
「重いよ、人間おおかれすくなかれ法は破ってる。
ああ、殺人とか盗みとかは当然しないよ?
でも、法の最初は大抵、人としてどうすべきかをうたってる。
そうでしょ?」
「ええ、人として当たり前のことを説いています。
嘘をつくなとか、弱きものを助けるとか。」
「それを常に守らないといけないのは難しい。それも教えてあげて。
そんなことで罰せられることは今までに聞いたことはないっていうだろうね。
そしたらね、当たり前だって。
みな、していいことと悪いことは判断できるからだって。
法が届かない場所でも、人が住んでいるかもしれない場所に火をつける、
それがいいかわるいかわからない人間には法が必要で罰も必要なんだってね。
そこで、反省して謝罪するかどうかだね。だめなら、ま、砂漠石を使って。」
「わかりました。」
「うふふふふ。夜は寒かろうと、家に入ることは許したつもりなんだけどね。
燃やされると元に戻らないからね。ちょっとしたお仕置きだ。」
「・・・姉さん。よくわたしに任せてくれましたね。余程お怒りのようですが?」
「いや、お怒りというか、怖いなーって。
だって、想像してみ?あんな人数で来て、そこにマティスが帰ってきたとして
なんていうの?結婚しませんか?っていうの?
それとも上から目線で付き合ってもいいわっていうの?あの人数で?
そんなの無理に決まってるじゃない、それが分からないんだよ?
お間抜け通り越して怖いよ。」
「ああ、なるほど。怖いですね。」
「でしょ?じゃ、また、家を建てないといけないから帰るね。
ごめんねセサミン。忙しいのに、手間かけさせるね。」
「いえ、これは領主の仕事ですから。」
「無理しないでね。浄化の時も無理したでしょ?顔色が悪くなった。いつも?」
「ああ、あれはちょっと広範囲をしたので。
ちょと張り切りましたよ。姉さんが見ててくれているので。
いつもはもっと範囲が狭いのであんなことにはなりませんよ。
ああ、あの時に飲んだ水はおいしかった。
あれで、すっと元気になりましたよ。あれは?」
「うん、栄養剤。緊急時の時だけね。だから、無理はしないでね。
ああ、これ、お風呂に入れみ。香木の入浴剤。何回も使えるから。
元気に!って思いながらいれればいいからね。」
「え?香木?ニュウヨクザイ?え?」
「丸くしたの。これだけでもいいにおいするよ?」
「!!!!!」
大絶叫でした。
若い女の人だ。
移動するときは必ず気配は消す。
抱きかかえられたまま、マティスが上空に飛んだ。
抱えるよりも魚の皮を浮かすほうが自由が利くので出すが、
抱えられているのは同じだ。
「お店に来ていた女の人?」
「そうだろうな。砂漠の端に住んでいたのは知っているんだ。
トックスが知らんと言っても見に来たんだろうな。
なるほど、怖いな。」
「すごい行動力だね。
雨戸付けといて良かったね。無ければガラス窓で中が丸見えだ。」
「中より、ガラス窓がついてる時点で大騒ぎだろう。」
「そうか!じゃ、ここは外さないとね。」
「ここ?誰もいないじゃない。帰ったっていうけど、まだ街にいるのね。」
「ここで待っていれば会えるわ。」
「砂漠が近いから月が昇る前に街に戻らないと。」
「それはみなおなじよ。月が昇る前には帰ってくるわ。」
「はー、素敵ね。わたしみたことあるのよ。
目と腕のことがなければわたしは誘っていたわ!」
「知ってる?領主様の兄弟らしいのよ?」
「もちろん!剣のマティスって有名だったのよ?」
「いろいろあったけど、王都で領主様の護衛も務めたって話!」
「それほんとの話?」
「不遇を乗り越えて、そして、目も腕も治ってるなんて!!」
「いい男だってことには違いないわ!!」
「きゃー!素敵!!」
「セサミンのにーちゃんってばれてるね。
そりゃそうか。外れとかげは前領主の息子、剣のマティスって
知ってるよね?あらま、大変だーね。」
「まったく大変そうに聞こえんな。」
「うふふふふ。仕方がないね。」
『タロスの家の中にあるもの、すべて戻っておいで』
「どうして?」
「だって、月が昇るまでここにいる気だよ?
月が昇っても戻らなければ、街に帰ってくれればいいけど、
”仕方がなく”家に入りましたっていいわけができるでしょ?
そのとき、ガラスとか、トイレとか見られたら困るから。」
「入れぬようにもできるぞ?」
「いや、それはさすがにかわいそうでしょ?
