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87:会わずの月
しおりを挟む会わずの月の日。
前日の月が沈み、18時間後に闇になる。
会わずの月の日の夜は24時間。丸一日暗闇の中だ。
雨の月はそれが10日間続く。
「そりゃ、籠ってすることするよね。」
「暗いから明かりが売れる。食料も。
この月は離れはじめから買いだめをする。外に出なくてもいいように。
産婆も出産する女たちの家を廻り、順番を決めていく。」
「難産だったら大変だね。」
「なんざん?」
「ん?出産って大変なんでしょ?経験ないから聞く話によるとだけど。」
「石の力で生まれる。生まれの言葉がある。これは産婆だけが知っているらしい。」
「おお、またしても、異世界ショック。そうなんだね。
おなかは大きくなるよね?」
「それはそうだ、腹の中に子がいるんだから。」
「えっと、徐々に?」
「見てわかるぐらいになるのは、乾季に入るぐらいからだ。」
「やっぱり違うねー。つわりとかもあるの?激しい運動しちゃだめとか?」
「つわり?それはわからない。激しい運動もやはり乾季に入ってからだな、
ゼムが乾季に入ると、こちらに来ない。奥方のそばにないといけないから。」
「これまたすごいね。ゼムさんて子供さんはたくさんいてるの?」
「2人だ。違う街で商人の修業をしているそうだ。」
「へー、家業を継ぐんだね。」
「大体が家の仕事を継ぐ。私のように剣士になったりするものもいるがな。」
「剣士ね。この国以外も石の恩恵はあるの?」
「もちろん。砂漠石無しでは国は成り立たない。
砂漠を有しているこのニバーセルは大陸一の強さだ。」
「砂漠ね。なるほど。」
時計が16時となったら朝になるので、この森での最後の狩りに出る。
それまでは月の夜に外で過ごすためのそれぞれの作業部屋で
道具などを作った。
満天の星の下で過ごしたいという彼女の希望だ。
料理も作っては鞄に詰めていった。
早めの晩飯、早めの風呂、早めの就寝。
まだ明るいうちから外に出た。
最初に見た、半球な透明な膜のなかに、
小さな台所、囲いの向こうの便所。
そして小さなテーブルセット。
その外に風呂。
「北の国にいったら、こんな家を建てるのか?」
「ううん、もっと小さいこじんまりした家。でも、最新機能満載。
いっしょに考えて作ろうね。大体想像できれば作れるはず、たぶん。」
うれしそうに微笑む彼女が愛おしい。
「さ、前夜祭だよ?時間になったらすぐに暗くなるの?」
「いや、徐々にだ。少し薄暗くなる。普段はそうなると同時に南から月が昇るが
それがない。二つ月が会えないのだ。
いつも一緒にいる二つ月が喧嘩したんだと。
だから、人間は仲良くするんだ、見せつけるように。
それをどこかで見ている二つ月も慌ててくっつこうとする。
だから合わさりの月までが早い。そんな話がある。」
「ははは、40回に1度は喧嘩するって、根本的に問題有るんじゃないの?」
「さ、どうだろな?二つ月を夫婦に例える国と兄弟や姉妹、王と臣下に例える国もある。」
「へー面白いね。ここは夫婦?」
「そうだな、夫婦が主流だ。草原は姉妹だったかな?」
「そんな話を集めるのも面白そうだね。
ちなみに天文学ってある?」
「ある。王都の天文院というところで管理されている。」
「学問を管理するの?一般的には学べないの?」
「無理だ。よっぽどの地位と金が要る。」
「生物学は?」
「それも院預かりだな。馬と駱駝の掛け合わせは院の成果だ。」
「んー、じゃ、弟君の学校って何を教えてるの?」
「文字と数字、足し算、引き算。国の歴史、ぐらいじゃないか?」
「アウト、アウトだよ、、、せめて掛け算割り算、簡単な生物学まで行かないと。
小学校レベルじゃないのね。いや、それでいいのか?うーん、、、」
「徐々にだよ。今の子供たちに貴族が受けてる勉学をすべて教えることはないさ。
学ぶ楽しさがわかればいいんだろ?」
「お!その通りです。そうだね、徐々にだね。
ちょっと、おやつでもたべようか?」
コーヒーは彼女が入れてくれた。
おやつとは食事前の軽い食事らしい。
甘いものが多い。
「コーヒーとね、じゃん!!ラスクです!」
パンだ。薄いパン。
おやつなのか?
「乾燥させて、バター塗って、砂糖をかけて、また焼いたの。
あの窯は優秀だね。はい、どうぞ。」
軽い、あ、サクサク。うまい。
「これはうまいな。」
「でしょ?うまくできたよ。これは、簡単だし、石の力も別に使ってないから
街に行った時のゼムさんのお土産にしよう。」
「ああ、喜ぶだろう。
しかし、街にどうやって行く?入り口には守衛はいるぞ?
姿を決して街に入るか?」
「おお、いまさら守衛か。うーん、どうしようかな?
話を作っておいたほうがいいか。」
嫁は旅のものです。
砂漠の向こうから来ました。
なぜか石は拾えたので
大丈夫でした。
そこで家を焼かれたマティスと会い、恋に落ちました。
国を出ることにしました。
街に行っていろいろ話をつけてきました。
帰りにはハゲチャビンに襲われ大けがを負いました。
駱駝馬はいなくなりましたが
馬車は無事だったので
怖くてなんとか移動してそこで生活してました。
あ、嫁は怪力設定が入るね。
食料も底を付き、傷も癒えたので
もう一度街に食料を調達に来ました。
頂いた乳がおいしかったので、
草原を抜けて北に行きます。
「どう?」
「私はあのハゲチャビンにやられたことになるのか?」
「殺されたバージョンもできるよ。」
嫁は旅のものです。
砂漠の向こうから来ました。
なぜか石は拾えたので
大丈夫でした。
そこで家を焼かれたマティスと会い、恋に落ちました。
国を出ることにしました。
街に行っていろいろ話をつけてきました。
帰りにはハゲチャビンに殺されました。
馬車は無事だったので
怖くてなんとか移動してそこで生活してました。
ここでも嫁は怪力設定が入るね。
食料が底を付いたので、
街に来ました。今際の際で、「ゼムを訪ねろ」といわれたので、
ここまで来ました。
頂いた乳がおいしかったので、
草原を抜けて北に行きます。
「どう?」
「・・・ほかには?」
「んー、つじつまを合わせようとおもったらこんなもんよ?
食料もらってる、嫁がいる、ハゲチャビンに襲われてる、
で、その日から何日たってる?それまでどうしてた?
駱駝馬とハゲチャビンが街に帰って、どんな報告をしたか
わかんないけど、馬車の荷物のこともあるし
だれか見に来てるはず。それがない。どこに行った?
何とか無事で2人で旅だったのか?嫁怪力説で移動。
ほら?ね。」
「・・・こっそり街に入ろう。余計な嘘はつきたくない。」
「前半と後半は真実だよ?
恋に落ちて乳がおいしかったってのは。」
「そうだな。真実だ。」
「ま、ややこしくなるからこっそり行こう。
入ってしまえば、どうとでもなるよ。たぶん。
じゃ、そういうことにして、会わずの月を楽しもう。」
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