いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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292:時空を渡りし旅人

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1日が早い。16時間といったところか。
フロント?というのだろうか、息子さん、ホスン君に出かけることを伝え、
そのまま、戻らないので清算してもらう。
「なぁ、伯父貴はそんなに強いのか?
あんたとやり合ったのは見たよ。すごかった。それしか言えない。
客の何人かはあれは誰だと聞いてきたから、伯父貴といったら、笑われた。
そんな冗談はいいって。
それほど、伯父貴はなにもしないんだ。おふくろが言った話も初めて聞いた。
親父は伯父貴がいればいいっていつも言ってた。
さっき戻ってきたよ。
伯父貴は2度とここには戻らないつもりだったらしいけど、
親父がダメだってさ。二月に1度は帰ってくる約束をしたらしい。」
「ああ、そうなるだろうな。二月に1度か。ははは、ニックも頑張ったな。」
「去年のあの子、強くなったって?女の子だろ?3日で?」
「あの年ではいいんじゃないか?村で一番らしい。」
「俺も強くなれるかな?」
「?23か?どうだろうな。今からか?基礎鍛錬は?」
「まったく。けど、体力はある。あんたは?いつから始めたんだ?」
「私は13歳だ。」
「10年遅いってことか?10年早くやっておけば俺も強くなれていたか?」
「そうだな、経験はどうしようもないな。」
「そんな・・。」

あるよね、そういうのって。でも、笑っちゃう。ここの10年て、
寿命が長いんだから、今からやればいい。

「ふふ。」
「何がおかしい!」
「いやいや、おばちゃんがなんとかしてやろうか?」
「え?」
「10年遅いからいまからやり始めてものになるかどうか悩んでるんだろ?」
「そ、そうだ。」
「で、ニックさんは二月に一度は帰ってくる。素晴らしき師匠はいるわけで
環境はばっちりだと。」
「そうだ。」
「ただ、今からやってどうなの?というところだよね。」
「そうだ。」
「なら、大丈夫!おばちゃんもそういうの経験したよ?
そしたら、この方法でなんとかなった!どう?してやろうか?」
「頼む!」
「うふふ。いくよ~。」

ちょっと、気合を入れて、
仮面ライダーの変身ポーズをとり、

「はっ!!
汝!時空の壁を越え、10の年月より、
今、この過ぎし時へと戻ってきた!
時空を渡りし旅人よ!生きし時へと戻ること叶わぬが、
かの時の後悔をいま打ち破らん!!
精進せよ!!」

「「「?」」」

「モウちゃん?それ何?そっちにある何か?」
「あれ、ニックさん、お帰り。そっちって?
ああ、違うよ?今、ホスン君は10年後から戻ったのよ。」
「へ?」
「おばちゃん?大丈夫か?」
「うっ。自分でおばちゃんというのはいいけど、
若い子に言われるとものすごいダメージがあるね。
こんなに深手を負ったのは初めてだ。
ホスン君は最強かもしれない。」
「小僧!表に出ろ!」
「ひぇ!」
「やめろ!俺の甥っ子に殺気をあてるな。で?どういうこと?」
「ああ、えっとね、ホスン君?もっと早く始めればよかった、とか、
今からやっても間に合わないとか、遅いとか、
10年前に戻れたらって考える人はね、結局何もしないで、
また、10年後に同じ様に後悔するのよ。
ホスン君はこのまま何もしないで、また、中庭で見たような手合わせを見て
伯父貴にあのとき教えてもらえばよかったってまた後悔するの。
だからね、その時から戻ってきたのよ!今!
今からやったって大丈夫!ものになる!
精進あるのみ!!」
「ああ、なるほど。そうか、そうだな。
伯父貴?俺も槍を教えてほしい!お願いします!!」
「あ、ああ。かまわない。だが、明日出ることは決まってるんだ。
今日、一日で2か月分教えてやろう。準備しとけ。
動きやすい服に着替えてこい。」
「はい!」

ホスン君は喜んで奥に引っ込んでしまった。
「ホスンが、はいだと。初めてだ。
モウちゃん、さっきの話、いいな。
俺にもしてくれ。俺は20年、いや、もっとだ。あの時に戻りたい。」
「ん?今のってあれよ?ぐだぐだ過去に戻りたいっていう奴にいう戯言よ?
なにも行動を起こさない若者の後押しにはいいけど、
実際に数十年?それって、かなり年季がはいってるね。
それはそれで、後悔したことを受け入れるのも人生よ?」
「はははは、厳しいな。わかってる。自分の気持ちを整理したいだけだ。」
「愛しい人、してやれ。」
「そう?じゃ、するよ?」