砂漠の夜だよ?砂漠石のことが無くても寒いでしょ?」
「そうか、砂漠石がなければ欲望が膨らむことはないのか。」
「そうだと思うんだけど、ちょっとわたしたちじゃ確かめようがない。
砂漠に埋まってる砂漠石の影響で欲望が膨らむと思うけど、
月の光の影響、砂漠と月の光っていう組み合わせだと思う。
砂漠石が生まれるなら、なんら土台があると考えたほうがいい。
で、その影響で、ここの人たちは、家に入り込むと思うよ?」
「迷惑な。」
「うふふふふ。」
「なぜ、笑う?」
「それだけ、マティスはいい男ってことだからね。」
「ふふ。あなたがそう思ってくれるだけでいい。」
「じゃ、サボテンの森に帰ろう。我らは砂漠の民。
砂漠に住まないとね。」
「そうだな。帰ろう。」
サボテンの森の家に帰れば、
そんなことも忘れて、ゆっくりと過ごす。
月が沈み、タロスさんの家に行くと、まー、ひどいことになっていた。
「・・・家って簡単に燃えるんだね。」
現在進行形で燃えている。
家に侵入したけど、なにもないわ、帰ってこないわで、
月が沈むと同時に家に火をつけて街に戻ったのだろう。
街に向かう道に数人の気配がある。
「タロスさんの家が燃えたときもこれぐらいの煙は上がったのかな?」
「そうだろうな。しかし、街からは見えないからな。」
「燃えると元に戻らないんだよね。1軒損しちゃったね。」
「顔は覚えているぞ?極悪人たちだ、殺しても構わんぞ?」
「あはははは!その顔の方が極悪人だよ。
んー、どうしようかな。ちょっとお仕置きは必要かな?
家に入ることは許したけど、火をつけるってのはちょっと異常だよ?
領主様に相談しようかね。」
「・・・お前の方が極悪人の顔だ。」
「ぐふふふふふ。そう!我らは極悪人!赤い塊夫婦なのだ!!」
廻りの森に延焼しないように海峡石で水を撒く。
プスプスとくすぶっているので、恒例の焼き芋大会だ。
リンゴも焼いてみよう。
アルミホイルが欲しいな。
「なんか、おおきな葉っぱないかな?」
「葉っぱ?」
「そう、お芋とリンゴをくるんで、焼いてみようかな、と。」
「渓谷の木で大きな葉をつけているものがあっただろ?」
「お!そうだそうだ。」
渓谷の植物園を出して大きな葉を数枚もらう。
それに包んで火の下にいれた。
焼きあがるまで、コーヒーでも飲んでまったりだ。
「誰か来たな。」
「ん?」
駱駝馬に乗った守衛さんだ。
あと、もう一人いてる。
「おーい!大丈夫か!
あんたたち!何やってんだ!!」
なにと言われても、焼きリンゴと焼き芋で朝ごはん?
焼きリンゴはバターをのせるとうまい。
シナモンがほしい。
香辛料のこうしを少しかけてちょっぴりスパイシー&スイートに。
「とにかく無事なんだな?おい!領主様に知らせてこい!」
そういうと守衛さんと一緒にいた若い人は取って返していった。
「煙が見えたのか?」
「いや違う。さっき綿畑の門から若い女たちが入ってきたんだ。
砂漠の門から勝手に出たらしいんだが、
どうも怪しいんでな、質問していったら、
あんたが帰らないから火を付けたというじゃないか!
あんたが領主様の兄だったことは皆知ってるんだ。
領主様には連絡が行ってる。いま走った奴が無事を報告するだろう。」
えっ!セサミンに報告が言ってるの?
(セサミナ!)
(あ!兄さん!兄さん!燃やされたってどういうことなんですか?姉さんは?)
(落ち着け、大丈夫だ。慌てるな。無事な報告もすぐ来る。)
(セサミン、大丈夫だから。また詳しいことは話すから。)
(必ず、報告してくださいね)
(うん、守衛さんに説明した後にそっちに寄らせてもらうよ)
(ええ、お待ちしてます)
「砂漠から戻ったら炎が上がっていた。。
森に延焼しないようにはしたが、どうすることもできなくてな。
それで、ま、休憩中だ。」
「よかったら一緒にどうですか?いま、焼きあがったところです。」
「なにを暢気な!ん?しかし、ま、頂こうかな?いい匂いだな。」
持ち出せるものは持ち出したということで、
納得してくれた。
「それで、その若い女たちは?」
「もちろん拘束しているさ。あんたが、領主様の兄であろうとなかろうと
火をつけるんなんざ、犯罪以外の何物でもない。放火は重罪だ。
それに、砂漠側の門と綿畑の門との出入りを
きちんと把握しなくちゃいけないな。これも報告だ。」
おや、こっちからお仕置きする必要もないね。
「これ芋?こっちは?リンゴ?あの酒の?根?へー。
乳酪はしってるよ。香子も?うまいな。」
守衛さんの話では、最近では多妻をとることは少なく、
女の人は余りがちなんだそうだ。
ちょっと前までは引く手あまただったのに、選り好みをしているうちに
誰も相手をしなくなった娘さんたちらしい。
男の方も、1年通い詰めることもなく、早々に結婚の約束をこぎつけることが
多いそうだ。そのほうが、2人でゆっくり過ごせると。
2人で将来を話し合って、時間を掛けて結婚をするというのだ。
うん、普通だ。
そんな話をして守衛さんは帰っていった。
お土産はもちろん、焼き芋と焼きリンゴだ。
守衛の仕事をしているみなで分けてもらうように。
(セサミナ?今から行くがいいか?)
