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第1章 覇気使い戦争。
第23話 リーゼント対ポニーテール。
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竹島、相川、シェリアの三人は二人の対決が邪魔にならないよう、屋敷の安全地帯付近まで離れる。
「喧嘩のやり方? この戦いを喧嘩と言うのか? 笑わせるな、これはお前たち以外への見せしめだ。また他の者が忍様に手出しをしようとするならば俺が始末する。勿論、そんな奴等に負けた従者などいらん、俺だけでいい。」
雅は竹島と仲村に指を差した。だが二人は、どうでもいいように聞き流していた。
「…お前さ、仲間って意味知ってるか?」
修二の表情はリーゼントで隠れ、声は低く震え、拳を強く握りしめていた。
「仲間? 仲間というのは役に立つか立たないかだ。貴様もそうだろ? 相川祐司は負傷し、俺にリベンジしたと思いきや前座と言い出し、お前を頼った。奴は戦うことを放棄したのだよ。わざわざ勝ち目のない戦いなどしたくないからな!」
「それは違うな。」
修二は長々と理屈を話した雅の言葉を一言で否定した。
「何?」
「相川は戦うことを放棄したんじゃねぇ、アイツはお前の事情を知ってパンチ一発だけで気持ちを留めたんだよ。本来なら最後まで喧嘩すんのが一番だがな、今回に限っては俺が到着するまで時間稼ぎしてくれた。アイツが本気でやるなら、お前に最初から勝ち目なんてなかったぞ。」
「戯れ言を…弱い者は自分の身を守る為に理屈や言葉の殻に閉じ籠り、強い者を蔑み、妬み、憎む。俺はそんな奴等が嫌いだ。」
「それはテメェの価値観だろうが、弱いから竹島を殺そうとするのか?」
「そいつは忍様との約束を果たせず、惨めに敗北し、敵に情けをかけられて生きている醜い存在だ! 貴様も同罪だ仲村一之! 品川修二に負け、忍様の手を煩わせて、更に忍様に火傷を負わせて帰って来た貴様は!」
大声を張り上げ、我を忘れた雅が最後まで言おうとする。が、修二が立っている地面が雅の話を中断するように割れた。
「もういい。なんでもかんでも忍かよ…忍だってよ訳あってコイツ等、二人を選んだんだよ。でも、お前みたいな嫌な奴を選ぶって忍も人を見る目はなかったんだな。何が最強だ、しょうもねぇ男だな忍っていうのは!」
修二が最後まで本心ではない忍の罵倒が言い終わると、雅は殺意を宿らせた目で風のように素早く移動し、左袖口から取り出したクナイを喉元に突き立てていた。
「…死ね。」
雅は殺意の言葉に力一杯、喉仏を突き刺す。が、修二は右手で力強く雅の腕を掴み、静止する。
攻撃が未遂に終わると雅は左腕に力を込め、浮き上がり右ボレーキックで修二の顔を目掛けてぶちかます。
修二はキックが当たる寸前に左腕でガードし、雅の腕を離し右前蹴りで遠くまで吹き飛ばす。
低空で飛ばされた雅は空中に物があるかのように体勢を立て直し、地面に着地する。
「…正体が分かった。『風の覇気』だな。」
なんと修二は、ほんの僅かな時間で雅の『覇気』を言い当てたのだ。
「…竹島権田にも気づかれなかったのにな。」
雅は『覇気』の正体を忍を罵倒した修二に見破られたのが不満だったのか、悔しそうな表情を浮かべていた。
「…それも恐ろしく早く見えない攻撃。武器はカモフラージュでもあり…計算された動き…風力を感じて避けるしかねぇな。」
修二は炎を両腕に纏わせ、身構えていた。
「そんな余裕はあるかな?」
雅は修二の行動を嘲笑うかのように、風の力で空に向かい飛翔した。そしてジャケットから無数のクナイを撒き散らし、風圧でクナイを矢の如く修二に向けて発射する。
修二は苦虫を噛み潰した表情で、発射されたクナイを目で最大限に活用し、刃先がない部分を手刀でクナイを叩き落とす。
「これはどうかな?」
