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185:失火
しおりを挟む「燃えてるね。」
「そうですね、何が燃えてるんですか?」
「土とこの向こうにある森の倒木?を使って、それっぽく張りぼてを作ったの。
乾燥してるからか。」
「雨季はまだ先ですからね。火は気を付けないといけません。』
「周りの木々も燃えそうなんだけど、延焼しない?」
「そこまでは拡がらないでしょう。」
5人でぼーっと火を眺めていた。
なにもすることがないからだ。
焼き芋の話で盛り上がっていた。ここではそういう食べ方はしないらしい。
しかし、砂糖を取る芋を焼いたらあまくておいしいのではないだろうか?
ぜひそれは確かめましょうと、ドーガーが言う。
「セサミナ様ーー!!コットワッツの方々ーー!!」
遠くからさっきの資産院の人が馬に乗ってやってきた。
そりゃこんだけ火の手が上がっていればだれかしらくるだろう。
遅いくらいだ。
「困ります!まさか、火をつけて処分するなんて!!
延焼したら弁償してもらいますよ?」
違ったようだ。
「我々ではない。早くても3日後だと答えたはずだ。
戻ってきたらすでに火は出て、手が付けられない。これは、王都側の失火ではないのか?
滞在期間の館は王都手配だ。この中には我らの荷物もあった。この代償は高くつくぞ!」
ルグがその人を責め立てる。
「え?そんな!こちらが弁償するだなんて!」
「お前では話にならんな。上役を呼んで来い!」
「え?ワイプさんをですか?こんなことで呼んだら後がうるさいじゃないですか?
燃えたものは仕方がないでしょ?手ぶらで来たんだ、たいしたものもないでしょ?」
「こんなこと?仕方がない?たいしたものもない?
コットワッツ領国、領主の仮とはいえ館をそちらの不手際で
消失させたことをこんなことというのか?
一領国の荷をたいしたものはないと決めつけるのか!!
ワイプ様とは此度、領地からのご同行で、懇意にさせてもらった。
お前のその言い草がワイプ様の耳に入ればどれほどお嘆きになるか!
お前の首が飛ぶだけではすまぬぞ!」
おお!脅してくるね。
「あは!そんな権限あの人にはないですよ?
ははーん、あなたたち、ワイプさんの肩書に騙されてますね?
あの人は副院長だけど、今や名前だけですよ?
あの人は何もしないし、ただ昔からいるので副院長になった人だ。
ダード院長の妹君にあたるルタネ様が新しく副院長になるって決まっているんですよ。
残念でしたね。とにかく!この出火はこちらには関係ありません!
延焼していなければそれでいいです。中の荷物も知りません!
まだ王都に滞在されるんでしたら、そちらで館を手配して下さい。
ああ、この場所は引き続き使ってもいいですよ?何だったらお好きなだけ。
小屋でも何でも建ててください。あは!」
「ダード以外にも普通の人がいたんだな。」
「そうだね。ちょっと安心したよ。ある意味。」
みなで小さな声で囁き合った。
「貴様!言わせておけば!!」
「ルグ!こっちに来い!」
セサミンにルグを呼んでもらう。
「!ちょっと待っとけ!!」
「早くしてくださいよ。」
「ルグ?すぐに怒っちゃだめだよ?
あいつの言ったことを必ず守らすんだ。この土地を
こちらが望むまま、小屋でも建ててもいいといった言葉をね。
許可書を作って資産院のダートのサインをもらってすぐ持ってこいって。
何だったらワイプに持たせろってね。」
「!!なるほど!」
「臨機応変、実践編だよ?」
「はっ!」
「あ!できた!姉さんは悪だくみの宝石箱やー!どうです?」
マティスとドーガーがおお!と感心している。
「よーっし!セサミン、ねーちゃんとゆっくりお話ししような?」
「待たせた。今の話は了解した。
お前の言っていることは正しいと、セサミナ様がおっしゃった。
いまから館の手配なぞ、到底無理だ。
この土地を、我らが望む期間使わせてもらおう。
裏の木でも倒せば、小屋ぐらいは作れるだろう。
なに、鶏小屋は作ったことはあるんだ。あの森も好きにしてもかまわないか?」
「あは!鶏小屋!!!いいですよ、この館の区画の森もお好きに。」
「それで、そのことを許可書に書いてくれ。
ワイプ様ではダメなんだろう?悪いが、その上、ダート様のサインで欲しい。
すっかりワイプ様に騙されたようだ。貴殿はなかなかに内部のことに詳しいし、
対応もさすがだ。今までの無礼、許されよ。」
「あは!わかればいいんですよ。仕方がないですよね?火が出てれば焦りますもの。」
「貴殿の名をうかがってもいいだろうか?」
「ええ、資産院副院長補佐オートです。」
「なるほど。では次の副院長は貴殿では?」
「あは!やっぱりそう思います?ま、そうなんですけどね、本当は。
でも、ここだけの話、その妹君がわがままでね。ああ、これは内緒ですよ?」
「そうか、いろいろ苦労しているんだな。
では、ここまでまた契約書を持ってくるのも大変だろう?
ワイプ様、いや、ワイプに持って来させてくれ。
ガツンと言わねば気が収まらぬわ!!」
「あは!そうですよ!あの人鍛錬ばっかで実力かからっきしなんだから!
じゃ、さっそく!すぐに手配しますから!」
「ああ、すまないな。頼む!」
「はい!資産院副院長補佐オートにお任せください!」
パカラと馬を操って戻っていった。
姿が完全に消えてから、皆で拍手喝采だった。
「ルグ!すごい!演技派だね!あの、持ち上げ方!素晴らしい!!」
「ルグ、驚いたぞ!そのように人の心を操るとは!あのものはすっかり騙されているぞ?」
「これからはルグさんの言葉の裏を読まないといけませんね!」
「ドーガー!」
「いや、よくやった!ワイプにガツンと言うのはぜひ実行してくれ!」
「そ、そんな!!」
取合えず、ここの館の区画がセサミンのものになるまで、
テーブルとイスだけ出してコーヒータイムだ。
ドーガーは焼けた灰の中でラルトルガで手に入れた砂糖芋を焼いている。
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