いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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141:毛皮

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まず現物の豚を見る。
さっくりとマティスが耳を掴み捕まえてくる。マティスの書いた絵の通り。
耳の長い、毛も長いウサギ。ただしでかい!!
これからは絵の横に1リングの絵が必要だ。
マティスが持ち上げて、足は腰くらいだが、毛は地面についている。
絡まらないかと聞けば、走るときは丸まり、止まれば、だらんとする。
額は結構大きいので打てる。心臓は狙いにくそうだ。
見てろよ、と、マティスが手を放すと毛は丸まりコロンコロンのウサギになって走っていった。
それがまた早い。木にぶつかってもコロンコロンで跳ね返っていく。
追うのは難しいがサイのように突進してくるので
正拳付きで地面にたたき込めばいい。なるほど。
見つけ、廻り込み、打込む。その瞬間、毛はさらりと流れる。
色はさまざまで、白、黒、灰、茶とある。
これは何を食べているのかと聞けば、木のみだと。これの天敵はいないらしい。
毛が邪魔して大型の獣も食べない。強いて言えば人間だろうと。
かなりの数を狩れば絶滅するんじゃないかと心配すれば、ここでの合同訓練の一つに
豚狩りがあり、定期的にしないと森が死んでしまうそうだ。その時は200人規模で行うから
2人が狩ったところで、数は減らない。大量に入るから肉も魚も安いのだろうという。
ああ、そうか。
じゃ、ちょっとお隣に行って交流すれば、草原の民は
魚も肉も手に入り、おいしいサイの肉もある。
食が一番豊かな村になるじゃないか!
乳もあるし!なんか、またむかついてきた!!

「どうした?」
思ったことを話すと、
「それに気付けばだろ?無理だろうな。」
そうだな。じゃあ、いいか。なんだが、胸がすっきりした。
ちょっと嫌な人間だが、しかたがない。そんなもんだ。







かなりの数を狩ったので、北に向かうことにする。まだ、半分を過ぎたばかりだ。
手ぶらで森を出るのも人に見られたら何をしていたと問いただされるので、
4匹と2匹をそれぞれ背負こむ。
浮かせずにそのままの重さ。鍛錬だ。

森を出ると借りていた馬が別の馬にのった貸し馬屋の主人と佇んでいた。
けがをしたのかと慌てて彼女が駆け寄る。
「どうしたの?怪我でもしたの?どこ!!」
「ああ、2人とも無事だったのか、なんだ。驚いた。」
「え?」
「こいつがあまりにもしょぼくれて帰ってくるからさ、
あれだけなついていた2人になにかあったのかと思ってさ。
喧嘩したわけでもないな?なにが有ったんだ?」
馬君はわたしにじゃれるいてるので、
マティスが代わりに説明してくれた。
 「ご主人、心配かけたようだな。申し訳ない。
ここで、別れる前に、故郷のサボテンの葉を食べてもらったんだ。
そしたら気に入ってね、でも、もうないんだと言えば、ことばが通じたのか
かなりがっかりしてしまって。悪いことをしたと思たんだが、そこで別れたんだ。」
「こいつが戻ったのはさっきなんだ。
教えたこの森まで飛ばしたんだよ!
お前!そのサボテンが食えねえってだけで、ちんたら戻って、そんだけ落ち込んでたのか!!
なんて食い意地が張ってるんだ!!いい加減に離れろ!!
あんたたち、すまない!」
「いや、考えもせずに食べさせた俺たちが悪いんだ。この馬を責めないでくれ。
それに、心配させたな。ありがとう。
大収穫なんだ、よかったらもらってくれないか?
よくよく考えたら、こんなに抱えて旅はできない。」
「村で買い取りしてるぞ?6匹か、すごいじゃないか!6リングになる。
俺も戻るんだ、こいつに乗せればいいだろ?金は要らないし、預り金4リングも返すよ。」
「いや、ご主人、私たちは砂漠の民だ、それで、何を勘違いしたかここの村長の息子が
俺を指名手配の男だと、勘違いをして昨日宿まで押しかけてきた。
村の守衛殿も勘違いだと言ってくれてるのに。
昨日は茶葉屋の息子さんが助けてくれたが、まだなん癖を付けて追ってくるかもしれない。
もう、このまま出ようと思ってね。。」
「あー、聞いたよその話!じゃ、あの貸し馬からお茶畑見学って話もあんたらか!
あの話はいいよね!馬を借りに来た旅人にお茶畑の見学を勧めるのさ。
お茶畑は見学代で、歩いていくには遠いからみな馬を借りるだろ?そうかあんたたちか。
ありがとうよ!!ああ、あの間抜けな息子には絶対言わない安心してくれ!」
「ありがとう、なにか、負担になるようならゆってくれてもかまわないから。」
「ああ、そうさせてもらう。」
「じゃ、この豚も、ここまで来てくれたんだ、もらってくれ。」
「いや、それは悪い!」
「いや、いい。預り金もいらない。
ああ、サボテンな。もしかしたら、コットワッツの領主館で育ててるかもしれない。
機会があれば聞いてみると言い。ここの馬もいい馬だ、うまく取引できるかもしれないぞ?」