雅は怪しく微笑み、クナイが全て撃ち終わると次は手裏剣を発射する。
「クソッ!」
修二は刃しかない手裏剣を撃たれると先ほど怒って地割れを起こした地面に手を突っ込み、額に血管を浮かばせ力を入れて持ち上げる。
すると地面だったものは巨大な岩となり、その岩で修二は迫り来る手裏剣をガードする。
「…なあ? 品川って人間だよな?」
突然と仲村は修二の行動に驚きを隠せずに、相川に人間かどうか確認をした。
「…パンチ一発で木をへし折るのは修二だけだよ。もう驚いても仕方ないけど…。」
「頑張れ、品川さん!」
二人が呆気にとられている中でシェリアだけは元気に修二を応援し、竹島は胡座で座り寝ていた。
「『M.O.F』!」
手裏剣が弾切れになると修二は両足をメラメラと燃え上がらせ、必要なくなった岩を破壊し、空中に浮かんでいる雅にロケットの要領で飛翔する。
「『M.O.F 』か、そんな物は見切っている!」
近づいてくる修二に雅は、風を操り小さい竜巻を形成し放つ。
修二は放たれた竜巻を右ストレートで殴る。が、拳が触れた瞬間にパックリと切り傷が作られ血が吹き出す。
それを危惧したのか拳を竜巻から離し、足の炎を器用に使い、ジェット移動で竜巻から距離を取る。
(正面突破は無理か…それじゃあ…。)
修二は出来るだけ竜巻に近づかないように、素早く雅の背後に近づいた。
だが、突如と修二に電流が走り、雅の行動に引っ掛かりを感じた。
(おかしい、コイツなら俺の動きくらい感知できて対応できるのに…いや、もう対応していたのか!)
修二は炎の力を使い急ブレーキで止まり、雅から距離を取った。そんな修二の行動を見て雅は振り向き怪しく微笑んでいたのだ。
「…流石に、学力は馬鹿でも戦闘は馬鹿ではないか。」
修二は様子見の為に拾っていた小石を投げる。
すると雅に近づいた小石は無残にも粉々になり、消滅した。
「ねえ? あれって何!?」
相川は双眼鏡で観戦し雅に起きた現象が理解できなかった。
「…風を最大限に利用し、空気圧の殻で身を守っているのです。もし品川さんが無闇に攻撃していたら腕は無くなっていたでしょう。これは『覇気』を完璧まで自由自在に操っている証拠です。前方に竜巻の壁、後方に空気の壁…正しく完璧な防御。」
眉をしかめさせたシェリアが分かりやすく状況を解説してくれた。
「いや、完璧なんていう物は戦闘において存在はしない。」
そこに眠りから覚め欠伸をしながら竹島が途中から解説に入る。
「どういう事ッスか?」
「確かに雅は完璧に『風の覇気』を使いこなし、私を病院送りにした。だが、勝機はある…ここまで偉そうに言ったが、俺には算段は思い付かない。」
最後の言葉に三人はジト目で真面目に語った竹島を冷たく見るが、気を取り直し観戦に戻る。
「どうだ? これで分かっただろ、俺に勝てない貴様が忍様に挑むなんて夢なのだ。諦めて普通の日常に戻れ、最後の警告だ。貴様が忍様を罵倒した事は水に流してやる…!」
修二は雅の言葉を無視し、背後から火力の助走をつけた燃え盛る右ストレートで殴る。が、拳は雅に触れる事すらままならず寸止めで終わる。
「…もう止めだ。」
「何?」
突然と修二は呟き、そんな言動に驚きを隠せない雅は応答する。
「…もう考えて戦うのは止めだ。こっからはテメェをどんだけ殴れるか無理矢理やるだけだ。」
そう言うと修二は歯を食い縛り腕に膂力を込め、空気圧の壁を力づくで押し通そうとする。
「ふざけるな! 無理矢理で俺の壁を越えれる訳が…!」
雅は目を見開いた。それは徐々に拳が眼前に近づいてきていた事に…更に修二は獣の様な雄叫びを上げ『炎の覇気』にも力を込め、空気圧の壁を突き破ろうとしていた。
(そ、そんな! 仕方ない、竜巻を当てて体勢を立て直すか。)
雅は風を操り、修二の背後から竜巻で攻撃しようとする。
だが、竜巻は修二に当たる寸前に上空に向かって消滅した。
(な、何故だ!)
