いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
上 下
152 / 863

152:ファッションショー

しおりを挟む


一瞬で済むわけがない。
さっぱりした後で、いそいそとマティスが着る衣装を並べている。
ボディースーツ作製後、マティス自身もわたしの着る下着類を作っている。
もともとこの世界では下着類は自分で作るらしいので、ある程度裁縫はできるみたいだ。
レースをふんだんに使ったもの、レースそのもの。基本はシースルー。

「これが今回下に着るぼでぃすうつだ。」

一応きわどくはない。色は黒だ。ファスナーがないので脇で細かくボタンで留めている。
着るのにも脱ぐのにも時間がかかりそうだ。
トイレは?

「ここが重なっているからずらせばいい。」

これだけ着るのね。はい、わかりました。
脚の部分は伸縮性のあるレースでラインが入っていた。
屈伸はしやすい。なんというか気遣いがあるのだが、その方向性がエロいのだ。

靴はピンヒールを出されたが、これは疲れるということで
太いものに変えてもらった。器用に変えるもんだ。

これに赤く染めた上着を着る。いつの間に染めたんだ?
悪の組織だ。しかも幹部級だ。

ここからファッショショーの始まりだ。

マティスを寝椅子に座らせ、モデルのように歩いて見せる。
で、ターン。
拍手をいただいた。
ちなみにマティスはゆったりとしたタオル地のガウンを着ている。

上着と毛皮を交換して、背を見せながら歩く。
呼び寄せの逆でボディースーツだけ向こうに。
振り返れば素肌に毛皮とヒール。
前をはだけ、マティスの前で仁王立ち。
もう一度ターンして、肩を見せる。

ストリップショーになってしまっている。


そのままベットに移動され押し倒されていた。





月が沈めば、あの分かれ道の近いところにテントを張り、
砂漠石の膜でかなりの範囲を覆った。もし、ラーゼムの人か、卵屋さんが通っても
わからないように気配は消している。

リゾート施設のように露天風呂を作っておいた。
トイレも。セサミン一行は大丈夫だし、ワイプさんも問題ないらしい。
あとは、ゆったりと着れるジャージとお風呂あがりのバスローブ、とサンダル。

そこから食事の準備に大忙しだ。
コンブから水分を取って、昆布にしてみる。
急ごしらえだが、出汁はでた。はー、ほっとする。

カニの足はやはり身が詰まっている。
買ってもらった鋏で間接1cm内側を切り込みをいれ、ポーション状態にする。
いくつかは、氷水にさらし、カニ刺し。
魚醤か紹興酒、酢、昆布だしをなどをつかった三杯酢でどうぞ。

マティスは生というものにかなり抵抗があるようだ。
お醤油が手に入ったら卵ご飯を勧めてみたい。

「はぁぁ、甘い。たべてみ?」
「生なのか?」
「うん、どうしてもだめだったらお肉みたいにこのお出汁のなかでしゃぶしゃぶしていいよ?
軽くね、あんまり火は入れないほうがいい。それはそれでおいしいから。」

意を決して、たれに付け、口に入れる。
「!!!!」

「ね?うまいであろう?それを今まで捨ててたんよ?びっくりだ。
で、これがクツクツ。日本酒は辛口で。もういいかな?はい、どうぞ。」
「!!!!」

「これをあてに呑む。
あとは、鍋に焼きに蒸。脚はこんな感じで。もう、面倒だから殻はそのままでいいよ。
カニ刺しだけ、作っておくから。あとは、こことここ鋏で切って、細いほうで押し出したらいいから。
先の細いところも鋏できればいいからね。」

「・・・うまい。」
「ふふふ、よかったね。あ、そのクツクツのあとの殻にご飯入れて出汁いれたらまたおいしいよ?
鍋のあとの雑炊もね。
カニは当分いりませんってぐらい食べよう。
さ、頑張って捌くね。これは、向こうでもやってたからできるんだ。
マティスはサイと豚のお肉を切っていって。野菜も。ご飯も炊くから。
穀物類は王都で調達しようね。あ、アイスも作っておこうか。」

