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第2章 魔導使い襲来。
第78話 中分けの日常。
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病院から退院した数日後。修二は鏡の前で不備がないか確認しながら、ご機嫌な気分で赤いネクタイを着けていた。
赤いスーツ、赤いスラックス、ワイシャツだけは忍から持った黒い物。そして閻魔から貰った黒い革手袋も身に付けていた。
久々に弁護士として復帰できる事もあり。五年前、再び決闘をする約束もあり、それを楽しみ待っているのもあった。
「久々に復帰か。ちゃんと仕事内容、覚えてるかな?」
暫く地獄で過ごし、更に入院もありリハビリ以外、輝からは仕事禁止命令を出されており。
暇潰しと言えば、お見舞いに来た吹雪と話すぐらいだった。他の全員は悪魔が起こした事件の後始末に駆り出されていた。
退院間近に何か深く考えた表情で忍が訪問しに来ていた。それは閻魔からの言葉を伝える為だと本人は言っていた。
けれど他に何か伝える事を隠している様子だった。が、修二にしては関係ない事だと思い聞かなかった。
「おっし! 準備完了、そんじゃあ久し振りに出勤するか。」
修二は手洗い場から離れ、玄関まで歩き、慣れた手つきで、靴箱からシェリアに無償で貰った赤い革靴を取り出し履いた。
「いってきます。」
独り暮らしの修二ではあるが、何時も通りに築一年の新築マンションから仕事場へ徒歩で出発したのだ。
「おはようございます!」
数時間後には事務所へ到着し、元気よく修二は挨拶していた。何故だか、顔にはビッシリと血液が付着していた。
「ちっ、クソリーゼントか。輝さんなら今日は昼から出勤だぜ。」
視界に入ったのは犬猿の仲である。修二を見て、不機嫌な表情で机へ足を乗せて睨む、南雲だった。
「相変わらず、悪口しか言えねぇのかよ。キモロンゲ。」
悪態をつき、髪の毛をボリボリと掻きながら、ディスクへ着席し、ノートパソコンを開いた。
「え~と、溜まりに溜まった仕事はなんだ?」
「痴漢被害、遺産相続、金銭トラブル、まあ代わり映えしない仕事内容だ。」
「マジかよ。刑事訴訟とか難しい民事訴訟とか来てねぇのか?」
「全部、輝さんが請け負った。」
「輝さんは休んでるのか?」
「最近、少し忙しそうだったな。『魔導使い』が起こした事件の処理と、家族ぐるみの厄介事で困ってたな。」
「また忍が神に復讐するため、また癇癪起こしたとかか?」
「多分、それじゃねぇな。ここ最近、神崎忍は何もしてねぇな。それより幸せに人生を謳歌してたぞ。」
「あ? どういう事だよ?」
「三日前、俺が相川と一緒に仕事してた時…」
南雲は三日前の記憶を適当な感じで辿らせていた。
それは昼下がりの事だった。南雲と相川が一緒に証拠集めに出ていると、高級アクセサリーショップから、悠然と忍が出てくる所を偶然と目撃していたのだ。
そしてリムジンへ乗り込み、何処かへと去って行った。
「アレって忍さんだよね?」
相川が忍へ指を指して、いることを示していた。
「…金持ちって奴は働いてなくても、使える金があるって事だな。」
「でも、忍さんのお金ってモデルで稼いだ。お金じゃない?」
「…生まれ変わるなら、あんな性格じゃない、輝さんみたいなイケメンになりたいな。」
南雲は呆然とした雰囲気で、将来への願望を呟いていた。
「…細かい要望だね。それって、もう輝さんになりたいっていう話だよね?」
「…本当に性格が違うな。」
「輝さんと忍さん? 兄弟でも考え方は違うのは当たり前じゃない?」
「瓜そっくりで実力も同等なのに、性格は完全に真逆。兄弟だが、目的も完全に違う。兄貴は復讐、弟は調和…どうなったら、こんなにも差が出るんだろうな?」
忍と輝の圧倒的な性格の違いを南雲は、素直な感想で述べていた。
「…あの復讐心は並大抵の物じゃないよね。あんなに、静かで狂気的な復讐心。」
「それが『覇気使い最強』と呼ばれる由縁かもな。」
南雲は勝手ながらの推測だと思い、先へ進むため歩き出した。が、ピタリと立ち止まり、誰かを思い出したかの様に大空へ顔を向けた。
