いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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302:のんびり

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「あ、ここに出したんだね。
もうすぐ月が沈むね。清々しい。」

早めに起きて外に出ると、呪いの森だった。

緑の木漏れ日がきれい。太陽はないのに。

扉君とデッキを収納して、歩いて鶏館に戻った。
上空に出れないのだ。飛べるが木々の枝を抜けようとすると、
地面に戻ってる。移動もできない。

「閉じ込められた?」
「いや、上に出れないだけだ。ここには歩いて入ってきた。
歩いて戻ろう。それでだめなら、破壊だ。
ここはそういうことがある場所なんだ。
入っても、いつの間にか戻ってるとかな。
あなたが鶏館に施したものと同じようなものだ。」


そう話しながら歩いていくと、あっさり外に出た。
敷地と林の何もない場所で上空に上がると
林に向こうに砂漠は見える。
そういうところなのだと受け入れた。

そこから、鶏館の台所に移動。
師匠の気配はする。わたしたちが入って来たことには気づいているはずなので、
勝手知ったる師匠の家、マティスは料理、わたしはきれいに家を掃除する。
あ、スーとホーのとこに行くのを忘れた。
出発前には顔を出さないと。

また食堂にテーブルと椅子を出す。
ガイライとニックさんも来るのだろうか?


今日はパン食だ。
だって、師匠用のお昼に、おにぎりと唐揚げと卵焼きを作ったから。
もちろん、ガイライとニックさんの分もだ。お弁当だね。


「ワイプ!飯だ!」

朝風呂あがりなのか、ゆったりとした服で、師匠がやって来た。
「オハヨウゴザイマス。
すばらしいですね。来てくれたのはわかったので、風呂に入ってきましたよ。
そのあとすぐおいしい飯が食えるのは、ほんと素晴らしい。
やはり、マティス君、ここに住みなさい。」
「嫌だ。」
「残念です。」
「師匠は結婚とか考えないんですか?」

ガイライもニックさんも師匠も独身だ。
昨日の感じではルカリさんもだろう。


「あー、この仕事をしてると結婚は無理ですね。
軍部も役が付けば難しい。その前に結婚出来ればいいですがね。
役が付いて2年独身なら、大抵独身です。
なので、オート君は今度の雨の日に向けて
頑張ってますよ?」
「おお、それは、頑張ってほしいね。」

なるほど。仕事優先になるのか。ルグは優秀なんだな。


そんな話をしていると、ガイライとニックさんがやって来た。
一応ノックはしてるようだが、入ってくるのは同時だ。


「モウ、オハヨウゴザイマス。」
「モウちゃん、飯を食いに来た。ん?なんだそれ?」
「おはようございます。これは月が沈んだ後、目が覚めていう挨拶ですよ。」


あの後のことを聞いた。
6人は月が昇る前に目が覚めたが、放心状態だったという。
その前に、新人全員を集めて、ニックさんと一通り手合わせもした。
手を抜けば減棒だと脅しもかける。
ほぼ全員があの6人より実力は上だった。
師匠からもらったリストには、その家の収入事情もあったので、
それをもとに個人面談。
6人の貴族がらみの仕事についている家、借金がある家、
それで、金をもらったと報告した。
あとの数人は、その話を聞いて、逆にもらいに行ったそうだ。

「そのもらいに行った人たちを使うのは気を付けてね。
金で動く奴は金で裏切る。だからって与えることはない。
実力は?」
「あの6人より下です。」
「あー、悪知恵が働くタイプね。」
「うまく育てるさ。ダメならそれまでだ。」

そうニックさんは悪い顔で笑った。

朝ごはんが終わると、それぞれに弁当をお持たせてお見送り。
マティスは師匠に木材と毛布の手配を命令していた。
「はいはい、了解ですよ。」
師匠は軽く了承する。
それに満足するマティス、かわいいな。