だいたいの準備、思いつく限りの料理を作って、大きなテーブルに並べていく。
砂漠石でカバーを作ったので冷たいものは冷たく、暖かいものは暖かく。

もう少しで月が昇るころに、マティスが馬の蹄が聞こえてきたという。

「思っていたより早い。」
「そうだね。」

分かれ道のところで待ていると、ワイプさんが操る馬車、スーとホーと、
その後ろに1頭の赤馬、2頭の赤馬も馬車を引いている。そのうちの1頭はレンタルした馬だ。

「あれ、あのサボテン大好き君だよ?」
「どれ?」
「セサミンが乗ってるやつ。こっちに来たんだね。
おーいい!!」

セサミンがワイプさんを抜いてこっちに向かってきた。
かっこよく馬から降りると抱き付いてくる。

「姉さん!姉さん!!」
胸にぐりぐり頭を押し付けてくる。

「セサミン、元気そうだね。どう?もろもろ順調?」
「はい、タオルは商品化にこじつけました。
ゴムは形になりましたので、そこから何に使っていくかを検討しています。
あと、冷蔵庫、冷凍庫、保温庫も石の隠匿は掛けました。」
「おお!すごい急ピッチだね。ちゃんとご飯たべて寝てる?」
「はい。屋敷の湯殿がいつでも入れるようになったので、
仕事が終われば、入ってから寝ています。共同浴場ももうすぐできます。」
「離れろ!それ以上はダメだ!!」
「ふんっ小心な。ああ、姉さん、ラーゼムでの話聞きました。姉さんは何一つ悪くないんですよ?」
「ああ、ごめんね。あとの話も聞いたんだけど、セサミンに迷惑掛けたね。
絨毯のことは置いといて、乳の金額は決めておけばよかった。
需要と供給。専売なんだから先に金額を押さえておくべきことだった。
気が付かなかったよ、ごめんね。」
「いえ、気づかなかったのはこちらも同じです。
まさか、5倍まで値を上げるとは思いませんでした。」
「おい、そこらへんの話はあとでいい。。
ワイプ、お前も、鼻を引くつかせるな、すぐに用意するから。
で?往復の警護なんて聞いたことないが?何があった?」
「ええ、いろいろと。その話はまたあとで。」
「そうだね、とりあえず、向こうにお風呂作ったから、入っといで。あ、トイレもあるから。
セサミン説明してあげてね。着替えも、置いてあるよ。
馬たちの世話はしておくから、マティス、案内してあげて。
ワイプさんもルグ、ドーガーもここまでお疲れさま。
ここは石の結界を使ってるから、楽にしてね?」

ルグとドーガーは馬を馬車から外し、
こちらにやってきた。

「はい、奥方様、お元気そうでなによりです。」
「うん、元気だよー。ん?ルグとドーガーはちょっと雰囲気変わったね。
最初にあった時は気配を消してるってことがわかったんだけど、
今自然だね。ワイプさんみたいだ。」
「ほんとですか?そういっていただけると嬉しいです。」

『2人とも、よく頑張りましたね』

「「はっ、ありがたきお言葉。これからも精進いたします!」」

「お前たち2人はだれの配下なのだ?」
セサミンがあきれている。
「ふふふ、さ、先にお風呂はいっといで。」


スーとホーに久しぶりと声を掛け、サボテン大好き君とその仲間にも挨拶した。
飼葉は積んであるものをおろし、おいしい水を出す。
スーとホーが言うにはわたしが出すほうがおいしいらしい。
サボテンの葉は契約で、月に1度だけ食べることができるそうだ。
ワイプさんについっていった石とセサミンについていた石が、
集まっている。腰の石も集まってわいわいしている。
どうやら水浴びがしたいらしい。
大きなくぼみを作り、そこにたくさんの水を入れる。
馬たちはそれも飲んでいいのかと聞いてくる。
月無し石はかまわないというので、石を食べないようにだけ注意した。
肌触りのいいタオルも置いておく。
お好きなように過ごしてくださいと、そこを離れた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

異世界隠密冒険記

リュース
ファンタジー
ごく普通の人間だと自認している高校生の少年、御影黒斗。 人と違うところといえばほんの少し影が薄いことと、頭の回転が少し速いことくらい。 ある日、唐突に真っ白な空間に飛ばされる。そこにいた老人の管理者が言うには、この空間は世界の狭間であり、元の世界に戻るための路は、すでに閉じているとのこと。 黒斗は老人から色々説明を受けた後、現在開いている路から続いている世界へ旅立つことを決める。 その世界はステータスというものが存在しており、黒斗は自らのステータスを確認するのだが、そこには、とんでもない隠密系の才能が表示されており・・・。 冷静沈着で中性的な容姿を持つ主人公の、バトルあり、恋愛ありの、気ままな異世界隠密生活が、今、始まる。 現在、1日に2回は投稿します。それ以外の投稿は適当に。 改稿を始めました。 以前より読みやすくなっているはずです。 第一部完結しました。第二部完結しました。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

レベルカンストとユニークスキルで異世界満喫致します

風白春音
ファンタジー
俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》は新卒で入社した会社がブラック過ぎてある日自宅で意識を失い倒れてしまう。誰も見舞いなど来てくれずそのまま孤独死という悲惨な死を遂げる。 そんな悲惨な死に方に女神は同情したのか、頼んでもいないのに俺、猫屋敷出雲《ねこやしきいずも》を勝手に転生させる。転生後の世界はレベルという概念がある世界だった。 しかし女神の手違いか俺のレベルはカンスト状態であった。さらに唯一無二のユニークスキル視認強奪《ストック》というチートスキルを持って転生する。 これはレベルの概念を超越しさらにはユニークスキルを持って転生した少年の物語である。 ※俺TUEEEEEEEE要素、ハーレム要素、チート要素、ロリ要素などテンプレ満載です。 ※小説家になろうでも投稿しています。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

ある日仕事帰りに神様の手違いがあったが無事に転移させて貰いました。

いくみ
ファンタジー
寝てたら起こされて目を開けたら知らない場所で神様??が、君は死んだと告げられる。そして神様が、管理する世界(マジョル)に転生か転移しないかと提案され、キターファンタジーとガッツポーズする。 成宮暁彦は独身、サラリーマンだった アラサー間近パットしない容姿で、プチオタ、完全独り身爆走中。そんな暁彦が神様に願ったのは、あり得ない位のチートの数々、神様に無理難題を言い困らせ スキルやらetcを貰い転移し、冒険しながらスローライフを目指して楽しく暮らす場を探すお話になると?思います。 なにぶん、素人が書くお話なので 疑問やら、文章が読みにくいかも知れませんが、暖かい目でお読み頂けたらと思います。 あと、とりあえずR15指定にさせて頂きます。

処理中です...