「オラァ!」
修二は掛け声と共に驚愕して油断をした雅の頬に一撃を与えた。
雅は抵抗なく地面に真っ逆さまに落ちた。が、すぐに意識を取り戻し、風を操り無事に着地し修二を睨む。
「…なるほど貴様には本気で戦わなければならないようだ。もう手は抜かない! 『風神』!」
雅を中心に暴風が渦巻き、四人は視認しようにも目に砂が入るのを防ぐのが精一杯で確認できない。
修二も急降下で着地し、雅を見る。
そして数秒後には、暴風は穏やかになり余裕で視認できるようになった。
そこに立っていたのは、両手に竜巻を覆わせ、背中まで伸びきった髪を靡かせ雅だった。
「貴様が初めてだ。この形態を忍様以外に見せるのは…お前の『M.O.F』と俺の『風神』、どちらかが強いか…証明してくれ。」
雅は会話している最中に、目の前に現れ一言と共に修二の鳩尾を目掛け強烈な右ストレートで殴る。
修二は殴られた衝撃で身体中の全て息を吐き出し、大きく、それもトラックに追突された衝撃のように吹っ飛んだ。
そして空中に浮かんでいる修二に雅は高速移動で追い討ちをかける。
修二は体勢を立て直し、眼前に近づいてきた雅を右ストレートで反撃した。が、それは残像で雅は既に背後にいてエックス字に修二の背中を手刀で切りつける。
すると修二の背中から噴射するように血液が勢いよく溢れでた。
「『かまいたち』だ。」
「クソッ!」
修二は悪態をつき、素早い裏拳をかました。が、雅は修二以上に早く離れ、再びエックス字に手刀で切りつける。
修二の大胸筋から腹筋まで切り傷が現れ、血が噴射される。
修二の返り血を顔に浴びた雅は、右手で触れ味を確かめる為に無表情に舐め笑う。
「獣みたいな奴だが、血は人間か。」
修二は右手で雅を触れようとするが、あまりにも短時間で激しく出血し過ぎた為、意識が朦朧となり両手足に纏っていた炎が鎮火し、瞳に光が消え目を閉じ、抵抗なく地面まで落下する。
「次は貴様等だ。この姿を見た者は消す。」
ニヒルに笑みを浮かべた雅は観戦していた四人に目をつけて抹殺宣言をする。
「一之、相川、構えろ来るぞ!」
「おうッス。」
「三人がかりなら!」
「私もいます。」
四人は近づいて来る雅に対して応戦する気だ。
だが、そんな事をせずとも雅の足は簡単に停止した。
「まだ…終わってねぇだろ…。」
それは意識を失った筈の修二が、披露を浮かべた表情で雅の右肩を左手でガッチリと掴み、満身創痍な体を酷使し、こっちに振り向かせ右ストレートで頬を殴る。
雅は殴られた衝撃で修二ほどに大きく飛ばされはしなかったが、ダメージはあった。
「死にたいようだな! ならば塵一つ残さず木端微塵に消し飛ばしてやる!」
雅はさっきより小さい竜巻より、ビルぐらいの大きさの竜巻を作りだす。
「…俺はまだ死なねぇ! 神崎忍の所まで『最強の座』を手に入れるまでは!」
修二は残りの力を振り絞り『M.O.F』を解放する。
「『風神竜巻』!」
そう雅が技名を叫ぶと竜巻は修二に向かう。
「うおぉぉぉぉッ!」
修二は気合いの雄叫びを上げ、迫り来る竜巻に立ち向かい走り出す。
誰もが竜巻に挑む行為が無謀に思えた修二の行動はこの時、奇跡を起こした。
修二は巨大な竜巻にも臆せず、全速力で走り、前へ突き進み、炎を纏った拳で渾身の右ストレートを竜巻に叩き付ける。
殴られた竜巻は炎を纏い、火災旋風を巻き起こす。
その火力は周りの草を野原に変えるぐらい燃やし、近くにある物を壊す力だった。
雅を含めた三人も固唾を飲み、今起きている現象に驚きを隠せない表情で惹かれていた。
