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161:味見
しおりを挟む小麦、米、じゃがいも、野菜類、果実類、卵、乳、肉、チーズ。
バターはなかったのが残念だ。
週末の買い物のように大量に購入。
領主館に届けてもらうように手配した。
お肉はまさしく牛肉で、
これで、豚と牛の合びきミンチができる。3:7だったかな?
お母さん、ほんと、お手伝いもっとしておけばよかった。
コットワッツの野菜類はここから仕入れているようだ。
そうなるとセサミンが領主館を置いていた街は
砂漠石が産業だったんだな。
そりゃ、困るわ。
晩餐会にも着ていけるような服も調達。
ここら辺は、マティスもわたしも疎かった。当然師匠も。
さすが、セサミンです。
無難なところを押さえてもらいました。
いっしょに食べるわけでもないのにね。
従者と弟子は後ろに控えているだけだ。
ちらちらと姿の見えない気配を感じながら、
師匠の食に関するレクチャー聞きながら買い物。
これがなかなかに楽しい。
師匠の博識のすばらしさを称えるたびにマティスは師匠に絡む。
それを制するセサミン。
ルグとドーガーも楽しく聞いている。
ドーガーも自分の欲望に素直なら大丈夫だ。
あとでクッキーを焼いて渡しておこう。なんとなくの保険だ。
ここの領主館は、なんというか、成金趣味?
貧乏人が想像するお金持ちの家のようだ。
このメンバーはお貴族様が2人、高級官僚、
地方に派遣されるということは出身もそこそこ良いところの2人、
で、わたし。
みな平然としているのだが、わたしだけがキョロキョロしたいのをぐっと我慢していた。
ちょっと緊張する。
(どうした?愛しい人?)
(おお!マティス!心の友よ!ちょっと、このキンキラ加減に驚いただけ)
(驚くほどのものはない。領主館はだいだいこんなもんだ。
コットワッツも父の代では似たようなものだった)
(そうなんだ)
(ただ、すこしばかり、鼻につくな。みたか?正面の暦を。海峡石を使っている)
(ほんとに装飾として使ってるんだね)
(自慢なんだろう)
(ふふふ、バッカスの石を見せたら驚くだろうね)
(だろうな)
マティスと話しているうちに落ち着いてきた。
そもそも緊張することもない。
主と従者とが扉でつながっているタイプをそれぞれあてがわれ
各部屋で晩餐会まで待機。
師匠はどんな食事だろうかと楽しみにしている。
セサミンたちはよく話し合うそうだ。
ドーガー頑張れ!
どれぐらい待つのかと聞くとマティスは2時間ぐらいだという。
マティスは屋敷を一通りに見てくるというので、
わたしは家に戻ることにした。
師匠が2時間とは?と聞くので、故郷の時の計り方だと説明した。
海で月無し石君たちにもらった白い砂で砂時計を作ったので、
これが全部落ちたら2時間だと説明した。
いくつか作ったので、1つ師匠にプレゼントした。
この砂時計の優秀なところは。1時間といえば、1時間だし
2時間といえば2時間で落ちる。
もちろん砂漠石にお願いしている。
扉を出したが、それには、ほぉほぉといういうだけで、
癒しグッズを取り出して自分で癒されていた。
この人も自分の欲望に忠実だ。
2時間あればクッキーが焼けるかな?
だっておなかがすくものね。
ああ、腸の塩漬けでソーセージを作ろう。
豚腸だからフランクフルトになるのかな?
しかし、イメージはウィンナーだ。
思うに、台所が常にきれいだと料理もしたくなる。
片付けが簡単だとなおさらだ。
食器洗浄乾燥機なるものは画期的だったんだなーといまさら感心した。
バターたっぷりなクッキーにする。
砂糖、樹脂蜜、塩味、チーズ、胡椒まどなど。
材料を混ぜて火加減さえ間違わなければ大丈夫なはず。
バターはまた作らないと。
これはお願いするより、振って作るほうが
なんとなくいいな。
低温でじっくり焼いている間に、ソーセージも作る。
これも記憶の中だけだが、うまくいったと思う。
これを一晩置いておくんだったかな?
1本だけ、湯がいてみる。
いい感じである。
パンにはさんでホットドック。
人数分を作っている間にクッキーも焼きあがった。
あー、いい匂い。
サクサクとしている。
「甘い匂いがするな。」
マティスが帰ってきた。
「お帰り。もう時間?」
「いや、まだある。ワイプがうるさいから逃げてきた。」
「そうなの?クッキー作ったの。おなかすくでしょ?たべて?」
「これ?ああ、うまいな。」
「ふふふ、好きな人にクッキー焼いて食べてもらうなんて、
もうね、青春してますね。」
ひとりで照れまくってしまう。ああ、幸せだ。
その気持ちがマティスにも伝わったのか、マティスが抱きしめてくれる。
ああ、ほんとうに幸せだ。
「お前の匂いと甘い匂いが混ざってる。はぁ、落ち着く。
さっきまで、ワイプと九九の練習に付き合わされていた。
あと時間の概念の説明と。むさくるしいことこの上ない。
あいつに数字関連のことはいうな。面倒だ。」
「ふふ、クッキーもきっと喜ぶよ?」
「だろうな。ドーガーも。」
「うん、もっと早くに聞いてあげればよかったね。ずっと葛藤してたんだよ。」
「おまえは皆に甘すぎる。ワイプに対してもだ。」
「そう?マティスがいるからね。ほかの人にも優しくなれる。」
「私がいるから?」
「そうだよ?マティスとそれ以外の人、その中でもマティスのことが好きな人には優しくなれる。
そんなもんだよ。」
「私はお前だけでいい。」
「でも、セサミンたちとワイプさんにはマティスも優しいでしょ?
わたしが気に入ってるから。それといっしょ。」
「そうか?そう考えればそうだな。
ああ、愛しい人、私は幸せなんだ。」
「うん、わたしも」
ちょっと濃厚すぎる抱擁を繰り返し、
扉君が呼んでるような気がして終了となった。
師匠が呼んでくれたみたいで、
ぼちぼち着替えないといけないし、扉は開かないしで、
ドアを叩いてくれたようだ。
それを扉君が教えてくれたみたい。ありがとう、扉君。
用意してもらった服にそれぞれ着替える。
もちろん、従者用の部屋で。
はー、マティスかっこいい!
わたしは思っただけだが、マティスは抱き付きながら
かわいいを連発している。
かっこいいじゃないのか?
髪を後ろに撫でつけ、男らしくをイメージしたのに。
「師匠!どうですか?師匠の弟子にふさわしいでしょうか?」
「ええ、モウ殿。なかなかなものですよ?
マティス君は、そうですね。
昔の貴族然とした雰囲気が出てしまいますね。」
「え?それはまずい?」
「どうでしょうか?セサミナ殿と並べば、気付くかもしれませんね。
できるだけモウ殿と2人でいればいいでしょう。」
「師匠がいうんだ、愛しい人、私のそばに。」
「いや、そういう意味じゃないですよ?ん?モウ殿?甘い匂いがしますね?」
「嗅ぐな!」
「さすが師匠です。故郷のおやつをつくたんです。
ドーガーが負けないように。それと、わたしも食べたかったから。
ここの小麦がいいのかな?よい感じでできました。
味はいろいろ。ご飯前ですが食べてみますか?」
「もちろん!」
一通り味見をして、塩味とチーズ味がお気に召したようだ。
そうね、ワインとかに合うよね。
あとで大量に作っておきますと約束した。
食べることはできないけど、
どんな料理が出るかはたのしみだ。
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