いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
上 下
235 / 863

235:願望

しおりを挟む



「ほお、二刀流?それはそれは。」
「師匠もやりましたか?」
「ええ、もちろん。ただ、1対1では実戦向きではないと感じたんですよね。
極めるまで行ってないんですよ。それを目指すのも面白いかもしれませんね。
ドーガー?一緒に頑張りましょうか?」
「ええ!ぜひ!では、わたしもワイプ殿の弟子になるのですか?」
「ああ、それはないですね。わたしの弟子の末席はマティス君となってるので、
マティス君を超えたらいいですよ?」

師匠はマティスをどうやっても末席、一番下に置いときたいようだ。
マティスを超えるなら、師匠と同格、それ以上だ。
わたしは一番弟子なので、ずっと2人だけの弟子となる。

「そうですか。」
「がっかりしないですください。わたしと一緒に鍛錬するのですから、同士ですよ?」
「!!よろしくお願いいたします!!」

鍛錬馬鹿と単純馬鹿だ。


「ルグ、ドーガー、すまない。
お前たちの試合を見ていなかった。主失格だ。」
「いえいえ、研究のほうが大事です。」
「そうです。セサミナ様。
わたしは負けてしまいましたが、得るものは勝利以上です。
安心してください。」
「ああ、ありがとう。」
「セサミン、それでなんか面白いことわかった?」
「ええ、姉さんの言うように、同じ大きさでも他の貝とは合いません。

それに、見ててください。」

コールオリンを1つ中にいれ、閉じる。
きれいだ。

「これを開けてなかのを取り出してみてください。」
「ん。」

ダメだ。手が滑るのか、布で汗を拭ってもダメ。
「ダメだ。」

マティスに渡してみる。ジャムのフタのようにどこかのタイミングで開くかな?
「ダメだな。」

師匠も、
「閉じてますね。」
トックスさん、ルグ、ドーガーと挑戦するがダメだった。


「ここにちいさな隙間があるでしょ?ここに蜘蛛の糸のさきで触れると、ほら?」

パカリと開き、コールオリンが転がった。

「おお!!」

「面白い!なんかセンサーがあるのかな?
その貝は生きてはないからね。そこら辺に細い糸が触れると、
丁番が開くような仕組みがあるかもしれないね。」
「ええ、おそらく。ただ、コールオリンが入っていない状態では簡単に開きます。
コールオリンが入った時だけ、蜘蛛の糸以外では開きません。
ナイフで無理矢理開くこともできませんでした。」
「へー。身の中にあるときは開いたのにね。これ、自分のコールオリンなのかな?」
「自分の?」


パンパンパン


技場から乾いた音が聞こえた。

次の試合が始まっていたのだ。



第13試合

中央院 ポリス 対 ルカリア ライガー


「銃?」
「ええ。今回、マトグラーサの宴会で配ったそうですよ。
女性でも簡単に護衛ができると。あなたと対戦したものは、その時初めて、
銃を持った者たちでした。
連射までも開発できていたわけか。まずいな。」

師匠が考え込んでいる。
そりゃ、連射ができる銃ができた時点で歴史が、戦い方が変わるからか。



パンパン


何を撃ってるんだろう?やはり鉛玉?


精度が悪いのか、腕が悪いのか。
中央院のポリスは避けている。

構えて狙って撃つ。遅いわな。


パンパンパンパンパンパンパン

数うちゃ当たるって奴か。
あ、当たった。


「勝者 ライガー!」


歓声が上がる。
銃の連射という画期的なものを目のあたりにしたから。
怖いな。

「愛しい人、何が怖い?」
「ん?聞こえた?
これから銃の時代になるのよ。剣や、槍、棒は廃れていく。
武道としては残るよ。もちろん。
でも、戦場では銃だ。もっと、100も200も連射できる銃ができる。
お肉が焼ける時間で3000発とかね。
それを担いでの人海戦術。あたれば死ぬんだもの。爪の先ぐらいの弾でね。
今から防弾性能があるものを作るには時間がかかる。
その間に、銃の性能も上がる。だから怖いなって。」
「・・・・」
「うーん、でもそれは故郷の話。ここではどうだろう?
砂漠石大先生の力をどこまで理解できるかだろうね。
みんなが着てる下着は防ぐよ?頭を撃たれたらダメだけど。」
「それは、剣でも、槍でも同じだ。」
「ま、そうだね。でもさ、ここから、向こうの技場の端にいる人にはあてられないでしょ?
銃ならできるのよ。本職さんはね。
さ、次はマティスだね。
糸だけ欲しいから、できたら糸を出させてから瞬殺で。
でも、手の内がばれてるとわかってるから、気を付けて。
風で糸を紡げる。」
「わかった。」
「セサミン?さっきの話は後でね。」
「ええ、もちろん。」