馬はそれを理解したのか途端に元気になり、
彼女にすりより別れを済ますと、とっとと先に帰っていく。
「おい、間抜け!そんなすぐに手に入るもんじゃないから!!ああ!まて!おい!」
「おい!豚だ、助けると思ってな、もらってくれ。」
「え?ほんとに?いやー、うれしいね。遠慮なく。」
「よかったら、茶畑の方にも。」
「ああ、そうだな。あいつも喜ぶぞ。」
「それで、この豚ってどうやって食べるのが一番おいしいんですか?
毛はどうしています?」

彼女はすかさず、聞いていく。

煮込み、丸焼き、塩漬け、そこらへんが主流のようだ。
毛も吊るすときに使い、抜いた血を吸わせて焼いて処分する、
私の知っている方法だった。

4匹を引き取ってもらい、次の街の話なども聞き、別れを済ませた。

「この2匹だけでも血抜きを済ませて、食べよう。
少し、家に戻れ。その間に済ませるよ。」
「んー、それね。呼び寄せの応用で血だけを抜くとか?
死んでるから物扱い。生きてたら、抵抗があってできないけど。
で、そのまま、どこかに破棄。
それだと見なくていい。どうかな?」
「それはいいな。この大量の豚を処理するのは一仕事だからな。
その方法はいいかもしれない。」
「ごめんね、マティスだけにしてもらって。」
「ははは、礼だけ言ってくれ。」
「うん、ありがとう。」

この方法はうまくいった。
同じように内臓の処理も。

彼女は腸の肉詰め?をするから、尻の穴より離れた腸をきれにして
塩漬けにしてくれという。わからないが、言うとおりに。

毛も皮ごときれいに外れる。
付いた肉、油も取れた。

その毛の付いた皮、2匹分、
伸ばして眺めて匂いも嗅いでいる。

「血の処理は見たくないというのはわかるが、
剥ぎ取った皮は大丈夫なのか?」

そう問うと、彼女ははっとなった。

「そう、大丈夫。毛皮だから?
ちがーう!!
肉を食べ、毛皮も利用。捨てるとこなし!!
うん、血だって混ぜて食べる!
マティス!わたし血抜き手伝うよ!この世界に生きるんだもの、
こんなこと言ってられん!!」

何やら力説するだが、血抜きを一緒にできるなら
早く済むだろう。
いいことだ。

豚がいる森がなくなるところまで進み、月が昇ったので
一番外側にある大木に扉君を付け、家に入った。

使いやす大きさに切り分けていく。
サイの時はそれも見ることはしなかったが、今彼女は、横で見学している。

あーとか、そこかーとか一人で納得している。
「あ!!豚バラ!!これをちょっと大きめに切って
トマトで煮て?しっぽ煮よりお肉は早く柔らかくなると思う。
臭みはレモンの皮?あ!ねぎねぎ!
それで、ここのお肉、透けるぐらいに薄くできる?そう!
昆布がないけど、野菜から出るかな?
ゴマだれもポン酢もない、醤油がない、、んー。」
「胡麻か?油をとる?」
「あ!それ!ある?」
「ああ、これか?セサミナの食料庫にあったぞ。絞って油にするんだろう。」
「セサミンのセサミ・・・うふふふ。え?これ?やっぱり大きいね。
 お米が大きくなくてよかったよ。これをうーんと微塵切りで、あ、胡麻のいい香り、
すりこぎは、また今度でいいか。とにかく、刻む、刻む、、、。で、
あ、お醤油がはないけど、酢と少し入れれば・・・あ!紹興酒!!これ!!すごい!
お酒の神様、バッカス様ありがとう!
今日はじゃぶじゃぶだよ!!
豚バラ煮込みは明日!白菜切って、白ネギと。
赤いけど。あ、葉先は明日使うから取っておいて。
わたし鍋作るね。」

彼女が無心に胡麻を切り刻み、それを集めてなにかを作っている。
鍋?あるのに。


じゃぶじゃぶはうまい。

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