いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
上 下
304 / 862

304:強制労働

しおりを挟む
砂漠に降り立ち、南下していく。
マトグラーサよりで。

月が沈むと同時に砂漠に降りたので朝ごはんはなしだ。
昨日のうちに朝用のご飯はガイライとニックさんには渡してある。
ルカリさんにはイラスト入りのご飯の炊き方をマティスが書いたので
お裾分けがあるかもしれない。多めに炊いたほうがおいしいからだ。



1日目。
渓谷にそれたところに移動。そこで師匠を呼び出す。
走り込みながら、砂漠の出入りを監視している国境まで行く。
気配は消しているので向こうからはわからない。

そこで、半分。お昼を食べる。それからまた走り込み。
もちろん荷重と空気は半分。三つ巴で手合わせしながら進んでいく。
時々方向だけは確認だ。
月が昇る前に、蜘蛛が出てくるので、観察。
師匠の蜘蛛ちゃんも紐をつけて、砂漠に放してみてる。
わたしはそこまで近くで見たくないので、デッキで待機。
マティスと師匠がまじかで観察していた。
潜って帰るあとすぐに砂漠玉は回収。
師匠の蜘蛛ちゃんは潜らず、師匠のもとに帰ってきた。
虫は与えなかったので砂玉を作っていたようだ。
明日はどちらを選ぶかを観察の予定。
すぐに月が昇る。師匠はお弁当をもらい、帰っていった。
また、月が沈めば、ここからスタートだ。

わたしたちは、扉君の家でゆっくり過ごす。
師匠が用意してくれた木材や毛布で
こたつを作ったり、羽毛布団を作ったり。
2人で作るとたのしい。

それを繰り返して、3日目。
結局、蜘蛛ちゃんは虫がいればそちらを食べることだけしかわからなかった。

半分まで進むころに、建物が見える。

「ここですかね。弾丸工場は」

大きな幕の簡易な囲い。
中を見ると、砂を笊に掛けて、砂玉を取り出している。
取り出した後には爆裂が起きるのか、パスン、パスンと聞きなれた音がしていた。
それをまた回収している。爆裂に当たったら大けがだ。
うまくかわしているのか?なんか、頑丈そうなツナギは着ている。
ここで働いているのは5人ほど。そんな囲いが、20ほど見える。

「効率悪いけど、そんなものかな?
これ、月が昇る前に戻るんでしょ?
で、月が沈んでからここに来る?
移動だけでだいぶ時間がかかるね。」
「戻してるのでしょうか?監視している人間の馬しかいてませんよ?
歩き?だったら、もう戻らないと。」
「糸だな。糸が舞ってる。」

マティスがそういうので、
目を凝らすとなるほど、糸だ。師匠もなんとか目視した。

「?糸で制御している?欲が膨らまないように?
でも、なにかで気がそれればダメなんでしょ?」
「わかりませんね。月が出るまで見ておきたいんですがね。」
「師匠?デイの豚の煮込み料理知ってます?」
 「?ええ、もちろん。ハムと同列で有名ですね。」
「あれにね、マティスが改良を加えて、
大蒜を使ったものにしたんですよ。ものすごくおいしい。
ここの観察が終わったら食べましょう。甘味も特別ですよ。」
「なるほど。それは楽しみだ。」



これでなんとか、月の光の影響は受けないだろう。
ダメなら、三角形の定理を出せばいいか。

やはり、見張りの人だけが帰り、
作業している人は残っていた。
蜘蛛が出てくる。それでも作業をしている。

「これはちょっと問題ですね。
強制労働以外で制御、石を使ったものですが、それを行うのは
18か国協定で禁止です。」
「この作業が強制労働なのでは?」
「砂漠での強制労働も禁止ですよ。コットワッツでも
作業している人たちはおそらく制御をかけられていますが、
守るためですよ。
それ以外は街で生活しているでしょ?強制ではなく仕事ですね。
ここの人たちは見る限りここで生活してますね。
限界まで働いで、眠り、食事といえるかわからないものを取っている。
弾丸を作るという意味では作業性はいい。」
「これは違法?」
「なんとも。本人がそう望んでいるといわれればそれまでです。
これ以上は無理ですね。
そうだということが分かっただけで今は充分。」

師匠は自分の腕をつよくひねりながら話している。
欲が膨れ上がっているようだ。

「愛しい人戻ろう。ワイプいいな?」
「ええ。」

急いで戻り、師匠をお風呂にほりこんだ。

その間に食事の用意。豚の煮込みと、あのリンゴのデザートだ。
あとはうる覚えの三角形の定理、正方形を用いた証明を図に書く。
ん?あってる?
証明できてる?
念のため紙で視覚的証明も作っておこう。
問題は説明できるかどうかだ。

しかし、師匠の欲はやっぱりおいしいもの食べたいってことなのかな?
腕を押さえていたからもしかして鍛練か手合わせをしたかったかもしれない。



「いやー、さっぱりしました。
初めてですよ、あんな長時間夜の砂漠にいたのは!
いい経験でしたが2度とごめんですね。」
「師匠、腕にあおたんできてます。」
「ああ、痛みで押さえましたよ。お恥ずかしい。」
「おいしいものでは押さえられませんでしたか?」
「もちろん、押さえれましたよ。ありがとうございます、モウ。
しかし、なんだか気を思いっきり放して、吹き飛ばせばいいなーっとね。」
「うわー。」
「あははは、さ、おいしいものを頂きましょうか?」


