いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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34:ペアカップ

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トイレにビデ機能と、ハンドドライヤー
お風呂に普通のシャワーと、湯舟の近くに銭湯のような洗い場。
座って体を洗いたい。
排水して、汚れを分離しようとおもったけど、これだけの大量の水が
どこぞに流れるのはまずくないか?と思い、24時間風呂のように
循環させる。雑菌の繁殖が怖いのでフィルターは念入りにお願いした。
脱衣の横に洗面所。鏡を付けた。歯磨きは当分指ですることにした。
塩ってあるのかな?あ、岩塩?それこそ海が隆起したんならあるよね?
寝るところとは別に仕事部屋を作ろう。
扉君の近くがいいかな?

さっくりと改良していく。
元の世界でこれができたら、職を無くす人がでまくるな。
わたしはその筆頭だ。怖い、怖い。

扉君におはようのあいさつ。

「扉君、おはようございます。見張りご苦労様です。
どうですか?外は?出れそう?」
扉に手を当て、聞いてみた。
なんとなくいけそうな感じ。扉も前回と違って動きそう。
けど、重い、物理的に。

「これはマティスに開けてもらおう。ありがとね。」

扉君にもキスがしたいが、ダメだと言われたし、
体勢的に難しい。手で撫でまくる。
わしゃわしゃと。
なんとなく喜んでるような気がする。
扉の擬人化。新しいジャンルだ。


台所に戻ると、いいにおいがする。
のぞき込むと、笑顔のマティスがいた。
おいおい、新婚家庭か?どこの新妻だ?
どこの?わたしのだ。
母さん、わたしやっと嫁をもらったよ。

「いま、呼ぼうとしてたんだ。終わったのか?」
思わず抱き付き頭をぐりぐりこすりつける。

「マティス、2人で幸せになろう。」
「え?な?なに?」

見上げれば顔を赤くするマティス。ああ、かわいい。
俺の嫁は世界一。
これだ!このパターンなんだ!えーと、パターンHだ!!


「目指すパターンもわかったし、朝からいい日だ。
これ?テーブルにもっていくの?はこぶね?」

まだ、固まってるマティスはおいて、
スープとこれはクレープ?ハムを巻いている。
野菜系がないが、ピクルスっぽいのは有る。
素晴らしい。
『おぼん、ぼんぼん、お盆で運ぼう♪』

ポケットに入れた石を取り出し
トレーを作る。
今の歌もどきは手で物を運ぼうとすると決まって母が怒っていうフレーズだ。
一人になってからこれを言いながら短い距離でもトレーで運んだ。
うん、母さん、ちゃんとできてるよ。

いそいそとテーブルに運ぶとランチョンマットも置いてあり
あとは並べるだけだ。
うしろから、カップを2つもったマティスがやってきた。

「いまのは歌?言霊?」
「ん?気にするない。とりあえず言葉で表現すればいいんだから。
あ、それなに?コーヒー?紅茶?」
「ああ、同じものがあるんだな?コーヒーだ。」
「うれしいね。コーヒー好きなんだ。」
それぞれにコップを置き、2人して座った。
カップは磁器だ。
家にあったものなんだね。お揃いだ。ペアカップだ。
いや、もともとあったんだからタロスさんのか。それでもちょっと顔がにやける。

「いやらしい顔になってるぞ。」
「失礼な。さっきのマティスはかわいかったよ?」
またしても、顔を赤らめる。あー、かわいい。
 
「2人で、し、幸せになるんだな?」
「うん、マティスさえよければ。いや、違うな?」
「え?違うのか?」
「マティスがいれば幸せになるよ。わたしがね。そのついでにマティスも幸せになってくれればうれしい。
 フフ、まずいのに捕まったね。」

がばりと立上り、真剣な顔でこう言ってくれた。

 「私と2人で幸せになろう。私も幸せなんだ。」

うれしいね。

「うん。」

そのあとは2人して照れ臭いのか黙って朝ごはんを食べた。



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