マグナムブレイカー

サカキマンZET

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第1章 覇気使い戦争。

第8話 ボウズの昔話。前編

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 三年前の四月二十五日、海道中学に伝説のあの男はいた。
 黄色のモヒカン頭に相手を威圧するような赤いアイメイクに耳に大量のピアスやボロボロのレザージャケットを身につけた。周りの集団のセンターに仲村一之(十三歳)はいた。

「よっしゃあ! テメェ等、今日もバイクで全国制覇を目指すぞ!」

 白く背中に“夜路死苦”と書かれた特攻服を身につけた、リーダーらしき男が百人のバイカー集団に指示をしていた。

「隊長! 今日もバリバリの走りを見せてくださいよ!」

「おう、任せろ!」

 その当時、仲村一之は若手で特攻隊長と呼ばれ、語尾はまだ言っていなかった。
 彼が特攻隊長まで呼ばれた理由は喧嘩の実力と仲間からの信頼から厚かったために、リーダーからも直々に決める程までに信頼が厚かったので、そこまで登り詰めていたのだ。

「うるさい、バイカー集団やな。」

「面倒くさい事に巻き込まれんで、はよ買いに行こうや。」

「あぁ、わりぃ」

 その当時、まだパーマじゃなく前髪が右目にかかって、学校指定のブレザーを着ていた吹雪とソフトモヒカンの内藤が、バイカー集団に文句を言いながらCDショップに入店した。

「テメェ等、今日は東京まで走るぜ!」

 そのリーダーの掛け声と共に、バイカー集団は海道の橋から大阪まで渡り、高速道路で東京の夜の闇に消えた。

「なんだ、アレ?」

「おい、馬鹿弟子。新幹線に乗り遅れるから早くしろ!」

「へーい。」

 一人の赤髪の青年と刑事コロンボ風の男が、新大阪駅の新幹線に乗って大阪から旅立ったのは、また別の話しになる。


 明朝に帰って来た仲村はガレージにバイクを指定されている駐車場に停車し、部屋に帰る途中にアパートのポストに寄り中を乱雑に探る。
 そして見慣れない手紙が入っており、仲村は何か景品でも当たったのかと思い、内心ワクワクさせながら手紙を開ける。
 その内容は…

『拝啓、仲村一之様。いきなりのお手紙で驚かれていますが省略させて要件だけをお伝えします。この度、貴方様を忍様の護衛任務をしてもらいたく手紙を送りました。詳細につきましては神崎屋敷までお越しください。 柏木レンより』

「なんだこれ? 神崎屋敷? なんだよ護衛任務って? どこの誰のイタズラなんだ? 全く俺も舐められた物だな。こんな事を考える馬鹿が世の中にいたなんてな。」

 仲村は手紙を破こうとしたが、何故か手が止まり破けなかった。
 仲村の心にモヤモヤが溜まり、不機嫌な表情で頭をかきながらチラシと一緒に持って部屋に帰る。
 そして部屋に帰り、玄関でレザーブーツを脱ぐ、仲村の部屋はすぐに入れば隣にキッチンがあり、奥に進めば横向きのベッドがある間取りの部屋だった。
 急ぎ足でベッドに向かうがチラシと手紙を一緒に机の上に投げ捨て、ベッドの上に背中からダイブする。
 そして手紙の事で頭を悩ませ考え込む。

「俺に…護衛…俺なんかみたいな化け物に…何、期待してんだよ。寝よ寝よ、明日から静岡まで走るんだ。仮眠とらねぇと……。」

 だが、なかなか仲村は夜まで寝付けなかった。



「見てくれよ! こんな事ができるんだぜ!」

 そこは公園で夕焼の時刻、周りに小さい少年と少女たちが騒ぎたむろしていた。その理由は一人の白のタンクトップにベージュの半ズボンに草履を身につけた、丸坊主の少年が両手をかざしただけで、水を頭の上まで、空中に浮かせていたからだ。
 その少年を能力を見て、周りの少年と少女たちは驚愕しながらも歓喜に溢れていた。

「そんなのインチキだよ! 絶対に何か仕掛けとかあるよ!」

「え?」

 一人の少年の言葉で、彼は動揺し操作が誤り、水は力が抜けた様に地面に落ち、四方八方に破裂して土に水が染み込む。

「おい、何すんだよ!」

「ちょっとサイテー!」

 風船の様に破裂した水で少年と少女に濡れてしまったからだ。

「ご、ごめん…。」

 彼の謝罪は虚しくも少年少女に無視をされ、周りから彼を嫌悪する様に離れ立ち去った。

「お、俺は別に…みんなを…傷つける…つもり…なかったのに…。」

 彼は顔をうずくめ、握り拳を作り、自分がした事を嘆き、泣いていた。



「うわああぁぁぁぁッ!」

 仲村はゼーゼーと息を切らし、顔を青ざめ恐ろしい夢を見たような様子だった。
 そしてカーテンを閉めずに寝ていたかのか、身体中を発汗させていた。シーツとベッドは汗で大きく濡れていた。
 それは朝の太陽なのか急激な緊張による身体の温度上昇なのかは本人でも分からなかった。

「…なんだよ、たんなる夢か。」

 自分の安否を確認した後に即座に仲村は時計を見る。

「今日は静岡まで走るんだったな…洗濯して、行く準備するか…。」

(なんで今更、こんな夢を見んだよ…。)