「一人だけ…一人だけは、そんな復讐心に囚われず『覇気使い最強』を純粋に目指している奴がな。」
南雲は手だけで中分けの髪型を作り、誰かを示していた。
「あ~!」
相川は指差して何かを察していた。
「おい! こんな事をしている暇なんかねぇぞ! 早く立証する証拠集めねぇと!」
「そうだったね!」
思い出話を終えて、二人は急ぎ足で何処かへと消えて行ったのだ。
ここで南雲の話は終わったのだ。
「…という事だ。」
「…まあ、アイツは久し振りに帰って来たばかりなんだ。暫くは大人しく待つか。」
忍が空白の五年間で楽しんでいるを聞いた修二は、邪魔するのは良くないので、暫くは我慢する事にしたのだ。
「クソリーゼントにしては、えらく大人になったな。」
「当たり前だろ? これでも立派な大人なんだぜ?」
当たり前の事を何故か修二は、ドヤ顔で格好つけていた。
「まあ、馬鹿は変わりねぇか。それより、その血液はなんだよ?」
「あ? コレ? 道端でチーマーに喧嘩吹っ掛けられたから、返り討ちにしたら付いた。」
南雲にはチーマーの末路が容易に想像ができた。そして「何故、こんなヤバい体格と雰囲気の奴に喧嘩を吹っ掛けれるのか」という、ツッコミと不思議が思い浮かんだ。
それから修二が弁護士に復帰してから二週間が容易く経った。
修二はパソコンと向かい合い、仕事を黙々とこなしていた。
「…おい、アレから二週間経ってるぞ? いくらなんでも遅すぎないか?」
「何が?」
「神崎忍との決着だよ。五年後に約束してんだろ? 放っておいていいのかよ?」
「アレだろ? まだ準備ができてない状態なんだろ? 万全の状態で戦いたいし、何時かは来るだろ?」
「…マジかよ。その良く分からん、根拠は何処から来るんだよ。」
未だに来ない忍に対し、南雲は修二へ催促してみた。が、意味不明なポジティブシンキングで修二は返答していた。
「先輩、仕事サボらないでくださいよ。」
「悪い悪い。」
隣で能登から注意を受けて、明るく修二は仕事を続けたのだ。
それから不穏にも、更に二週間が容易に経ったのだ。
「…あのさ、多分来ないと思うぞ? お前が行かない限り、絶対に来ないぞ?」
「いや、アイツは天の邪鬼みたいな奴だから『行こうと思ってたのに、来たから喧嘩すんの止めた』みたいな落ちになるからよ。ここは様子見だ。」
「いや、四週間経ってんだけど? 一ヶ月は容易に過ぎてんだよ。というより、そんな子供じみた事をアイツが言うか?」
「いや、大丈夫だ。絶対に…。」
修二の良く分からない根拠で圧倒され、何も言えなくなった南雲は、静かに座り黙るのだった。
それから更に残酷にも三ヶ月が、過ぎ去ってしまった。
「……。」
修二の口元には赤い色がした髭が生え、瞳から光が消えていた。もう過労死寸前と衰弱が目だっていたのだ。
一言も発する事もなく、黙々とパソコンのキーボードを打ち続ける。無感情な機械と化していた。
「あのさ…」
「…何も…言うな…。」
もはや限界だと感じた南雲は、話しかけようとした。が、修二は人差し指を立て出して、何も言わせないようにした。
「…多分、来ないと思うぜ。このまま忠犬ハチ公みたいに待つのは勝手だけどよ…。」
そう言われると修二は目を南雲へ向けて、ウルウルと涙ぐんでいた。
まさか大の大人が乙女みたいに、泣くとは思っていなかった南雲は気まずくなり…
「…あ、そうだ! 今日、輝さんに届ける書類があるんだった。能登ちゃんに留守番を任せて、一緒に行かねぇか? もしかしたら神崎忍もいたりするかもしれねぇ…。」
安易な考えだと思いながらも、南雲は修二をチラ見しながら様子を伺っていた。
「そう言う事なら仕方ねぇから、ついて行ってやるよ。」
家へ行く口実ができたので、修二の機嫌は良くなり、偉そうではあるが提案を受け入れたのだ。
(まあ、偉そうなのは我慢しておいて…これで、あのウザイ雰囲気に悩まされる事はなくなるな。)
「あの先輩方、仕事がまだ…。」
「じゃ、能登ちゃん。後は適当にやって勝手に終わってくれ。おい、行くぞクソリーゼント。」
「おい、待てよ!」
修二と南雲はスーツを手に取り、急いで事務所から勝手ながら退社したのだ。
