マグナムブレイカー

サカキマンZET

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第3章 東と西 赤の書編。

第92話 修行の成果。

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 『覇気玉』作り開始から、余裕と二日は経ち、木戸にも焦りが見え始めた。
 腕にマグマを纏わせ、直接両指先から、小さな塊ぐらいは形成できた。が、形になる直前でマグマは分散され、それが余波となり木戸は負傷していた。
 ジャージは所々破れ、綺麗な皮膚は炭がこびり付き、疲労で髪の毛はボサボサとなっていた。

(後一日しかないなのに…『覇気玉』が全然完成しない。)

 完成しない『覇気玉』の葛藤で苛立ちを覚え、集中するべき所が全て雑になっていく。

「……。」

 修行中の木戸を木へ凭れ、電気系統のメーターを弄っている。南雲がいた。
 今回、品川は山を降りて銀行へ向かっていたのだ。代理と周囲への監視も含めて、南雲が見ていたのだ。

(品川の奴、答えは教えたって言ってた割には、木戸は分かってなさそうだぞ? まあ、コイツが失敗しても俺には関係ないんだがな…)

 南雲は最初はなっから木戸の面倒等見る気なく。このまま何もせず、終われば木戸から解放され、自分たちの目的が果たされば問題ないと思っていた。

「よし! もう一回!」

 そんな南雲の心情を知らず、木戸は必死にも諦めず、『覇気玉』作りに励んでいた。

「……おい!」

「は、はい!」

 今まで気にも留めていなかった南雲が、強い怒気で木戸へ声を掛けた。

「しっかり腰を落として、両手を前に突き出し、ちゃんと集中しろ!」

 何故か南雲は怒り気味ながらも、木戸へ細かくアドバイスしていた。

「は、はい!」

 怒り心頭なので木戸は緊張しながら、南雲の言われた通りに行動した。そうすると安定感が増し、より力が込めやすくなり、集中しやすくなったのだ。

(凄い! さっきまで、しんどかったのに安定して楽になった!)

 木戸は何も知らない状態で、全身に無駄な膂力を込め、疲労ばかりが蓄積し、安定しなかったのだ。

「品川がお前に四日間、意味の無いと思われる筋トレをさせたのは、安定と力と集中を自分から、やり易さを発見するようにしたんだろう…アイツだから言葉足らずに教えてるのが、妥当だろうな。」

 南雲は不機嫌な悪態をつきながらも、木戸へ四日間の筋トレさせた意味を教えた。

「南雲さんって口は悪いですけど、頭良くて良い人なんですね!」

「違うな…俺は人類で頂点にいる…天才だ!」

 得意気な表情で格好つけながら、自分は天才だと自慢していた。

(成る程、この人も師匠と同じく頭がおかしい人だ。)

 木戸は海道にいる人達は、こんなのばっかなのかと思った。

「さあ、早く修行の続きをしろ。天才である俺が指導してやるから…」

「は、はい…」

 こんな調子の態度が続くなら、修二に指導してほしいと木戸は後悔していた。




 その頃、銀行で普段用の金額を降ろそうと行列ができるATMの前で待っていた。
 ブラックカードを所持しているのに、お金を降ろす理由は…煙草が切れた時、自販機で素早く購入できるようにしておくためだった。

「…人多いな」

 修二は死んだ目で少し呟きながら、長蛇とも呼べる行列に堪え忍んでいた。
 今日は帰るのが遅くなると思い、南雲に任せて正解だったと修二は、ナイスなアイデアで静かに微笑んでいた。
 そんな一人でニヤニヤしている修二を見た一般人は…

(なんか危ない人だな)

 だと、一般人は本能最大限に修二を警戒していた。

(おっと、やっと俺の出番だな)

 漸く修二の番となり、ATMの前へと立ち操作を始めた。給料明細等とかは貰っているが、合計金額を知らないので、残高確認をする。
 残高は億まで達しており、引き続き引き下ろそうとする。
 そして金額を設定し、引き落とし決定ボタンを押そうとした瞬間…

「動くな! 全員、腹這いになれ!」

 そこへ突如と、目の部分だけ覆われてないフェイスマスクを被り、アサルトライフルを武装した、黒ずくめの銀行強盗五人が現れた。
 一般人や銀行員も含め、銀行強盗の言う通りにして、腹這いとなっていた。
 モニターは停止し、修二はショックで呆然としてしまう。その馬鹿を一人置いておいて…