 仲村は曇った表情を浮かべ不機嫌な気分になったが、思考を切り替え、ベッドから立ち上がり、白のタンクトップから脱ぎ、続いてレザーパンツを脱ぎ、最後にパンツを脱ぎ、全裸になり風呂場に向かい、シャワーを浴びる。
 シャワーを浴び終わるとタオルで身体を隅々まで拭き、全裸のまま風呂場から出て、部屋を眺めるが仲村は部屋に違和感を感じた。
 仲村が違和感を感じたのは、この部屋で自分以外の人の気配を感じたからだ。
 表情を強張らせて、周りを見ながら人の気配を辿った。

「感知能力はまずまず、後は…」

 仲村は背後から野太い声を聞こえた瞬間に、『水鉄砲』の構えを取り、撃つ人物を確認せず必死な顔で振り向き、バックステップで離れ水を二発、躊躇なく素早く発砲した。
 だが、男は瞬時に仲村の『水鉄砲』の水を二発も縦真ん中に切り裂いた。

「嘘…だろ…。」

 仲村が驚愕していた。『水鉄砲』の水を切り裂いたのでは無く、切り裂いた得物に驚きを隠せなかったのだ。
 その男が水を切り裂いた得物は…どこから出したのか大男から小さく見える程のチェーンソーだった。

「ギャギャギャギャギャ、躊躇なく撃つ姿勢…神経を少し疑いますが、素晴らしいです。これなら護衛を任せられます。」

 男の変な笑いかたした後の数秒後に仲村の意識はハッキリとしていた。
 その男の見た目は仲村の倍以上に大きく、角刈りの金髪、図体に似つかわしい神父服、首からぶら下げている金色のロザリオ、ヤクザでも逃げ出しそうな強面、そして何故か左目だけが赤く発光する大男が確認できた。

「…不法侵入してるアンタの方が神経疑うね。それに下らねぇ手紙まで送って来たのも、アンタなら尚更だ。」

 仲村は大男の言葉に冷静に対応する。

「それもそうですね。それじゃあ見学をしましょう、早く服に着替えてください。」

 大男はチェーンソーを懐に仕舞い、仲村の提案を持ち掛け着替えを待つことにした。

「……。」

 仲村は黙々と大男を睨みな警戒しながら、新しいパンツを履いて、バイカースタイルのいつもの姿になる。



「リムジンの乗り心地はどうでしょうか?」

 大男は明るい表情でハンドルを操作しながらムスっとした表情で助手席に座る仲村に問い掛ける。

「…たいしてバイクのシートと座り心地が変わんねぇな!」

 仲村は大男が気に入らないのか、腕を組み、ぶっきらぼうな態度で答える。

「そうですか、それは残念です。そのシート、買い換えるだけでも十万はいきますから…。」

 仲村は経験した事のない金額を聞いただけで、バツが悪そうな顔をして、少し座るのが遠慮したい気持ちだった。
 大男は仲村の表情を見て、イタズラに笑う。

「紹介が遅れました。柏木レンです。その手紙の送り主であり、神崎邸の番人もしております。」

「へぇーそれで、その番人さんが俺みたいな底辺にいそうなチンピラのバイカーを捕まえて、その金持ちの忍様にケツを出せって言うのか?」

「ギャギャギャギャギャ、それは汚い絵面ですね。でも、そんな事になったら…アナタを容赦なく消さなければならない、例え泣き叫ぼうと許しを乞おうても…理解できました?」

 笑顔のまま、一瞬に放たれた柏木の殺気が、仲村の表情は青ざめさせ、身体を硬直させた。まさに蛇に睨まれた蛙の状態で、仲村は柏木の言葉に冷や汗を流す。

「すみません、癖でやってしまいます。神崎の周りは敵が多くて、隙を見せただけでも不意を突かれたりしてしまうので…ハンカチどうぞ。」

 仲村の状態を察し、ポケットから白いハンカチを渡す。
 仲村は少し戸惑いながら、柏木のハンカチを受け取り冷や汗を拭く。

「洗って返す。」

「差し上げます。怖がらせたお詫びです。」

「そ、そうか…このハンカチって…。」

「安心してください、それは安物です。」

「……。」

「もうすぐ着きます。」



 神崎の屋敷に太陽に照らされ、部屋全体が周りの物を明るくさせていた。

「……。」

 そこに上半身は裸で、黒のスラックスしか身に付けていない少し眠そうな忍が窓の前にいた。

「おはようございます忍様、今、柏木さんが帰ってまいりました。」

 天井から忍者が現れ、現状を忍に報告する。

「…こんな朝早くに叩き起こされ、更に休日の日に…文句を言っても仕方ないな。」

 忍は目は呆れながらも振り向かず、忍者に朝から柏木に起こされた事に愚痴を吐いていたが臨機応変に考える事にした。

「忍様、よければコーヒーを淹れましょうか?」

「…ミルクなし、砂糖は二つ。」

「ただいま、お持ちします。」

 忍者は天井まで軽く飛翔し、天井裏に消えた。
 忍は振り向き窓から離れ、ゆっくりとクローゼットに近づき開ける。その中に黒いワイシャツを選び、その黒いワイシャツを身に付ける。

「さて、柏木さんが連れてくる奴の面接するか。」

 不適な笑みを浮かべ忍は襟を直し、ドアを豪快に両開きをして屋敷の廊下をゆっくりと歩く。
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