ガイライさんの戻ってきて
皆で観戦する。


第14試合
開始

歓声は大きい。
相手、彼女に対してもだ。


「始め!」


剣対剣。

「糸、試合中に出してるわけじゃないですね。マティスが動くだけで、糸が寄ってきてる。」
「モウ殿、見えますか?」
「ええ、うっすらとは。ドーガーは試合中見えてた?」
「いいえ。ただ、そうなんだろうなとは事前に聞いていたので。
すこしずつお澄ましを飲んでいました。」
「うん、さすがだよ。マティスも見えてるから、どうするんだろ?
あ!!あ、あ、あの、わたしちょっと台所にいってるから。終わったら呼んで?」
「え?姉さん?」
「ガイライ殿。彼女が何を言ってるかだけ聞いておいて。」
「ガイライとお呼びください。あの、具合が悪いのですか?顔が赤い。」
「大丈夫、大丈夫。師匠、セサミン。わたし、マティスと話している状態なの。」
「ああ、わかりました。」

(愛しい人、一人になれた?)




「見えていますね。糸が。」
「・・・」
「前回と違って対処法もご存じなようだ。
しかし、カラーム様にお譲りしたものとこれは違いますから。
ほら、だんだん、動かななくなってきましたでしょ?
ほら、今度はわたしくしの思うがまま。」





(マティス?なんで?試合は?)
(ん?相手が思うように私を動かしてくれるようだ。ならば、その間、私は愛しい人と話がしたい)
(いつでもできるのに?)
(この頃はゆっくり話していなっただろう?寝るときは別のことで忙しいから)
(そ、そうだけど。じゃ、一人にならなくてもいいんじゃないの?)
(みなのまえで?私はいいけど?)
(いや、その考えてるピンクな想像をやめてくれたら大丈夫よ?)
(ぴんく?色?モモ色のこと?違うな、ああ、こういうこともぴんくというのだな。)
(いや、覚えななくていいから。マティス視点だから、自分のあられもない姿が頭にはいってくる)
(ああ、かわいいだろ?)
(異議あり!これはマティスの願望が入ってない?わたしこんなん?)
(そのままだぞ?私の願望というならこんなことをしてみたいな)


ギャーーーー!!



「ああ、残念。閉じてしまった。?重いな。」

『風よ、糸を紡いでおくれ。元なるものも我が手の中に』

愛しい人のまねをして、右手をくるりと廻す。
糸玉のようになってしまった。なかに何かいる?蜘蛛か?

「な、なにをした!!?」
「ああ、仕事は終わりだ。」




「勝者、マティス!」

もう、棄権してもいいだろう。


「私はこれで棄権する。」
「え?」
「この試合の勝者は私でいいが、次の試合は棄権だ。」
「そ、その理由を聞いても?」
「十分剣技は披露したからだ。」
「はぁ。」

はやく戻らなくては。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

異世界隠密冒険記

リュース
ファンタジー
ごく普通の人間だと自認している高校生の少年、御影黒斗。 人と違うところといえばほんの少し影が薄いことと、頭の回転が少し速いことくらい。 ある日、唐突に真っ白な空間に飛ばされる。そこにいた老人の管理者が言うには、この空間は世界の狭間であり、元の世界に戻るための路は、すでに閉じているとのこと。 黒斗は老人から色々説明を受けた後、現在開いている路から続いている世界へ旅立つことを決める。 その世界はステータスというものが存在しており、黒斗は自らのステータスを確認するのだが、そこには、とんでもない隠密系の才能が表示されており・・・。 冷静沈着で中性的な容姿を持つ主人公の、バトルあり、恋愛ありの、気ままな異世界隠密生活が、今、始まる。 現在、1日に2回は投稿します。それ以外の投稿は適当に。 改稿を始めました。 以前より読みやすくなっているはずです。 第一部完結しました。第二部完結しました。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

レベルカンストとユニークスキルで異世界満喫致します

風白春音
ファンタジー
俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》は新卒で入社した会社がブラック過ぎてある日自宅で意識を失い倒れてしまう。誰も見舞いなど来てくれずそのまま孤独死という悲惨な死を遂げる。 そんな悲惨な死に方に女神は同情したのか、頼んでもいないのに俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》を勝手に転生させる。転生後の世界はレベルという概念がある世界だった。 しかし女神の手違いか俺のレベルはカンスト状態であった。さらに唯一無二のユニークスキル視認強奪《ストック》というチートスキルを持って転生する。 これはレベルの概念を超越しさらにはユニークスキルを持って転生した少年の物語である。 ※俺TUEEEEEEEE要素、ハーレム要素、チート要素、ロリ要素などテンプレ満載です。 ※小説家になろうでも投稿しています。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

姫騎士様と二人旅、何も起きないはずもなく……

踊りまんぼう
ファンタジー
主人公であるセイは異世界転生者であるが、地味な生活を送っていた。 そんな中、昔パーティを組んだことのある仲間に誘われてとある依頼に参加したのだが……。 *表題の二人旅は第09話からです (カクヨム、小説家になろうでも公開中です)

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

処理中です...