「おい、マジかよ! まだ金を引き出してねぇぞ! おーい! おーい!」

 モニターをバンバンと強く叩き、大きい声で悲壮感を表していた。

「おい、そこの赤髪! 早くテメェも腹這いになれや!」

「うるせぇ! こっちはニコチン摂取の原料が断たれてんだ! 二時間も並んで待ってたんだよ! 邪魔するとテメェからモニターを頭から叩きつけんぞ!」

 偉そうに指図する銀行強盗に対して、修二は逆ギレで対応する。
 修二はなんとかして、金額を取りだそうとしていた。

「おい、言う通りにしろ。コレが見えねぇのか?」

 冷静な銀行強盗がベレッタを修二の後頭部に突き付けた。冷たく重い命を奪う金属が肌へと触れる。

「さあ、煙草を吸い続けたいなら大人しく…ぐぶぇっ!」

 我慢の限界に達し、銀行強盗の態度にキレた修二はベレッタを『太陽』で溶かし、頭突きをかましたのだ。
 鼻の骨がメキメキと粉々になる痛々しい音が響き渡る。
 銀行強盗は鼻を両手で抑えて、痛みで悶絶していた。

「テメェ等、次本当に邪魔すると物食えねぇようにすんぞ!?」

 銀行強盗の本能が危険信号を発していた。
 修二の狂気的な睨みと波動を感じ、たじろぐするしかなかった。

「おい! 大人しくしねぇと人質を殺す…ぐぶぇっ!」

 落ち着きを取り戻した銀行強盗の一人は、女性を人質に取り、頭へ銃を突き付けた。が、遠く離れている修二が目前へとやって来て、思い切り腹パンし、銀行強盗は大きく吹っ飛んだ。
 大きく吹っ飛び、頑丈な窓ガラスを突き破り、通報で待機していたパトカーに衝突した。

「に、人間…じゃねぇ…」

 残り三人となった銀行強盗は心が折れかけていた。

「まだ文句ある奴は?」

 その一言と気迫だけで銀行強盗は武装解除し、降伏したのだ。
 そして邪魔する者がいなくなった事で、引き続き、引き下ろし操作をする。が、先程微量でも放った『太陽の覇気』で、ATMは漫画みたいな壊れ方をしていた。

「…ヤベェ、逃げるか!」

 まさか余波の影響で破壊するとは思っていなかった修二は、銀行の裏口から素早く逃走したのだ。
 警察に発見されずに遠くの裏路地まで逃走した修二。息は絶え絶えで、顔は大量に発汗していた。

「あ~東京に来てからハプニングばっかだ。これ以上騒ぎを起こすと忍を見つけんのも、ギャング集団探すのも、困難になるよな? まあ、暫くは森で大人しくするか…」

 修二は早速、路地裏から出ようとすると、気配を感じた。嫌悪な気配でもなく、敵意な気配でもなかった物だ。

「いや~素晴らしかったですよ。貴方の暴れっぷり、そうそう簡単に人間ができる事じゃないですよ?」

 遠くの背後から修二を拍手喝采で現れる影の男がいた。

「テメェ誰だコラァ?」

 未だに不機嫌な修二は振り向き、鋭く睨みつけながら尋ねた。

「貴方と同類な存在ですよ。でも、今日は時間がございません。不躾で申し訳ございませんが、ここは挨拶だけといたしましょう。ご機嫌よう、品川修二・・・・様。」

 そして気配は嘘のように消滅し、なんとか戦闘までには至らなかった。

(名前を知ってやがった…何時からだ? この東京に入って直ぐか? チンピラ相手に一度も名乗った事はねぇぞ…)

 修二は知らない誰から、名前と素性を知られていた事で、無性に腹が立っていた。
 そして軽く右拳でコンクリートの壁を殴る。

「…次に会うのが楽しみだ。ミスターミステリーマンよ」

 修二は険しい表情でコンクリートから右拳を離して、路地裏から立ち去った。
 コンクリートの壁に着いた跡は大きく奥へとめり込んで、そして亀裂が入り…大きなクレーターへと変貌した。
 そして無人のビルは直ぐ様、粉々と瓦礫化としていた。
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