「なるほど!にんにくですか?あの風味が効いてますね。
しかし、まろやかだ。うまいですね!」

「ああ、これは、マティス君が考えて?
ははは。いいものを頂きました。これ、わたしには食べさせたくなかったでしょ?」
「え?そうなの?」
「・・・いや、かまわん。また、うまいものを作ろう。」
「?」
「どうだ?ワイプ?落ち着いたか?
まだ、なにか引きずっていないか?できるだけ欲はかなえてやるぞ?」
「砂漠を出たら落ち着くんじゃないの?」
「満たされればな。」
「ああ、引っ張るんだね。これは?」

一応紙に書いた三角定理の証明を渡す。
数字と数式は違うが理解できるだろう。

あとは視覚的証明を紙で表現したもの。

「!!!」

「師匠?」
「黙って!!」

「・・・。」
「・・・。」


「愛しい人、帰ろう。」
「うん、ポットにコーヒー入れとくよ。あと甘いものと。
月が沈んだら、またご飯作るからって、手紙に書いといて。」
「わかった。」

師匠が師匠の世界に入っていったので、帰ることにした。
数学的にあとなにがあっただろうか?
サインコサインタンジェント?だめだ、わかんない。
2次方程式?X?Y?だめだ、覚えていない。

あれで打ち止めでした。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

出来損ない王女(5歳)が、問題児部隊の隊長に就任しました

瑠美るみ子
ファンタジー
魔法至上主義のグラスター王国にて。 レクティタは王族にも関わらず魔力が無かったため、実の父である国王から虐げられていた。 そんな中、彼女は国境の王国魔法軍第七特殊部隊の隊長に任命される。 そこは、実力はあるものの、異教徒や平民の魔法使いばかり集まった部隊で、最近巷で有名になっている集団であった。 王国魔法のみが正当な魔法と信じる国王は、国民から英雄視される第七部隊が目障りだった。そのため、褒美としてレクティタを隊長に就任させ、彼女を生贄に部隊を潰そうとした……のだが。 「隊長~勉強頑張っているか~?」 「ひひひ……差し入れのお菓子です」 「あ、クッキー!!」 「この時間にお菓子をあげると夕飯が入らなくなるからやめなさいといつも言っているでしょう! 隊長もこっそり食べない! せめて一枚だけにしないさい!」 第七部隊の面々は、国王の思惑とは反対に、レクティタと交流していきどんどん仲良くなっていく。 そして、レクティタ自身もまた、変人だが魔法使いのエリートである彼らに囲まれて、英才教育を受けていくうちに己の才能を開花していく。 ほのぼのとコメディ七割、戦闘とシリアス三割ぐらいの、第七部隊の日常物語。 *小説家になろう・カクヨム様にても掲載しています。

【完結】「父に毒殺され母の葬儀までタイムリープしたので、親戚の集まる前で父にやり返してやった」

まほりろ
恋愛
十八歳の私は異母妹に婚約者を奪われ、父と継母に毒殺された。 気がついたら十歳まで時間が巻き戻っていて、母の葬儀の最中だった。 私に毒を飲ませた父と継母が、虫の息の私の耳元で得意げに母を毒殺した経緯を話していたことを思い出した。 母の葬儀が終われば私は屋敷に幽閉され、外部との連絡手段を失ってしまう。 父を断罪できるチャンスは今しかない。 「お父様は悪くないの!  お父様は愛する人と一緒になりたかっただけなの!  だからお父様はお母様に毒をもったの!  お願いお父様を捕まえないで!」 私は声の限りに叫んでいた。 心の奥にほんの少し芽生えた父への殺意とともに。 ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 ※「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※タイトル変更しました。 旧タイトル「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。 他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。 その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。 教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。 まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。 シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。 ★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ) 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

このステータスプレート壊れてないですか?~壊れ数値の万能スキルで自由気ままな異世界生活~

夢幻の翼
ファンタジー
 典型的な社畜・ブラックバイトに翻弄される人生を送っていたラノベ好きの男が銀行強盗から女性行員を庇って撃たれた。  男は夢にまで見た異世界転生を果たしたが、ラノベのテンプレである神様からのお告げも貰えない状態に戸惑う。  それでも気を取り直して強く生きようと決めた矢先の事、国の方針により『ステータスプレート』を作成した際に数値異常となり改ざん容疑で捕縛され奴隷へ落とされる事になる。運の悪い男だったがチート能力により移送中に脱走し隣国へと逃れた。  一時は途方にくれた少年だったが神父に言われた『冒険者はステータスに関係なく出来る唯一の職業である』を胸に冒険者を目指す事にした。  持ち前の運の悪さもチート能力で回避し、自分の思う生き方を実現させる社畜転生者と自らも助けられ、少年に思いを寄せる美少女との恋愛、襲い来る盗賊の殲滅、新たな商売の開拓と現実では出来なかった夢を異世界で実現させる自由気ままな異世界生活が始まります。

処理中です...