(ええ)
「姉さん!ご無事で!」
「大丈夫だよ、けど、心配かけたね。ありがとうね。」
「お二人になにも害はないとはわかっていたのですが、
どうして?火をつけたと?」
「トックスさんのところから戻ったらタロスさんの家に女の人がいてね、
ま、マティスを狙ってる娘さんたちなんだけどね。」
簡単に経緯を話していく。
「はー。そうですか。
その守衛が言うように放火は重罪、強制労働です。
ああ、出入りの管理もきちんせねば。」
「しかし、砂漠のはずれだ。街での放火は重罪だが、
あの場所では法も届かない。」
「砂漠は誰のものでもないですが、開拓が進めば領地になる。
綿花畑のめどが立ったから王都に申請するつもりです。あの場所も入る。」
「申請すればだろ?まだ、領地ではない。」
「兄さん!」
「セサミン、いいんだよ、わたしも同じ意見だから。
無罪放免ではないよ?領主様からきつく叱ってくれればいいから。
まずね、なんでそんなことをしたんだって聞いてみて?
きっとね、夜になっても戻らなくて、砂漠も近いし、
危険なので家に入らせてもらったっていうよ。
でも、家の中はなにもなかったって。ここは空き家だったんだって。
自分たちはなんでこんなところで月が沈むのを待っているんだろう?
それで馬鹿らしくなって燃やした。
もしくは、暖を取るために火を付けたら燃え移ったっていうかな?
だから自分たちは悪くないって。
そういったらね、
これから住む家なんだから何もないのは当たり前だ。
お前たちも新しく家を建てた後になにもないからと
燃やされてもいいというのだな?って。
あの場所は法は届かないって知恵のある子は反論するかな?
では、お前たちはいかなる時にでも法は守ると?って聞いてみ?
みんな頷くよ。
では、これから先、法を破った時はどんなささいなことでも罰があると思えって。」
「姉さん、なんて重い罰なんだ。」
「?重いのか?」
「重いよ、人間おおかれすくなかれ法は破ってる。
ああ、殺人とか盗みとかは当然しないよ?
でも、法の最初は大抵、人としてどうすべきかをうたってる。
そうでしょ?」
「ええ、人として当たり前のことを説いています。
嘘をつくなとか、弱きものを助けるとか。」
「それを常に守らないといけないのは難しい。それも教えてあげて。
そんなことで罰せられることは今までに聞いたことはないっていうだろうね。
そしたらね、当たり前だって。
みな、していいことと悪いことは判断できるからだって。
法が届かない場所でも、人が住んでいるかもしれない場所に火をつける、
それがいいかわるいかわからない人間には法が必要で罰も必要なんだってね。
そこで、反省して謝罪するかどうかだね。だめなら、ま、砂漠石を使って。」
「わかりました。」
「うふふふふ。夜は寒かろうと、家に入ることは許したつもりなんだけどね。
燃やされると元に戻らないからね。ちょっとしたお仕置きだ。」
「・・・姉さん。よくわたしに任せてくれましたね。余程お怒りのようですが?」
「いや、お怒りというか、怖いなーって。
だって、想像してみ?あんな人数で来て、そこにマティスが帰ってきたとして
なんていうの?結婚しませんか?っていうの?
それとも上から目線で付き合ってもいいわっていうの?あの人数で?
そんなの無理に決まってるじゃない、それが分からないんだよ?
お間抜け通り越して怖いよ。」
「ああ、なるほど。怖いですね。」
「でしょ?じゃ、また、家を建てないといけないから帰るね。
ごめんねセサミン。忙しいのに、手間かけさせるね。」
「いえ、これは領主の仕事ですから。」
「無理しないでね。浄化の時も無理したでしょ?顔色が悪くなった。いつも?」
「ああ、あれはちょっと広範囲をしたので。
ちょと張り切りましたよ。姉さんが見ててくれているので。
いつもはもっと範囲が狭いのであんなことにはなりませんよ。
ああ、あの時に飲んだ水はおいしかった。
あれで、すっと元気になりましたよ。あれは?」
「うん、栄養剤。緊急時の時だけね。だから、無理はしないでね。
ああ、これ、お風呂に入れみ。香木の入浴剤。何回も使えるから。
元気に!って思いながらいれればいいからね。」
「え?香木?ニュウヨクザイ?え?」
「丸くしたの。これだけでもいいにおいするよ?」
「!!!!!」
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「私、優様の執事の佐川と申します。この度はお嬢様体験プランご当選おめでとうございます」
(あぁ…!)
今の今まで忘れていたが、2ヶ月ほど前に「お嬢様体験プラン」というのに応募していた。それは無料で自分だけの執事がつき、身の回りの世話をしてくれるという画期的なプランだった。執事を雇用する会社はまだ新米の執事に実際にお嬢様をつけ、3ヶ月無料でご奉仕しながら執事業を学ばせるのが目的のようだった。
「え、私当たったの?この私が?」
「さようでございます。本日から3ヶ月間よろしくお願い致します。」
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