やがて炎の竜巻は上空に舞い上がり、消滅した。
「ど、どういう事だ! 何故!? 何故、竜巻が再び消滅したんだ!」
雅は分かりやすく頭を抱え、目を見開き、現象を理解できなかった。
そんな油断があり、修二が近づいてくる事にも反応できず抵抗なしに強烈なアッパーは雅の顎を捉えてマトモに喰らった。
雅は口を切り、殴られた衝撃で視界に写る景色が歪み、背中から地面に落下した。修二に敗北したのが悔しかったのか涙を流し、ゆっくりと忍の事を考え気絶した。
「……か、勝ったの?」
「…あ、あぁ! 勝ったんだ! 品川が最後の三銃士にーーー勝ったんだ!」
相川は隣にいた仲村に勝敗について聞いた。仲村は普段の口調を忘れるぐらいに興奮が収まらなく歓喜していた。
シェリアも戦いの最中に気づかず涙が流れて修二の勝利に声に現せない程ぐらいに心では嬉しかった。
「良くやったな。」
拍手しながら竹島は穏やかな表情で修二の隣に近づく。
「…俺は…。」
竹島は曇った表情で修二が言おうとした事に右手で静止する。
「…どうであれ、お主の勝利だ。これで忍様に挑む権利を得たんだ。胸を張れ、そして前に突き進め…この勝利は本物だ。」
「だけど俺には後味の悪い勝利だ。シェリアちゃんの時もそうだったけどよ、俺は…また戦いで“女”を殴ったんだ。」
修二の驚きの発言に、竹島はそうかという悟った表情になり同情していた。
「…知っていたのか。」
「最初は分からなかったが、柏木さんと確認して、そして戦って分かった。木元雅が女で産まれて、俺たち以上に暗くて怖い外の街で育ち、忍に救われたってな。」
「…そうか。運命とは時に残酷だな。」
こうして修二は最後の三銃士、木元雅を倒し神崎忍との戦う挑戦を得た。
だが、修二はこの勝利を素直には喜べなかった。
「おめでとう、『炎の覇気使い』品川修二。お前は俺と戦う挑戦権を得た。」
雅を除いた五人が不意に聞こえた声で背後を振り向き、歓喜から驚愕に変わり身構えた。
それは喪服を着た忍がいたからだ。
「…神崎…忍…。」
五人は再び緊迫が走り、この修羅場をどう逃れるか考えていた。
「喧嘩のやり方? この戦いを喧嘩と言うのか? 笑わせるな、これはお前たち以外への見せしめだ。また他の者が忍様に手出しをしようとするならば俺が始末する。勿論、そんな奴等に負けた従者などいらん、俺だけでいい。」
雅は竹島と仲村に指を差した。だが二人は、どうでもいいように聞き流していた。
「…お前さ、仲間って意味知ってるか?」
修二の表情はリーゼントで隠れ、声は低く震え、拳を強く握りしめていた。
「仲間? 仲間というのは役に立つか立たないかだ。貴様もそうだろ? 相川祐司は負傷し、俺にリベンジしたと思いきや前座と言い出し、お前を頼った。奴は戦うことを放棄したのだよ。わざわざ勝ち目のない戦いなどしたくないからな!」
「それは違うな。」
修二は長々と理屈を話した雅の言葉を一言で否定した。
「何?」
「相川は戦うことを放棄したんじゃねぇ、アイツはお前の事情を知ってパンチ一発だけで気持ちを留めたんだよ。本来なら最後まで喧嘩すんのが一番だがな、今回に限っては俺が到着するまで時間稼ぎしてくれた。アイツが本気でやるなら、お前に最初から勝ち目なんてなかったぞ。」
「戯れ言を…弱い者は自分の身を守る為に理屈や言葉の殻に閉じ籠り、強い者を蔑み、妬み、憎む。俺はそんな奴等が嫌いだ。」
「それはテメェの価値観だろうが、弱いから竹島を殺そうとするのか?」