ではということで。
もう一度変身ポーズ。

「はっ!!
汝!!時空の壁を越え、
今、過ぎし時へと戻ってきた!
時空を渡りし旅人よ!生きし時へと戻ること叶わぬが、
かの時の後悔をいま打ち破らん!!
精進せよ!!」

「・・・はははは。かの時の後悔をいま打ち破らん、か。」
「それは話をしてくれた辛いこと?」
「そうだ。後悔したんだ。臣の腕をささげた。軽い気持ちでだ。
臣の腕で縛り付けた。なのに、そのあとは何もしなかった。
20年前、それを知って後悔したよ。間に合っていればまだしも、
遅かった。どうにも手掛かりもなかった。とっくの昔に。
ずっと待っていたかもしれん。臣の腕なんて軽い気持ちでささげるもんじゃないんだ。
ささげたこっちは、それを支えにできるが、ささげられた方はどうだ?
常にこころの隅にそれがあるだろ?待っていたかもしれん。
負担になっていたかもしれん。」
「ん?その臣の腕って、あれ?セサミンとガイライがしてくれた奴?
それをささげて、そのままで、20年前になんかあったけど助けられんかったってこと?」
「そうだ、サナカルタっていう国がある南にある。その前の国、イナスドラの国王だ。
子供だった。国交を開通する話になって、軍部から俺が派遣された。
穏やかな国だ。その国王は本当に子供だったんだが、
そいつにな。
子供なのに国王だろ?好きなことを、自分で考えて生きたことがなかった。
だから言ったよ、

”臣の腕をあなたに捧げましょう、
あなたはあなたを守る腕を手に入れた。
主よ、こころの赴くまま生きてください。
わたしはすべてからあなたをお守りしましょう。”
てな。
戯言だ。嬉しそうに笑ったよ。子供らしくな。
それは素敵なことだと。まずは何をしようかと、嬉しそうにな。
俺がいてる間は、子供らしく遊んだ。やれ、あの木の上に登ろう、
やれ、池を作ってみようとな。
それで、派遣期間が終わっても、臣の腕はささげたまま戻ってきた。
臣の腕をささげたこっちは励みになった。
安心感があったのさ。守るべきものがあるってな。
実際には守ってないのにな。
国交の話が飛んだのはいいんだ。逆にそのほうがいい。
あの国は穏やか過ぎるからな。
20年前に南の遠征の後始末に行った。
5人ほど連れてな、交流が始まった国の名前を変えたサナカルタに出向いた。
ものすごい歓待を受けたよ。その時の部下は死んだことにしてくれって、
ここで新たな生活を送りたいってさ。
勝手にすればいい。
そこで、別れた。あとは前国王がどうなったかを聞けばいいと、
身軽になったほうがいいと思ったんで、止めもしなかった。
もともとそのつもりでついてきたのはありありとわかっていたからな。
前国王は単身逃亡したと聞いた。
サナカルタ族が攻めて来たと。あのちびっこが待っていたかもしれない。
守る腕を手に入れたと最後まで戦っていたかもしれない。
裏切ったんだ。期待させたまま、こっちはなにもしなかたんだ。
そう思うとな、もう、なにもかもよくなって、
そのまま、こっちに帰ってきた。逃げたんだ。
わらうだろ?ははは。」
「んー、笑わないけど、ほんとうに戻ったとして、
その子?前国王さんに腕は捧げないってこと?」
「いや、戻ったとしても捧げるだろう。」
「?じゃ、単身逃亡したのを助けたかったと?」
「無理だろう。国が違う。どちらにしろ間に合わない。」
「?じゃ、戻ってどうしたいの?」
「捧げたことを後悔したくない。後悔したことを取り消したい。
あの子が恨んでいても、それを受け入れたい。」
「はー、なるほど。要は気持ちの持ちようだと。」
「そうだ、あははは。簡単なことなんだがな。
モウちゃんに言われたらなぜか大丈夫な気がするんだ。
ありがとう。」
「そうなの?だったらいいけど。」
「伯父貴!これでいいか?」
「ああ、いいな。じゃ、湖に行こう。
ああ、あの温泉、アックと2人で入った。宿で管理するってさ。
大変だったんだ、1月に1度は帰って来いって。
移動のことを知らないのにだ。
往復のことを考えてみろ、月の半分は馬の上だ。
それをなだめて、温泉入れて、忙しくなる、客も増えるって、
おだてて、俺にかまってる暇なんかないって。それで、やっと2ヵ月に1度になった。
弟って奴は結局自分の思い通りに兄貴を使いやがる。」
「そんなもんだろ。」
「そうなんだろうな。ああ、明日は、一度、月が沈む前に、ここに来てくれるか?
やはり長距離の移動は不安なんだ。
一緒に移動して、来なかったら悪いが、ガイライの時のように呼び寄せてくれるか?」
「わかった。」


ニックさんと別れて街に出る。
アヒル羽毛回収だ。


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