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151:暑がり
しおりを挟む出来上がったものを見て2人して感嘆の声上げた。
「素敵!」
「ああ、自分の書いたもの以上の出来だ。」
「いや、あんたの絵はわかりやすかったし、いい腕だよ。これで食っていくこともできるさ。
皮の染具合もよかった。ほら、内側の小袋の口にも使った。
袖口の裏にも。見えないところで遊ぶのがおしゃれなんだよ。」
「おお!!」
2人して拍手した。
セサミンにプレゼントするものは、ルグ&ドーガーの主たるものにピッタリだ。
気品もある。
わたしたちのものは、2人並ぶと、袖口に縫い付けてある飾りの緑の皮がつながるようになっていた。
付け替え用の毛皮の襟も毛皮のマフラーも素敵だ。
そしてメインの毛皮のコート!!
シベリアの極寒でも問題なさそうで、
フードもついて取り外せる。どこの北極に行くんだ?というくらい完全防寒具だ。
それでいてごつくない。
毛皮の色はマティスが薄いグレー、わたしがホワイトだ。カレーは食えん!そんな色。
「はー、あこがれの毛皮のコート!!素敵!素敵!
こんなの欲しがる奴の気が知れんなんて嘘!欲しいって!
トックスさん、ありがとう。マティスも素敵なのありがとう。
あーうれしい!」
「そこまで喜んでもらえるのはこっちまでうれしいな。な、旦那さんよ?」
「ああ、そうだな。食べ物以外でここまで喜ぶとはな。」
「世の女性陣100人に聞いてみな?98人は喜ぶ。のこり2人は暑がりなだけだよ?」
「あはは、そりゃいいな。余った毛皮は加工しやすいように裏打ちしておいたから
あんたも縫えるんだろ?好きなように使えばいい。」
「うわー!それはうれしいです。ありがとうございます。」
「では、いくらになる?彼女が言うようにまたなにか頼むことがあると思う。
そのとき気がねなく頼めるように、金額をいってくれ。
その加工費、急いでもらった分も上乗せしてくれよ。」
「ああ、ありがたいね。ほんとに。肉屋と果物屋の話は知ってるか?
ここを紹介した奴らさ。宣伝っていう形の嫌がらせしやがってよ。
それで、むきになって、前倒しで作ったが、新作も早々売れるもんじゃない。
昨日買ってくれた分で何とかしのげるかと思ってたんだ。
それだけでもありがたいのによ。ああ、金額だな。
80リングでどうだ?それと、その毛皮を数枚売ってほしい。1枚1リングで。」
「ああ、もちろん。では、ここに。毛皮の金は別にいいが?」
「いや、あんたたちが言うようにきちんとしておきたい。この毛皮はその価値がある。」
「そうか?」
トックスさんは10枚ほど選んだので、結局70リングを払った。
「ああ、確かに。また、良い毛皮が手にはいったら持ってきてくれ。
そのほかの服関連でもなんでもいい。
あんたたちの話を聞いてるだけでもこっちが勉強になるからな。」
「こちらこそ、ありがとうございました。
あの、これ、コム産のお茶です。よかったら、どうぞ。
飲んでももちろんいいんですが、この茶葉をこう、小さな火で炙るようにすると
いい香りがするんです。毛皮の独特の匂いも取れると思うんで。
ここは海の幸の都っていうぐらいお魚が豊富に入るでしょ?
お魚の匂いと合わさると、なんだか折角の毛皮が台無しなような気がして。
外から来たからかちょっと気になって。」
「ああ。そうか、そうだろうな。ずっとここにいるもんは
あまり気にならない。慣れてしまってる。
でも、今日みたいに一日閉めきって作業して、外に出ると、
こう、むわっと来る。何年か前からずっとだ。北の氷の山が溶け出してるとか噂では聞くんだがな。
そうか、茶葉か。いいこと聞いた。これは遠慮なくもらっとくな。」
「ええ。じゃ、ティス行こうか?」
「着ていかないのか?」
「んー、あとで、ティスの目の前で着替えるよ。」
「それは、楽しみだ。」
「は!いうね!また寄ってくれ!新作つくっておくからな。」
「ふふふ、はーい。」
毛皮になった服と裏打ちした毛皮、薄手とはいえ薄着の上着5着。
抱えて外に出たが、トックスさんが見送ってる。
曲がり角に入って、そのまま、城壁の外に出た。
「やっぱりなんかあるんだね。海峡石が取れなくなったり、
氷の山が溶けたりするもんなの?」
「気になるか?」
「ならんこともないけど、まずはクツクツの味と、裸エプロンならぬ裸に毛皮を着た時の
マティスの反応かな?」
「ぶはっ」
「あははは!とにかくどこかに落ち着こう。
今着てる服も磯臭くなってるから。髪の毛も。海の匂いはすぐにしみ込むね。
お風呂に入ろう。それで、クツクツ試食会だ。
それからセサミンに会いに行こう。」
「いっしょに王都まで行くか?気になっているんだろ?
