マグナムブレイカー

サカキマンZET

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第3章 東と西 赤の書編。

第110話 裏切り。

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「よし、馬鹿な行動はそこまでだ。相手が『アトラス財団』と分かれば、次に俺達がやることだ……乗り込むだ。お前等には得意だろ?」

 気を取り直して忍は修二達へ上司の如く命令を下すのだった。

「いつ俺達がテメェの部下になったんだ?」

「あぁ、お前に命令されるとか死んでも従いたくないね」

 修二と南雲は忍へ中指を立て、いきり立っていた。

「そうやそうや! 乗り込むって言ったって何処にあんのか知らんやろ!」

 そこへ倒れ込んでいる吹雪も目覚め参戦していた。

「……まあ、そう言うな。お前等にとっても良い話だ。雅?」

 忍が手を数回叩くと天井のパネルが取れ、忍者姿で雅は現れた。

(((コイツ、完全に会社を所有物にしてやがる)))

 他人の物を勝手に改造している事は、三人共突っ込むのだった。

「先月、やっと『アトラス財団』に関する会社からの仕事が入った。今夜、その人物と面会する予定だ」

「作戦はこうだ」

「「「勝手に進めんな!」」」

 淡々と進行する忍に対し、三人はシンクロしたツッコミで応戦する。

「先ず、あっちの会社で俺達が面会する。そして人質に取って、『アトラス財団』へ案内させる。辿り着いたら暴れて、ドーンと代表取締役を倒して全員スッキリハッピーエンドだ。それから閻魔と品川を殴って終わって、後は俺の就活だ。何か意義のある者は?」

「……」

「なあ? この半年間でコイツの頭はおかしくなったのか? 所謂、東京の電波みたいな物に当たって?」

 忍が自信満々に計画を語った後、他にも意見やら聞こうとした。が、南雲は思考停止、修二は東京電波の所為にしながら茫然とするしかなかった。

「俺も最初は疑ったんだが、どうやらマジで言ってるから質悪い……」

 吹雪は立ち上がり、半年間毎日何処かへ連れ回されては疲労する繰り返しだったので、大体は忍の思考が読めるようになっていた。

「俺は問題起こせねぇ……」

 すると何時もなら乗り気の修二が弱気な発言をしていた。南雲以外の人物は驚愕していた。

「あ~そう言えば、ここに来る前に刑事とか目付けられてるんだった。言うの忘れてた」

 これまで修二の経緯を南雲が代弁してくれたのだ。

「……呆れた奴だ。貴様は問題を起こせずに、ここまで来れないのか!? 何時も何時も貴様は……忍様!」

 あまりの問題行動に雅が説法を説いていた。が、そこへ忍は雅を手で静止する。

「品川……関係ない。やれ」

 全員は忍が何か励まし等の言葉とか送るのかと思いきや、期待外れの実行しろ宣言でズッコケた。
 流石に修二も茫然とする。

「俺は何度もフランスやアラスカとか不法入国している。今更すぎないか?」

 全員は過去を思い返す。
 確かに忍が正式にちゃんと外国へ行った記憶がなかった。あるのは『ダークネスホール』で、勝手にワープして滞在していた記憶しかなかった。

「うわぁ、俺等普通に気にしてなかったけどよ……完全にやってる」

「実はパスポートも通さず、勝手に密入国しても良かったのかは私も疑っていた所だ」

「俺は日本国しかワープしてねぇからノーカンだよな?」

 南雲と雅が罪悪感に苛まれているのに対し、吹雪は呑気な事を言って、二人からジト目で見られていた。

「……弁護士やり過ぎて、頭おかしくなってたのは俺の方だったかもな……それじゃ俺も参加させて……」

「先に俺と雅が潜入するから、後から来い。それからがお前等の出番だ。分かったな?」

「え~コイツと待機?」

「ありがたく思え。この天才と久し振りに一緒に仕事できるぞ? ここは嬉しがる所だろうが?」

 意を決し修二も承諾しようとした瞬間、話だけは勝手に進み、無視されていた。

「……」

 そして怒りすら沸き上がる事なくなり、修二も勝手に話へ入り、実行するのだった。

 ある程度は作戦を固め、修二と忍と雅の三人だけが会社へ面会する事になり、残り二人は下でボディーガードする役目となった。
 面会する場所は住宅も並ぶ、渋谷のビルだった。
 吹雪と南雲はビルから近くにある駐車場で、黒塗りのワゴン車に待機していた。

 無機質なエレベーターの中で、無言のまま三人はいた。

「……俺で良かったのか?」

「少し嫌な予感がしてな。今回、簡単に事が運び過ぎている。普段なら数ヶ月は予定を組み込む筈だ。だが、この会社は数週以内で連絡をオーケーしてきやがった。何も条件をつけずにな?」