「そいつは忍様との約束を果たせず、惨めに敗北し、敵に情けをかけられて生きている醜い存在だ! 貴様も同罪だ仲村一之! 品川修二に負け、忍様の手を煩わせて、更に忍様に火傷を負わせて帰って来た貴様は!」
大声を張り上げ、我を忘れた雅が最後まで言おうとする。が、修二が立っている地面が雅の話を中断するように割れた。
「もういい。なんでもかんでも忍かよ…忍だってよ訳あってコイツ等、二人を選んだんだよ。でも、お前みたいな嫌な奴を選ぶって忍も人を見る目はなかったんだな。何が最強だ、しょうもねぇ男だな忍っていうのは!」
修二が最後まで本心ではない忍の罵倒が言い終わると、雅は殺意を宿らせた目で風のように素早く移動し、左袖口から取り出したクナイを喉元に突き立てていた。
「…死ね。」
雅は殺意の言葉に力一杯、喉仏を突き刺す。が、修二は右手で力強く雅の腕を掴み、静止する。
攻撃が未遂に終わると雅は左腕に力を込め、浮き上がり右ボレーキックで修二の顔を目掛けてぶちかます。
修二はキックが当たる寸前に左腕でガードし、雅の腕を離し右前蹴りで遠くまで吹き飛ばす。
低空で飛ばされた雅は空中に物があるかのように体勢を立て直し、地面に着地する。
「…正体が分かった。『風の覇気』だな。」
なんと修二は、ほんの僅かな時間で雅の『覇気』を言い当てたのだ。
「…竹島権田にも気づかれなかったのにな。」
雅は『覇気』の正体を忍を罵倒した修二に見破られたのが不満だったのか、悔しそうな表情を浮かべていた。
「…それも恐ろしく早く見えない攻撃。武器はカモフラージュでもあり…計算された動き…風力を感じて避けるしかねぇな。」
修二は炎を両腕に纏わせ、身構えていた。
「そんな余裕はあるかな?」
雅は修二の行動を嘲笑うかのように、風の力で空に向かい飛翔した。そしてジャケットから無数のクナイを撒き散らし、風圧でクナイを矢の如く修二に向けて発射する。
修二は苦虫を噛み潰した表情で、発射されたクナイを目で最大限に活用し、刃先がない部分を手刀でクナイを叩き落とす。
「これはどうかな?」
雅は怪しく微笑み、クナイが全て撃ち終わると次は手裏剣を発射する。
「クソッ!」
修二は刃しかない手裏剣を撃たれると先ほど怒って地割れを起こした地面に手を突っ込み、額に血管を浮かばせ力を入れて持ち上げる。
すると地面だったものは巨大な岩となり、その岩で修二は迫り来る手裏剣をガードする。
「…なあ? 品川って人間だよな?」
突然と仲村は修二の行動に驚きを隠せずに、相川に人間かどうか確認をした。
「…パンチ一発で木をへし折るのは修二だけだよ。もう驚いても仕方ないけど…。」
「頑張れ、品川さん!」
二人が呆気にとられている中でシェリアだけは元気に修二を応援し、竹島は胡座で座り寝ていた。
「『M.O.F』!」
手裏剣が弾切れになると修二は両足をメラメラと燃え上がらせ、必要なくなった岩を破壊し、空中に浮かんでいる雅にロケットの要領で飛翔する。
「『M.O.F 』か、そんな物は見切っている!」
近づいてくる修二に雅は、風を操り小さい竜巻を形成し放つ。
修二は放たれた竜巻を右ストレートで殴る。が、拳が触れた瞬間にパックリと切り傷が作られ血が吹き出す。
それを危惧したのか拳を竜巻から離し、足の炎を器用に使い、ジェット移動で竜巻から距離を取る。
(正面突破は無理か…それじゃあ…。)
修二は出来るだけ竜巻に近づかないように、素早く雅の背後に近づいた。
だが、突如と修二に電流が走り、雅の行動に引っ掛かりを感じた。
(おかしい、コイツなら俺の動きくらい感知できて対応できるのに…いや、もう対応していたのか!)