だから服を渡すなんて言い出したんだろ?」
「・・・うん、いい?」
「ああ、国を出なければセサミナに迷惑がかかる状況だった時と
今は事情が違う。問答にかかってもセサミナを守れるしな。
同行できるのならそれが一番いいだろう。」
「うん。でも、大丈夫かな?迷惑かからないかな?」
「赤い塊として付けばいいだろう。王都はまた金で雇たんだと思うだけだ。
今度は夫婦でとな。」
「そうか、赤い塊か。うん。あ!赤い高原の民の服、ばらしちゃったね。
どこかに赤いの入れとけばいいかな?」
「この今着てるものでいいだろう。緑の襟もとはものは普段できたいからな。
それを目印に追って来られても困るしな。」
「なるほど、そうしよう。」
「下はあのぼでぃすーつにしておくれ。」
「え?変態だ!」
「上着を脱がなければいい。なにかあれば今度は私が動くから。
お前があれを着てると思うだけで、それをしってるのが私だけと思うだけで
元気なる。」
「元気って、変態ですね。考えておきます。」
どこでクツクツをするかという話になった。
この家ですると匂いが充満する。外でバーベキューのようにするのが一番だが、
ラーゼムと王都行きのところでしようかということになった。
誰も通らないのならちょうどいいだろうと。
「そこで待ってようか?」
「直接コムに行く道を作ると言っていたから、どうだろうな。
ここを通るように伝えよう。はらを空かしてくるようにとな。」
「そうか、声は飛ばせるか。じゃ、お願いします。」
(セサミナ?今いいか?)
(!兄さん!はい、大丈夫です。なにかありましたか?姉さんは?)
(セサミン!元気だよー。)
(ああ!姉さん!姉さん!)
(みなすぐに彼女のことをきくな。まぁいい。王都にはいつ行くのだ?)
(明日、月が沈めばすぐに。ラーゼムと王都の分かれ道で泊まります。)
(そうか、ちょうどいい。私たちはそこにいるから、その日はそこで飯にしよう。
カニは仕入れた。クツクツはまだ試していないが、それをごちそうしてやろう。
供はいつもの2人だけか?)
(わ!クツクツ!!はい、ルグとドーガーです。それと、ワイプ様がいまこちらに来られています。)
(何しに?)
(名目上は財産譲渡の金額が大きいのでその監査とその分かれ道から別領国に入るので
護衛を兼ねるそうです。往復同行するそうです。)
(本音は?)
(プリンです。)
(ああ、なるほど。その話はまたあとで聞こう。ワイプはうまいものさえあれば
味方にはならないが敵にはならない。かまわない。)
(あ、鋏もってきてね。)
(姉さん?鋏ですか?)
(そう、一人一本ね。喧嘩するから。)
(ザバスの店で買えばいい。固いものを切る細身のものだ。)
(はい、わかりました。)
(おなかすかせてきてね。待ってるよ。)
(はい。)
「ワイプさんさすがだね。」
「そうだな。しかし、それだけではないだろう。」
「そう?メニュー考えないとね。焼肉はいいとして、しゃぶしゃぶとかにしゃぶ、クツクツに
ウニ焼き、エビマヨ、エビのチーズ乗せ焼き?ああ!豚の角煮!とんかつも。それよりも、コンブを昆布にしないと!」
「違うのか?」
「乾燥させるの。ファッションショーは後だ。
まずお風呂行こう!」
「?素肌にあの毛皮を着るのは?」
「ん?お風呂上がりに一瞬だけかな?」
「一瞬でもいい!」
「はいはい。」
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