いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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191:兄弟喧嘩

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「相分かった。砂漠石のすべてが枯渇したわけではなかったことに安心した。
コットワッツも新しき産業の成功を祈っている。問題が起きれば王都を頼ってもらいたい。」

王様は黙っているが横のえらいさんがそうまとめていく。
議長のようなもの?
中央院の院長だそうな。

「は、ありがたきお言葉。
領民と一丸となって取り組んでいきたいと思っております。
それと、もう一つ報告があります。
これは、我が領内での醜聞となってしまいますが、
我が兄、マティスが今、
わたしの殺害未遂で手配書が回っております。
それは誤りです。撤回していただきたい。
我が兄マティスは今回の変動の事でわたしを励まし、
尚且つ、護衛にとそばにいてくれております。
皆さまお聞き及びのことだと思いますが、
先日我が領内広場で行われた武の祭り、
それに参加していたのが、我が兄と兄の唯一の伴侶殿です。
赤い塊は我が姉、我が兄だったのです。
そのことを気付いた時のわたしの喜びはいかばかりか。
あの、砂漠の端で暮らしていた兄が、こうしてわたしのそばで力を貸してくれている。
ただの兄弟喧嘩、長い兄弟喧嘩だったのです。
わたしが子供だったのです、お恥ずかしい。
話をすればよかった、もっと早く。
この場で改めて、今までのことを謝罪したい。
兄上、今までのことを許していただきたい。
これからはわたしの力にもなっていただきたい。」
「謝るのは私の方だ。兄としてもっと大人になればよかった。
子供だったの私だ。
これからは兄としてコットワッツ領主、セサミナを支えていきたい。」

面布を外したマティスが、
三文芝居よろしくセサミナを抱きしめる。
見ているほかの領主の何人かは涙ぐんでいる。
おまけにルグとドーガーもだ。
涙腺壊れてるのか?


「申し訳ない、私的なことに時間をかけてしみました。
コットワッツからの報告は以上です。」

涙ぐんでる人は良かった、良かったと拍手をしている。
よっぽど娯楽がないんだろうな。



続いて各院からの報告。

天文院は今年は長雨になりそうだとかそんな話や、
軍部からはマティスの手配解除。その他の報告。
生産院からは何件の隠匿が申請されたとかなんとか。
これは副院長クラスが読み上げるが、メディングではなかった。
で、我らが師匠のワイプ資産院副院長の報告。
のはずが、院長自らするようだ。この人がダート院長。
ある意味資産院ではまともな人間。

つらつらとラルトルガの虚偽報告の詳細が語られている。
ワイプ師匠が調べたのにダート院長のお手柄になっている。
で、御前試合のことから決闘の話まで。
決闘の話はここでいうことか?とは思ったが、
領土の移動がなされたので、仕方がないようだ。
逗留地の火事による館の消失。
ダートが気を利かせて、その区画を自由に使ってもいいと許可を出したことを報告。
資材調達は王都内ですること、森も自由に。
そういう風に言えば、さすが、ダート様だといわれている。

「それで、気が回りませんでしたが、昨日はいかがされました?」
「ええ、裏の木々で簡易に小屋を。」

誰かが小さな声で鶏小屋とつぶやく。
ルグの言った話が伝わっているようだ。
笑い声も起こる。

「ええ、鶏館と名づけました。
なかなかに快適です。ぜひ見に来てください。」

大爆笑だ。

(セサミン!大うけだよ!でかした!)
(ありがとうございます!)

笑いを取ってなんぼなのだ。

で、次がメインだ。
メディングの資産譲渡。
量が量だけに資産院ではなく、謁見の間で行われているそうだ。
今からリングを運び込むそうで、だれも近づくなとのこと。
受け渡しは明日の月が出ている間にとりに来いと。
全額一括の受け渡しとなるそうな。

おお!とどよめきが起きる。
1年の予算としては少ないコットワッツだが、20年分だとものすごい。
それがいっぺんに手に入る。
その前に個人予算でそれだけ持っていることに疑問だよ?
え?王都の人間なら普通?そうなんだ。

その次は最後で王都側、王族からのお願い。
税金上げるよってお願い。
これは一応みなが反発する。
で、王様がよろしく頼むというと、仕方がないですね。
10%UPが5%なら仕方がねーなーというお約束。
これは各領国個別で。

マトグラーサは20%が交渉10%。それで了解した。てことはその分砂漠石の価格は上乗せされる。
最後はコットワッツ。同じように10%のUP。

「あはははは!ご冗談を。
報告にしたように、砂漠石が産出されなくなり、新規事業を起こすと報告したばかりです。
それでも同じように減額無しで税は納めると言っているんだ!
メディング様の資産譲渡と税は関係ない!
それなのに増税を要求するとは!問題が起きれば王都を頼れという言葉は偽りか!
今現時点で問題だ!増税は認められません。コットワッツは拒否します。」

もうね、シーンとなりました。
いままで誰もこの増税願い、要は王都側のよろしくね、ということを
声高に、真正面から拒否したことはなかたんだろう。
王様からのよろしく頼む。合計何回聞いた?謁見で各1回、合計8回、終わりに1回。
そして会合の初めで1回。すべて9回。

みなが首を傾け始めた。
増税なんて実際無理だ。なのになぜ、5%のアップを了承した?
10%から5%で交渉に成功したから?
いや、そもそも、5%UPの根拠は?
砂漠石も値上がりするとわかっていて、今回また領民に税負担を押し付ければ
さすがに暴動が起きる。なのに、なぜ?
そんなところかな?

「そうであったな。ではコットワッツは現状維持。
ラルトルガ分は後日連絡するとする。」
中央院の院長があっさり引いた。

各領主がもう一度協議に入ろうとするが、
それを察したのか

「みなよくやったくれた。今回もつつがなく終了した。
また、次回よろしく頼む。」
と、王様。
これで、さっきまでの雰囲気は飛んでしまう。


「この後例年なら月が昇ると同時に妖精の振る舞いとなるが、今年は逆だ。
各自が持ってきたであろう、酒を妖精たちにと皆にふるまってほしい。
参加は自由だ。
気に入ったものがあれば、来年の振る舞いに参加ができるというのは通知通りだ。
場所は会合の館、ここで行う。以上、閉会。」

中央院の院長のお言葉で終了。


「へーい。へーい。」

ぶふっ。開会だからかい、閉会だからへい。
なるほど。








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