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 第一節「レナトゥスの目覚め」

SCENE-016 遊覧飛行

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「まともに飛んだこともないような竜なんて、よく乗ろうと思ったね」
「魔法で補助するなら乗用法器ワルキューレと変わらないでしょ。キリエの魔力量なら、ここから行政島ティル・タルンギレまで飛んでも息切れなんてしないだろうし」

 伊月と鏡夜を乗せたキリエが羽ばたくごとに、瓦礫で覆われた荘園の景色はぐんぐん遠ざかり、飛び立ってからものの数十秒で、監獄指定された浮島――都築が荘園主シェリフ として登録された荘園シャイア――の領域から飛び出した。



 途端に、伊月と鏡夜――正真正銘の徒人と、徒人の肉体マテリアルボディ化けの皮・・・・として被っている分霊――の物理的な視界は靄がかかったよう見通しが悪くなる。

 底の海ナーストレンドに程近いティル・ナ・ノーグの下層部はそういう場所・・・・・・だと、伊月も知ってはいたので。高度を上げるため、体を大きく傾けながら飛んでいるキリエが向かう先に白い闇のような靄が立ち込めていることに、不安は感じなかった。

 その靄――目に見えて視界を遮るほどに濃い魔素――を吸い込んだが最後。下層部の空気が徒人の生存に適さない、まともに吸い込めばたちどころに魔力汚染で人外ひとでなしへと転化してしまうような魔素濃度だとわかっていても、伊月の中では魔力汚染への恐怖より、ドラクレアへの信用の方が遥かに勝っている。



「キリエだって、まともに飛べる自信がないなら私を乗せたりしないわよ」
 ねぇ? と背中の鱗を撫でられて。キリエは返事の代わりにグルッと喉を鳴らした。
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