能登はポツンと一人で置いてきぼりにされ、何も言わず作業をする事にしたのだ。
そして二人は神崎家で、思いもよらない残酷な事実を叩きつけられるのだった。
赤いスーツ、赤いスラックス、ワイシャツだけは忍から持った黒い物。そして閻魔から貰った黒い革手袋も身に付けていた。
久々に弁護士として復帰できる事もあり。五年前、再び決闘をする約束もあり、それを楽しみ待っているのもあった。
「久々に復帰か。ちゃんと仕事内容、覚えてるかな?」
暫く地獄で過ごし、更に入院もありリハビリ以外、輝からは仕事禁止命令を出されており。
暇潰しと言えば、お見舞いに来た吹雪と話すぐらいだった。他の全員は悪魔が起こした事件の後始末に駆り出されていた。
退院間近に何か深く考えた表情で忍が訪問しに来ていた。それは閻魔からの言葉を伝える為だと本人は言っていた。
けれど他に何か伝える事を隠している様子だった。が、修二にしては関係ない事だと思い聞かなかった。
「おっし! 準備完了、そんじゃあ久し振りに出勤するか。」
修二は手洗い場から離れ、玄関まで歩き、慣れた手つきで、靴箱からシェリアに無償で貰った赤い革靴を取り出し履いた。
「いってきます。」
独り暮らしの修二ではあるが、何時も通りに築一年の新築マンションから仕事場へ徒歩で出発したのだ。
「おはようございます!」
数時間後には事務所へ到着し、元気よく修二は挨拶していた。何故だか、顔にはビッシリと血液が付着していた。
「ちっ、クソリーゼントか。輝さんなら今日は昼から出勤だぜ。」
視界に入ったのは犬猿の仲である。修二を見て、不機嫌な表情で机へ足を乗せて睨む、南雲だった。
「相変わらず、悪口しか言えねぇのかよ。キモロンゲ。」
悪態をつき、髪の毛をボリボリと掻きながら、ディスクへ着席し、ノートパソコンを開いた。
「え~と、溜まりに溜まった仕事はなんだ?」
「痴漢被害、遺産相続、金銭トラブル、まあ代わり映えしない仕事内容だ。」
「マジかよ。刑事訴訟とか難しい民事訴訟とか来てねぇのか?」
「全部、輝さんが請け負った。」
「輝さんは休んでるのか?」
「最近、少し忙しそうだったな。『魔導使い』が起こした事件の処理と、家族ぐるみの厄介事で困ってたな。」
「また忍が神に復讐するため、また癇癪起こしたとかか?」
「多分、それじゃねぇな。ここ最近、神崎忍は何もしてねぇな。それより幸せに人生を謳歌してたぞ。」
「あ? どういう事だよ?」
「三日前、俺が相川と一緒に仕事してた時…」
南雲は三日前の記憶を適当な感じで辿らせていた。
それは昼下がりの事だった。南雲と相川が一緒に証拠集めに出ていると、高級アクセサリーショップから、悠然と忍が出てくる所を偶然と目撃していたのだ。
そしてリムジンへ乗り込み、何処かへと去って行った。
「アレって忍さんだよね?」
相川が忍へ指を指して、いることを示していた。
「…金持ちって奴は働いてなくても、使える金があるって事だな。」
「でも、忍さんのお金ってモデルで稼いだ。お金じゃない?」
「…生まれ変わるなら、あんな性格じゃない、輝さんみたいなイケメンになりたいな。」
南雲は呆然とした雰囲気で、将来への願望を呟いていた。
「…細かい要望だね。それって、もう輝さんになりたいっていう話だよね?」
「…本当に性格が違うな。」
「輝さんと忍さん? 兄弟でも考え方は違うのは当たり前じゃない?」
「瓜そっくりで実力も同等なのに、性格は完全に真逆。兄弟だが、目的も完全に違う。兄貴は復讐、弟は調和…どうなったら、こんなにも差が出るんだろうな?」
忍と輝の圧倒的な性格の違いを南雲は、素直な感想で述べていた。
「…あの復讐心は並大抵の物じゃないよね。あんなに、静かで狂気的な復讐心。」
「それが『覇気使い最強』と呼ばれる由縁かもな。」
南雲は勝手ながらの推測だと思い、先へ進むため歩き出した。が、ピタリと立ち止まり、誰かを思い出したかの様に大空へ顔を向けた。
「一人だけ…一人だけは、そんな復讐心に囚われず『覇気使い最強』を純粋に目指している奴がな。」
南雲は手だけで中分けの髪型を作り、誰かを示していた。
「あ~!」
