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235:願望
しおりを挟む「ほお、二刀流?それはそれは。」
「師匠もやりましたか?」
「ええ、もちろん。ただ、1対1では実戦向きではないと感じたんですよね。
極めるまで行ってないんですよ。それを目指すのも面白いかもしれませんね。
ドーガー?一緒に頑張りましょうか?」
「ええ!ぜひ!では、わたしもワイプ殿の弟子になるのですか?」
「ああ、それはないですね。わたしの弟子の末席はマティス君となってるので、
マティス君を超えたらいいですよ?」
師匠はマティスをどうやっても末席、一番下に置いときたいようだ。
マティスを超えるなら、師匠と同格、それ以上だ。
わたしは一番弟子なので、ずっと2人だけの弟子となる。
「そうですか。」
「がっかりしないですください。わたしと一緒に鍛錬するのですから、同士ですよ?」
「!!よろしくお願いいたします!!」
鍛錬馬鹿と単純馬鹿だ。
「ルグ、ドーガー、すまない。
お前たちの試合を見ていなかった。主失格だ。」
「いえいえ、研究のほうが大事です。」
「そうです。セサミナ様。
わたしは負けてしまいましたが、得るものは勝利以上です。
安心してください。」
「ああ、ありがとう。」
「セサミン、それでなんか面白いことわかった?」
「ええ、姉さんの言うように、同じ大きさでも他の貝とは合いません。
それに、見ててください。」
コールオリンを1つ中にいれ、閉じる。
きれいだ。
「これを開けてなかのを取り出してみてください。」
「ん。」
ダメだ。手が滑るのか、布で汗を拭ってもダメ。
「ダメだ。」
マティスに渡してみる。ジャムのフタのようにどこかのタイミングで開くかな?
「ダメだな。」
師匠も、
「閉じてますね。」
トックスさん、ルグ、ドーガーと挑戦するがダメだった。
「ここにちいさな隙間があるでしょ?ここに蜘蛛の糸のさきで触れると、ほら?」
パカリと開き、コールオリンが転がった。
「おお!!」
「面白い!なんかセンサーがあるのかな?
その貝は生きてはないからね。そこら辺に細い糸が触れると、
丁番が開くような仕組みがあるかもしれないね。」
「ええ、おそらく。ただ、コールオリンが入っていない状態では簡単に開きます。
コールオリンが入った時だけ、蜘蛛の糸以外では開きません。
ナイフで無理矢理開くこともできませんでした。」
「へー。身の中にあるときは開いたのにね。これ、自分のコールオリンなのかな?」
「自分の?」
パンパンパン
技場から乾いた音が聞こえた。
次の試合が始まっていたのだ。
第13試合
中央院 ポリス 対 ルカリア ライガー
「銃?」
「ええ。今回、マトグラーサの宴会で配ったそうですよ。
女性でも簡単に護衛ができると。あなたと対戦したものは、その時初めて、
銃を持った者たちでした。
連射までも開発できていたわけか。まずいな。」
師匠が考え込んでいる。
そりゃ、連射ができる銃ができた時点で歴史が、戦い方が変わるからか。
パンパン
何を撃ってるんだろう?やはり鉛玉?
精度が悪いのか、腕が悪いのか。
中央院のポリスは避けている。
構えて狙って撃つ。遅いわな。
パンパンパンパンパンパンパン
数うちゃ当たるって奴か。
あ、当たった。
「勝者 ライガー!」
歓声が上がる。
銃の連射という画期的なものを目のあたりにしたから。
怖いな。
「愛しい人、何が怖い?」
「ん?聞こえた?
これから銃の時代になるのよ。剣や、槍、棒は廃れていく。
武道としては残るよ。もちろん。
でも、戦場では銃だ。もっと、100も200も連射できる銃ができる。
お肉が焼ける時間で3000発とかね。
それを担いでの人海戦術。あたれば死ぬんだもの。爪の先ぐらいの弾でね。
今から防弾性能があるものを作るには時間がかかる。
その間に、銃の性能も上がる。だから怖いなって。」
「・・・・」
「うーん、でもそれは故郷の話。ここではどうだろう?
砂漠石大先生の力をどこまで理解できるかだろうね。
みんなが着てる下着は防ぐよ?頭を撃たれたらダメだけど。」
「それは、剣でも、槍でも同じだ。」
「ま、そうだね。でもさ、ここから、向こうの技場の端にいる人にはあてられないでしょ?
銃ならできるのよ。本職さんはね。
さ、次はマティスだね。
糸だけ欲しいから、できたら糸を出させてから瞬殺で。
でも、手の内がばれてるとわかってるから、気を付けて。
風で糸を紡げる。」
「わかった。」
「セサミン?さっきの話は後でね。」
「ええ、もちろん。」
ガイライさんの戻ってきて
皆で観戦する。
第14試合
開始
歓声は大きい。
相手、彼女に対してもだ。
「始め!」
剣対剣。
「糸、試合中に出してるわけじゃないですね。マティスが動くだけで、糸が寄ってきてる。」
「モウ殿、見えますか?」
「ええ、うっすらとは。ドーガーは試合中見えてた?」
「いいえ。ただ、そうなんだろうなとは事前に聞いていたので。
すこしずつお澄ましを飲んでいました。」
「うん、さすがだよ。マティスも見えてるから、どうするんだろ?
あ!!あ、あ、あの、わたしちょっと台所にいってるから。終わったら呼んで?」
「え?姉さん?」
「ガイライ殿。彼女が何を言ってるかだけ聞いておいて。」
「ガイライとお呼びください。あの、具合が悪いのですか?顔が赤い。」
「大丈夫、大丈夫。師匠、セサミン。わたし、マティスと話している状態なの。」
「ああ、わかりました。」
(愛しい人、一人になれた?)
「見えていますね。糸が。」
「・・・」
「前回と違って対処法もご存じなようだ。
しかし、カラーム様にお譲りしたものとこれは違いますから。
ほら、だんだん、動かななくなってきましたでしょ?
ほら、今度はわたしくしの思うがまま。」
(マティス?なんで?試合は?)
(ん?相手が思うように私を動かしてくれるようだ。ならば、その間、私は愛しい人と話がしたい)
(いつでもできるのに?)
(この頃はゆっくり話していなっただろう?寝るときは別のことで忙しいから)
(そ、そうだけど。じゃ、一人にならなくてもいいんじゃないの?)
(みなのまえで?私はいいけど?)
(いや、その考えてるピンクな想像をやめてくれたら大丈夫よ?)
(ぴんく?色?モモ色のこと?違うな、ああ、こういうこともぴんくというのだな。)
(いや、覚えななくていいから。マティス視点だから、自分のあられもない姿が頭にはいってくる)
(ああ、かわいいだろ?)
(異議あり!これはマティスの願望が入ってない?わたしこんなん?)
(そのままだぞ?私の願望というならこんなことをしてみたいな)
ギャーーーー!!
「ああ、残念。閉じてしまった。?重いな。」
『風よ、糸を紡いでおくれ。元なるものも我が手の中に』
愛しい人のまねをして、右手をくるりと廻す。
糸玉のようになってしまった。なかに何かいる?蜘蛛か?
「な、なにをした!!?」
「ああ、仕事は終わりだ。」
「勝者、マティス!」
もう、棄権してもいいだろう。
「私はこれで棄権する。」
「え?」
「この試合の勝者は私でいいが、次の試合は棄権だ。」
「そ、その理由を聞いても?」
「十分剣技は披露したからだ。」
「はぁ。」
はやく戻らなくては。
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