吸血竜の青い薔薇

第一節「レナトゥスの目覚め」

SCENE-020 竜の巣

　双子を乗せた竜キリエが降り立ったのは、いくつかある中庭の一つ。
　ティル・ナ・ノーグの外廷として機能しているイシュナフ宮の中にあって、人の出入りが厳しく制限された中庭の一角――奥宮として建てられた屋敷の前――で、一体の自動人形オートマタが一行の到着を待ち構えていた。

「お帰りなさいませ」
　ヴラディスラウス・ドラクレアを小王と仰ぐ人造王樹デミドラシル、〔扶桑ふそう〕。
　その手足として働く人型端末ヒューマノイド・インターフェース。

　傍目にもその立場というものがわかりやすく、使用人然としたお仕着せに身を包んだ女性型の自動人形オートマタは、この上もなく恭しい態度で一行を出迎える。



　折り目正しく頭を下げた出迎えには目もくれず、ドラクレアの分霊たちはイシュナフ宮の奥宮へと足を踏み入れた。