「……確かに怪しいな。だから『アトラス財団』と関係あると判断したのか?」

「半信半疑だ。普通なら普通に仕事する。確信なら……後は分かるよな?」

「あぁ、でも油断はできねぇ。相手に『覇気使い』がいた。もしかしたら面会する相手も可能性はあるぜ?」

「……雅、一度でも怪しい動きを見せたら迷わずに攻撃しろ」

「分かりました」

 命令が下されると雅は袖にクナイを隠し、準備万端の様子。

「戦闘不能もしくは拘束だ。無理せず、可能ならだ」

「了解しました。必ずや期待に応えられるようにします」

 長く登るエレベーターは漸く目的階へ辿り着いた。
 修二、忍、雅の順番でエレベーターから降りて、待合室まで向かう。待合室にあるソファーへ三人がギッチリとなりながら座って待機していた。
 他人から見ればシュールな光景だった。

「おじゃまします……か?」

 ドアが開かれ、スーツでアフロの髪型した人物が現れ、吉本新喜劇のボケで挨拶した。
 三人は条件反射で椅子からズッコケてしまった。

「いや、聞かれても……おじゃましますか? って言われても……はいらないです」

 そこへ忍と雅のイメージを壊してはならないので、修二がツッコミをする。

はいらない?」

「いらないです」

「貴方達は渋谷川神事務所で働いてる人達です……」

 これもまた関西人特有ボケの条件反射で、三人はズッコケる。

「そこはいりますよ。そこはちゃんと言いましょうよ……」

「働いている方ですか?」

「はい、そうですよ」

「私、ちょっと聞きたい事があるんです?」

「いや、知りませんよ! 急に貴方の話をされましても……」

「ちょっと聞きたい事があるんです?」

「あ! ですか! ちゃんとそこは点々をつけましょうよ」

じょぅぶじょぅぶ、お待ぢぐだざい・・・・・・・・・・・・・・・・

「いや、全部に点々つけなくて良いんですよ!? そんな無理して言うことじゃなくて……要所、要所で良いんですよ。何故か、頑張ってにも点々入れようとしなくて良いんで……」