相川は指差して何かを察していた。
「おい! こんな事をしている暇なんかねぇぞ! 早く立証する証拠集めねぇと!」
「そうだったね!」
思い出話を終えて、二人は急ぎ足で何処かへと消えて行ったのだ。
ここで南雲の話は終わったのだ。
「…という事だ。」
「…まあ、アイツは久し振りに帰って来たばかりなんだ。暫くは大人しく待つか。」
忍が空白の五年間で楽しんでいるを聞いた修二は、邪魔するのは良くないので、暫くは我慢する事にしたのだ。
「クソリーゼントにしては、えらく大人になったな。」
「当たり前だろ? これでも立派な大人なんだぜ?」
当たり前の事を何故か修二は、ドヤ顔で格好つけていた。
「まあ、馬鹿は変わりねぇか。それより、その血液はなんだよ?」
「あ? コレ? 道端でチーマーに喧嘩吹っ掛けられたから、返り討ちにしたら付いた。」
南雲にはチーマーの末路が容易に想像ができた。そして「何故、こんなヤバい体格と雰囲気の奴に喧嘩を吹っ掛けれるのか」という、ツッコミと不思議が思い浮かんだ。
それから修二が弁護士に復帰してから二週間が容易く経った。
修二はパソコンと向かい合い、仕事を黙々とこなしていた。
「…おい、アレから二週間経ってるぞ? いくらなんでも遅すぎないか?」
「何が?」
「神崎忍との決着だよ。五年後に約束してんだろ? 放っておいていいのかよ?」
「アレだろ? まだ準備ができてない状態なんだろ? 万全の状態で戦いたいし、何時かは来るだろ?」
「…マジかよ。その良く分からん、根拠は何処から来るんだよ。」
未だに来ない忍に対し、南雲は修二へ催促してみた。が、意味不明なポジティブシンキングで修二は返答していた。
「先輩、仕事サボらないでくださいよ。」
「悪い悪い。」
隣で能登から注意を受けて、明るく修二は仕事を続けたのだ。
それから不穏にも、更に二週間が容易に経ったのだ。
「…あのさ、多分来ないと思うぞ? お前が行かない限り、絶対に来ないぞ?」
「いや、アイツは天の邪鬼みたいな奴だから『行こうと思ってたのに、来たから喧嘩すんの止めた』みたいな落ちになるからよ。ここは様子見だ。」
「いや、四週間経ってんだけど? 一ヶ月は容易に過ぎてんだよ。というより、そんな子供じみた事をアイツが言うか?」
「いや、大丈夫だ。絶対に…。」
修二の良く分からない根拠で圧倒され、何も言えなくなった南雲は、静かに座り黙るのだった。
それから更に残酷にも三ヶ月が、過ぎ去ってしまった。
「……。」
修二の口元には赤い色がした髭が生え、瞳から光が消えていた。もう過労死寸前と衰弱が目だっていたのだ。
一言も発する事もなく、黙々とパソコンのキーボードを打ち続ける。無感情な機械と化していた。
「あのさ…」
「…何も…言うな…。」
もはや限界だと感じた南雲は、話しかけようとした。が、修二は人差し指を立て出して、何も言わせないようにした。
「…多分、来ないと思うぜ。このまま忠犬ハチ公みたいに待つのは勝手だけどよ…。」
そう言われると修二は目を南雲へ向けて、ウルウルと涙ぐんでいた。
まさか大の大人が乙女みたいに、泣くとは思っていなかった南雲は気まずくなり…
「…あ、そうだ! 今日、輝さんに届ける書類があるんだった。能登ちゃんに留守番を任せて、一緒に行かねぇか? もしかしたら神崎忍もいたりするかもしれねぇ…。」
安易な考えだと思いながらも、南雲は修二をチラ見しながら様子を伺っていた。
「そう言う事なら仕方ねぇから、ついて行ってやるよ。」
家へ行く口実ができたので、修二の機嫌は良くなり、偉そうではあるが提案を受け入れたのだ。
(まあ、偉そうなのは我慢しておいて…これで、あのウザイ雰囲気に悩まされる事はなくなるな。)
「あの先輩方、仕事がまだ…。」
「じゃ、能登ちゃん。後は適当にやって勝手に終わってくれ。おい、行くぞクソリーゼント。」
「おい、待てよ!」
修二と南雲はスーツを手に取り、急いで事務所から勝手ながら退社したのだ。
能登はポツンと一人で置いてきぼりにされ、何も言わず作業をする事にしたのだ。
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