「ん?ガイライ?挨拶は?」
「モウ、いいのですか?」
「ん?ああ、母の腕から出るなって?あははは。
挨拶は死んでもするもんだよ。おいで。」
「はい。」
「いってらっしゃい、頑張ってね。」
「はい、母さん。」
「ニックさんも無理しないでね、師匠はオート君に押し付けないでくださいね。」
「はははは!まさかー!では、行ってきます。」
「今日はもうここには戻らないからな!また明日でいいな、飯は!」

なにも言ってないのにマティスが言う。
「ええ、お願いします。わたしも今日は月が昇っても戻れそうにありませんしね。
月が沈む前には戻りますよ。」


それぞれが、姿を消していく。
わたしたちも、家の戸締りをして移動する。
やっぱり、直接呪いの森の中には移動できなかった。
歩いていくのは大丈夫。デッキを広げたままだと、上空にも出れるし、移動もできた。
ここになにかしら残しての移動は大丈夫ということか。
木漏れ日がある中で、料理を作り、ジャグジーにはいるのなかなかいいだろうということで、
今日はここでゴロゴロの予定。
呪いの森の植物園、マティスの、渓谷のと植物園を展開するが、
渓谷とマティスのはなんとなく恐縮しているようなようなので、
扉君の中にしまった。
植物同士で縄張り意識があるのだろうか?



半分まではそれぞれで作り物をした。
マティスは甘味の研究、メイガの粉の研究、豚の煮込みの研究。
わたしは、樹石の研究、蜘蛛の唾液とは言いたくないので、
蜘蛛のしずくと呼んだものの研究、
後はメイガの羽根でリボンと薔薇を作ってみる。
蜘蛛のしずくは、瞬間接着剤だ。いいな。これ。

樹石はやはり温度を維持できる。かなり長い間。
これがあれば、各家庭にお風呂というのも夢じゃない。
それに面白いことに泥に埋まっている間はなにも起きない。
虫無しの泥で実験した。
燃やすことは砂漠石を使わないと燃えない。
だから、あの湿地で燃えろといっても大丈夫なんだ。
井戸に入れるのなら凍らない温度を保ってもらうほうがいいかもしれない。
樹石はすばらしい素材だ。使い勝手もいい。

あの泥ごと、もちろん、虫抜きで樹石を買う?
しかし、よその国から買うとなれば高くなるか、その国、イリアスの資源がなくなるか。
コットワッツ近くにないのかな?

「マティス?コットワッツ領内に湿地ってある?」
「湿地?イリアスのようなか?内地、メジャートとナソニールの国境沿いは
湿地だ。しかし、メイガもいない。なにもないぞ?」
「樹石は?」
「あるだろうか?わからないな。コットワッツは砂漠石があるからな。
樹石を使うのは貧乏人だといわれる。
イリアスの人々には悪いがな。」
「なるほど。その湿地って当然、コットワッツの物?だれかのもの?」
「コットワッツ領だが、誰のものでもないな。どうした?」
「樹石がとれれば、砂漠石の代わりになるでしょ?」
「なるほどな。だが、差別意識は強いぞ?」
「ああ、そういうのあるよね。でも、安価で便利ならいいかな?
各家庭にお風呂があればいいと思わない?
熱源は樹石。燃やしてしまわなければ1つでお風呂は賄えるよ。
40日入ってもイリアスで売っていたバケツ2つ分だ。2銀貨。
誰が泥の中から石を回収して、売るかなんだけどね。
あと軽石をどうするか。
それだけの樹石があればいいけどね。
これも、セサミン報告案件だ。」
「そうだな。さ、半分だ。かるく飯にしよう。それからゴロゴロだ。」
「はーい。」




とてものんびりした一日だった。
マティスが作った豚の煮込みは大蒜が効いていてさらにおいしかった。
乳で煮てるから、食べた後のあの臭さもない。
すばらしい。
甘味も素晴らしかった。
モモとウリがリンゴサイズになっていて、炭酸水のなかにはいっていた。もちろんリンゴも。
軽いワインで割っているフルーツカクテル。おいしい。
やはり同時に食べるが正解だ。



今度は寝落ちすることもなく、ゆっくり、ゆっくり楽しんだ。













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