「少々お待ちください、部長をお呼びしますので……」

「あ、はい」

 これでやっと話が進むと思い、一安心する三人だった……。

「部長! 部長! ……な~んてね?」

「「「おらんのかい!」」」

 流石にボケの連発なので三人がシンクロしながらツッコミをしてしまった。

「私が部長なんですよ~」

 ふざけた態度とボケで三人へ接するアフロ部長の男。

「あの、関西人の誼みよしとして聞きます。なんで呼んだんですか?」

 修二は呆れながらも『アトラス財団』と関係する人物なので無下にせず、親身に付き合ってあげる。

「呼んだだけです」

「いや、だから何故、呼んだのですか!?」

「呼んだら来るかな? と思いまして……はい」

「呼んでも出てこないなら意味なくないですか?」

「いや、だから誰か出てこられたら面白いし困るんですよ」

「いや、普通ですやん! 理由が普通やし、そんなんで私達の心乱さないでくださいよ」

「いやいや、すんません。関西の生活が長くて、ついボケてしまうんですよ。それで……なんの話でしたっけ?」

 アフロ部長は要件を全て忘れてしまい、修二達へ尋ねた。

「いやいや、お仕事の話ですよ。今回、ミヤッビーを使いたい事で面会する約束でしたでしょ?」

「あ! そうでしたそうでした。申し訳ございません、それで川神忍様は?」

「私です。初めまして、渋谷川神事務所専務の川神忍です。この度はミヤッビーを検討してくださいまして、ありがとうございます」

 忍は培ったビジネススタイルを貫き、余裕綽々と話を進める。

「いえいえ、こちらこそ……ここで昔から目指してた者が間近までいるんですからね?」

 するとアフロ部長は、いきなり忍に向かってライターを投げた。ライターは目前まで近づくと発光し、爆発したのだ。
 紫煙は部屋を覆い尽くしていた。

「……あらら、普通なら死んでもおかしくないんやけどな?」

「残念ながら、この程度で負けられたら困るんだよ。アンタを倒すのは俺なんだからな?」

 紫煙が晴れると修二の左手がプスプスと焦げ、忍を庇い守っていた。

「ボディーガードにしては、まだまだだな。だが、助かった。礼だけは言っておく」

「素直に礼を言えねぇのかよ……まあいい。奴の正体は分かったぜ」

「あぁ、俺も心当たりがある。この不意討ちの様な爆発は……内藤博也だろ? 五年前、海道から離れ、暫く姿を消していたと思えば……東京にいたとはな?」

 爆弾魔の正体は五年前、修二達に協力していた内藤だった。

「……サプライズでバラそうとしたんやけど、まあええわ……」

 内藤は頬を掻きながら致し方ない表情で対応していた。

「さて、お前の正体を知った事だ。『アトラス財団』の目的を教えてもらおうか?」

 雅はクナイを袖から取り出し、内藤へ近づき、『アトラス財団』に関する情報を尋問しようとしていた。

「それは出来へん相談やな。俺も立場っていう物があんねん、ここで三人共……大人しく捕まってくれへんかな?」

「それは無理な相談だな!」

 雅は素早い動きで内藤との間合いを詰めていた。そして内藤の頸動脈を目掛けてクナイで突き刺そうとした。

「……わざわざ俺一人で、何にも用意せず面会したと思ってんのや? 同窓会すんねんやったら、もう一人いるやろ?」

 余裕にも内藤が戦闘中、意味深な発言をしていた。するとドアを破壊し、無数の尖った岩が発射された。
 雅は両腕で防御した。が、目前に修二が出現し、両拳で硬い岩を殴って破壊する。

「貴様!」

 邪魔された事に怒った雅が修二へ突っ掛かろうとした。が、忍は黙って雅を止めた。

「今、そのまま触ってたら爆発・・してたぞ?」

 爆発・・という単語を聞いて雅は理解できた。あの一瞬の隙に内藤は岩へ触れ爆弾に変えてたのだ。
 その対応として修二が前へと出て、雅を守った。

「……これはアンタ達の仲間じゃないのか?」

 額から汗を流し、痩せ我慢している修二は忍達へ皮肉る。
 それもそうだ。この岩には覚えがあり、『岩の覇気』を使えるのは一人しかいないと……。

「お前もか……権田?」

「えぇ、お久し振りです。神崎忍……」

 破壊されたドアから現れたのは黒い道場着、更には顔に大量の引っ掻き傷や切り傷がある。
 神崎忍三銃士の一人である。竹島権田が敵として現れたのだ。

「まあ、これで同窓会メンバーは集合した訳や。ほんで、どうする? 降参して俺等に付いて来るか? それとも……無意味に死ぬか? の選択肢やで?」

 かなり絶望的な状況だった。
 『風の覇気』である雅に、完全対策した竹島と内藤。
 修二は岩を殴った際に、左拳はボロボロで負傷。
 忍は逃走しようにもエレベーターは二人で阻止され、出来ない状況だ。

「……おい、神崎! 今すぐ『ダークネスホール』で雅連れて逃げろ! ここに居られると邪魔なんだよ!」

 そんなヤバい状況でも修二は大声で忍へ呼び掛け、『ダークネスホール』で逃げろと指示したのだ。

「悪い、行くぞ雅!」

「品川修二はどうするのですか!?」

「置いて行く!」

 修二は置いて行き、忍は『ダークネスホール』を開く準備をした。

「させるかッ!」

 そこへ竹島が全力疾走で忍達へ喰らいつこうとした。が、修二は目前で素早い動きで出現し、身体全体で邪魔をした。

「お前の俺だ!」

 右拳で竹島の左頬へ目掛けてストレートを放った。放たれたストレートは見事に命中し、竹島を大きく吹っ飛ばした。

「じゃあ、これならどうや?」

 内藤は修二が油断している隙に、岩を拾い上げて、忍達へ全力投球した。

「また会おう」

 そう忍は修二へ言い残し、『ダークネスホール』を閉じた。岩は空振りに終わり、窓ガラスにコツンと触れた瞬間、爆発した。
 窓ガラスは完全に破壊され、大きい空気が流れ込んだ。

「じゃあ、二対一ってことで勝負しようか?」

 右五本の指先で器用に『CAMON』と火文字を作って、二人を挑発していた修二。

「……お前、前からウザかったんや。ここでボコボコにできるんやったら、願ったり叶ったりや……でも、お前に体力で勝てるとも思われへんから……行ってくれや権田!」

 すると瓦礫の中から竹島が勢いよく脱出し、両拳へ岩を纏っていた。
 そして修二に有無を言わさず、左ボディへ食い込ます程、殴った。

 痛みで空気を吐き、苦悶の表情を浮かべる修二だった。が、その岩は爆発し、窓際まで大きく吹っ飛ばされた。

「グッ!」

 破壊された窓から落ちないように、なんとか仁王立ちで踏ん張った。けれども、その努力も無駄に終わった。
 もう目前に竹島は迫っていて、残った右拳で修二の鳩尾を殴り、大きく爆発させた。
 爆風で上スーツは完全焼失し、半裸の修二は無抵抗にも空中へと放り投げられ、まっ逆さまへと暗いアスファルト目掛けて落下した。

「……楽しかったで、お前との無駄な高校生活はよ……」

 無抵抗に落下していく修二を内藤は無気力な目で見ていた。
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