修二は炎の力を使い急ブレーキで止まり、雅から距離を取った。そんな修二の行動を見て雅は振り向き怪しく微笑んでいたのだ。
「…流石に、学力は馬鹿でも戦闘は馬鹿ではないか。」
修二は様子見の為に拾っていた小石を投げる。
すると雅に近づいた小石は無残にも粉々になり、消滅した。
「ねえ? あれって何!?」
相川は双眼鏡で観戦し雅に起きた現象が理解できなかった。
「…風を最大限に利用し、空気圧の殻で身を守っているのです。もし品川さんが無闇に攻撃していたら腕は無くなっていたでしょう。これは『覇気』を完璧まで自由自在に操っている証拠です。前方に竜巻の壁、後方に空気の壁…正しく完璧な防御。」
眉をしかめさせたシェリアが分かりやすく状況を解説してくれた。
「いや、完璧なんていう物は戦闘において存在はしない。」
そこに眠りから覚め欠伸をしながら竹島が途中から解説に入る。
「どういう事ッスか?」
「確かに雅は完璧に『風の覇気』を使いこなし、私を病院送りにした。だが、勝機はある…ここまで偉そうに言ったが、俺には算段は思い付かない。」
最後の言葉に三人はジト目で真面目に語った竹島を冷たく見るが、気を取り直し観戦に戻る。
「どうだ? これで分かっただろ、俺に勝てない貴様が忍様に挑むなんて夢なのだ。諦めて普通の日常に戻れ、最後の警告だ。貴様が忍様を罵倒した事は水に流してやる…!」
修二は雅の言葉を無視し、背後から火力の助走をつけた燃え盛る右ストレートで殴る。が、拳は雅に触れる事すらままならず寸止めで終わる。
「…もう止めだ。」
「何?」
突然と修二は呟き、そんな言動に驚きを隠せない雅は応答する。
「…もう考えて戦うのは止めだ。こっからはテメェをどんだけ殴れるか無理矢理やるだけだ。」
そう言うと修二は歯を食い縛り腕に膂力を込め、空気圧の壁を力づくで押し通そうとする。
「ふざけるな! 無理矢理で俺の壁を越えれる訳が…!」
雅は目を見開いた。それは徐々に拳が眼前に近づいてきていた事に…更に修二は獣の様な雄叫びを上げ『炎の覇気』にも力を込め、空気圧の壁を突き破ろうとしていた。
(そ、そんな! 仕方ない、竜巻を当てて体勢を立て直すか。)
雅は風を操り、修二の背後から竜巻で攻撃しようとする。
だが、竜巻は修二に当たる寸前に上空に向かって消滅した。
(な、何故だ!)
「オラァ!」
修二は掛け声と共に驚愕して油断をした雅の頬に一撃を与えた。
雅は抵抗なく地面に真っ逆さまに落ちた。が、すぐに意識を取り戻し、風を操り無事に着地し修二を睨む。
「…なるほど貴様には本気で戦わなければならないようだ。もう手は抜かない! 『風神』!」
雅を中心に暴風が渦巻き、四人は視認しようにも目に砂が入るのを防ぐのが精一杯で確認できない。
修二も急降下で着地し、雅を見る。
そして数秒後には、暴風は穏やかになり余裕で視認できるようになった。
そこに立っていたのは、両手に竜巻を覆わせ、背中まで伸びきった髪を靡かせ雅だった。
「貴様が初めてだ。この形態を忍様以外に見せるのは…お前の『M.O.F』と俺の『風神』、どちらかが強いか…証明してくれ。」
雅は会話している最中に、目の前に現れ一言と共に修二の鳩尾を目掛け強烈な右ストレートで殴る。
修二は殴られた衝撃で身体中の全て息を吐き出し、大きく、それもトラックに追突された衝撃のように吹っ飛んだ。
そして空中に浮かんでいる修二に雅は高速移動で追い討ちをかける。
修二は体勢を立て直し、眼前に近づいてきた雅を右ストレートで反撃した。が、それは残像で雅は既に背後にいてエックス字に修二の背中を手刀で切りつける。
すると修二の背中から噴射するように血液が勢いよく溢れでた。
「『かまいたち』だ。」
「クソッ!」
修二は悪態をつき、素早い裏拳をかました。が、雅は修二以上に早く離れ、再びエックス字に手刀で切りつける。
修二の大胸筋から腹筋まで切り傷が現れ、血が噴射される。
修二の返り血を顔に浴びた雅は、右手で触れ味を確かめる為に無表情に舐め笑う。
「獣みたいな奴だが、血は人間か。」
修二は右手で雅を触れようとするが、あまりにも短時間で激しく出血し過ぎた為、意識が朦朧となり両手足に纏っていた炎が鎮火し、瞳に光が消え目を閉じ、抵抗なく地面まで落下する。
「次は貴様等だ。この姿を見た者は消す。」
