いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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202:箱

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「兄さん?」
「ああ、いいんだ。任せておけばいい。
それより、留守の間に例の女がまた来たそうだ。そうだな?ルグ?」
「はい。屋上にいたときに。馬の気配がするというので、下を見ますとそうでした。
なにか、言ってるようでしたが、必要のない音だったようで聞こえませんでいた。」
「それと、資産院の者だろう?3人、うちのクッションも持って帰ったそうだ。
返せ!」
「3人?院長御付きのでしょうかね?その3人は資産院ではないです。
院長直の護衛です。」
「どちらにしろ、彼女の親切を盗みで返したんだ。
次に会った時までに返さないと死ぬことになると言っておけ。」
「わかりました。そのままお伝えしておきましょう。」
「ついでにあの女の意図も聞いておいてくれ。なにがしたいんだ?」
「そりゃ、マティス君と結婚したいんでしょ?わたしでもわかりますよ?」
「?私はわからん。」
「最初はセサミナ殿のところに来たんでしょ?資産受け取りのことは
王族は知っている話です。あわよくば、おこぼれがもらえるかもしれないと。
財産狙いですね。
そこに、マティス君が帰ってきた。手っ取り早く独身であろうマティス君と
結婚出来ればいい目ができる。弟より兄の方が権力があるという考え方は
王都王族では強いですからね。そんなところじゃないですか?」
「迷惑な。」
「はっきり、きっぱり、皆の前で断るべきですね。
ラルトルガの娘さんのように言ってもわからない類かもしれませんが。」
「なるほど。」
「兄さん!悪い顔してます!敵をつくるようなことはやめてください!」
「そういえばお前はいち早く逃げたな?」
「そ、そんなことは有りません!」
「ふん。コットワッツには迷惑がかからないようにはしよう。」
「お願いします。」

「お待たせ~」

彼女が小さな水筒を持ってきた。どこにでも売っているようなものだが、
ボロボロのものだ。

「はい。この水筒はね、小袋と一緒でなんでも入る。ただ、入る先はセサミン専用の小袋ね。
この中を通過するだけ。
でも、結構膨らむから。もう、パンパンに!重さは抱えられるくらいには重くなる。
使うときは代々伝わる不思議な水筒、何でも入るのですとかいってさ、得意げに。
もし、その袋を改めたいって言われても、破らないようにっていって渡せばいい。
そういうとたいてい破ってしまう。
そうすると、小麦粉と辛子の粉が飛び出すようになってるから。ぶふっ!
それを指示した人は特にね。
師匠?リングは箱に?」
「そうです。同じ箱を2500箱用意しましてね。
1箱にきっちり5000リング。コットワッツの年予算は57万リングですから、1140万リング。
2280箱ですね。」
「おお!箱屋さんぼろもうけだね。」
「ああ、申し訳ないですが、箱代は別で請求します。250リングです。」
「高い!いや、2500箱だからか。んー、いい形だったら買ってもいいかな。
いろいろと使えるから。うん、買っちゃって。箱ごと収納していいよ。
吸い込み口に砂漠石を張ったから、数はわかるよ?1回だけね。
口に人差し指を入れたら数字が頭に浮かぶから。覚えて?
でね、2280箱の中身が1つ2つすり替わってるかもしれないからね、それはこの眼鏡で。
赤く光るのがリング以外ね。改めますとか言って、その箱を指させばいい。
この眼鏡も今回だけ。木で作ってるから没収されても大丈夫。
もし、砂漠石が使えない状態なら、数が分からないぐらいかな?
箱にきっちり入っていれば、大丈夫でしょう。」
「姉さん!ありがとうございます!!」
「もうね、大げさなぐらいに水筒を使うんだよ。
そうだね、こんな感じ?


我は欲する、我のものを我の手に。
あるべきもとへ還れ!

で、もう一度リングを出して見せろっていうんなら、

我は欲する、我のものよ我の手に。
姿を現せ!いでよ!100リング!


てね。」


「おお!石使いのようです!!」
「あ、石使い!謎の職業!機会があたらみたいね。」
「資産院にもいてますよ?箱を積み上げたのは石使いですから。」
「そうなんだー。すごいね。」
「いやいや、あなたのほうがすごいんですよ?」
「そうかな?こんなの言葉遊びだよ?」
「マティス君?くれぐれもモウ殿のそばを離れないように。」
「わかっている。」

彼女は彼女のすごさを全くと言っていいほど理解していない。
めずらしくワイプと意見があったと思っていたら、
セサミナはかっこよく言う練習をさせられていた。
眼鏡をかけると2割ましっでかっこよくなるってのはほんとだねー、というので、
みなが眼鏡をかけたがった。
本来の使い方を聞かれ、小さな字が大きく見えるようにするものだという説明に
ワイプが食いついた。収納できる水筒にはなんの反応も見せなかったくせに。
聞けば、あれば食料を入れるだけ入れて、なくなるまで食べてしまう。
そうすると、その時に食べるべきうまいものを見逃すかもしれないからいらないそうだ。

レンズは作れないが砂漠石にお願いして作ってみると、
彼女が約束をしていた。
甘い!ワイプに対して甘すぎる!!

しかし、彼女がそっと、私用にも作るから、それを掛けて抱いて、と
なんともいえないおねだりをされた。
今度は私が先生になるようだ。
考えるだけで鼻血が出そうだった。









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