ニヒルに笑みを浮かべた雅は観戦していた四人に目をつけて抹殺宣言をする。
「一之、相川、構えろ来るぞ!」
「おうッス。」
「三人がかりなら!」
「私もいます。」
四人は近づいて来る雅に対して応戦する気だ。
だが、そんな事をせずとも雅の足は簡単に停止した。
「まだ…終わってねぇだろ…。」
それは意識を失った筈の修二が、披露を浮かべた表情で雅の右肩を左手でガッチリと掴み、満身創痍な体を酷使し、こっちに振り向かせ右ストレートで頬を殴る。
雅は殴られた衝撃で修二ほどに大きく飛ばされはしなかったが、ダメージはあった。
「死にたいようだな! ならば塵一つ残さず木端微塵に消し飛ばしてやる!」
雅はさっきより小さい竜巻より、ビルぐらいの大きさの竜巻を作りだす。
「…俺はまだ死なねぇ! 神崎忍の所まで『最強の座』を手に入れるまでは!」
修二は残りの力を振り絞り『M.O.F』を解放する。
「『風神竜巻』!」
そう雅が技名を叫ぶと竜巻は修二に向かう。
「うおぉぉぉぉッ!」
修二は気合いの雄叫びを上げ、迫り来る竜巻に立ち向かい走り出す。
誰もが竜巻に挑む行為が無謀に思えた修二の行動はこの時、奇跡を起こした。
修二は巨大な竜巻にも臆せず、全速力で走り、前へ突き進み、炎を纏った拳で渾身の右ストレートを竜巻に叩き付ける。
殴られた竜巻は炎を纏い、火災旋風を巻き起こす。
その火力は周りの草を野原に変えるぐらい燃やし、近くにある物を壊す力だった。
雅を含めた三人も固唾を飲み、今起きている現象に驚きを隠せない表情で惹かれていた。
やがて炎の竜巻は上空に舞い上がり、消滅した。
「ど、どういう事だ! 何故!? 何故、竜巻が再び消滅したんだ!」
雅は分かりやすく頭を抱え、目を見開き、現象を理解できなかった。
そんな油断があり、修二が近づいてくる事にも反応できず抵抗なしに強烈なアッパーは雅の顎を捉えてマトモに喰らった。
雅は口を切り、殴られた衝撃で視界に写る景色が歪み、背中から地面に落下した。修二に敗北したのが悔しかったのか涙を流し、ゆっくりと忍の事を考え気絶した。
「……か、勝ったの?」
「…あ、あぁ! 勝ったんだ! 品川が最後の三銃士にーーー勝ったんだ!」
相川は隣にいた仲村に勝敗について聞いた。仲村は普段の口調を忘れるぐらいに興奮が収まらなく歓喜していた。
シェリアも戦いの最中に気づかず涙が流れて修二の勝利に声に現せない程ぐらいに心では嬉しかった。
「良くやったな。」
拍手しながら竹島は穏やかな表情で修二の隣に近づく。
「…俺は…。」
竹島は曇った表情で修二が言おうとした事に右手で静止する。
「…どうであれ、お主の勝利だ。これで忍様に挑む権利を得たんだ。胸を張れ、そして前に突き進め…この勝利は本物だ。」
「だけど俺には後味の悪い勝利だ。シェリアちゃんの時もそうだったけどよ、俺は…また戦いで“女”を殴ったんだ。」
修二の驚きの発言に、竹島はそうかという悟った表情になり同情していた。
「…知っていたのか。」
「最初は分からなかったが、柏木さんと確認して、そして戦って分かった。木元雅が女で産まれて、俺たち以上に暗くて怖い外の街で育ち、忍に救われたってな。」
「…そうか。運命とは時に残酷だな。」
こうして修二は最後の三銃士、木元雅を倒し神崎忍との戦う挑戦を得た。
だが、修二はこの勝利を素直には喜べなかった。
「おめでとう、『炎の覇気使い』品川修二。お前は俺と戦う挑戦権を得た。」
雅を除いた五人が不意に聞こえた声で背後を振り向き、歓喜から驚愕に変わり身構えた。
それは喪服を着た忍がいたからだ。
「…神崎…忍…。」
五人は再び緊迫が走り、この修羅場をどう逃れるか考えていた。
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過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
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結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
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