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第7話
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あの日からアルマシア様の姿を学園で見かけることはなかった。
噂ではロンカスター公爵閣下が激怒し、アルマシア様に責任を取らせて誰かと結婚させることになったという。
…責任を取らせるための結婚なら、きっと相当訳ありの相手との結婚だと思う。
リフィン殿下と結婚できれば将来は王妃様だったかもしれないけど、見事な転落人生だ。
くだらない嫌がらせをするような人だから、それが本来結ばれるべき相手なのかも。
でも噂なんて所詮噂だし、事実は異なるのかもしれない。
とにかく学園に平和が戻ったのだから、それで良しとする。
* * * * * * * * * *
改めて開催されることになったパーティー。
今回は断罪もなかったので大きな問題もなく進んでいった。
そしてダンスの時間がやってきた。
婚約者のいない私は誰かに声をかける勇気もなく、大人しく壁の花になろうとしていたけど、そんな私に声をかけてくれた人がいた。
「グラハント様」
「クロエ嬢、少しいいかな?」
「はい」
このタイミングなのだからダンスのお誘いかと思ったけど、どうやら違ったみたい。
ダンスに夢中の人も多いし、秘密の話をするなら都合がいいのだろう。
こんなタイミングで声をかけてくるのだから勘違いしてしまった。
「クロエ嬢のこともあって計画以上に上手く運んだよ。これは政治的な問題も絡んでくるけど、リフィン殿下とアルマシアをあのまま結婚させる訳にはいかなかったんだ」
「そうだったのですか」
「アルマシアも悪かったけど、それ以上にロンカスター公爵が問題だった。これで殿下と結婚されてしまってはロンカスター公爵の力が強くなりすぎてしまう。そこでアルマシアの有責で婚約破棄する必要があった」
何やら話が大規模になってきた。
ただの公爵令嬢の嫌がらせだけでは済まされない問題が絡んでいたなんて考えたこともなかった。
「…そのような話、私が聞いてしまってもよろしいのでしょうか?」
「ははは、クロエ嬢だって当事者だろう?少しくらい裏事情を知っておいたほうがいいと思うけど」
「それはそうかもしれませんけど…」
私はただの男爵令嬢。
宰相のご令息であるグラハント様が政治的な問題に詳しいのは理解できるけど、私を巻き込もうとするのは理解できない。
「クロエ嬢のお陰だよ。あそこまで徹底的にアルマシアをやりこめたのはね」
グラハント様の目が、まるで私の全てを見透かすように思えた。
……きっとグラハント様は私が何をしたのか把握しているのだろう。
だからわざわざこうやって内密に話すべく声をかけてきたのだろう。
私はアルマシア様から受けた嫌がらせについて、自作自演で被害を増やしておいたのだ。
アルマシア様が否定しようとも事実のほうが多いのだから私が被害を捏造しても誰も信じないはず。
その考えは正しく、実際にアルマシア様が否定しても誰も信じなかった。
「ちなみにアルマシアの取り巻きを買収したのは僕だからね」
察してしまった。
取り巻きはアルマシア様に無理矢理嫌がらせするよう言われていたのではなく、実際にはあまり関わっていなかったのかもしれない。
それをグラハント様が買収してアルマシア様の指示だったということにしたのだろう。
アルマシア様は信じていた取り巻きにも裏切られた。
私が自作自演で被害を割り増ししていたことも含めてアルマシア様が事実を認めなかったのも当然。
でも…周囲の人は誰もアルマシア様を擁護しなかった。
それが普段の行いの報い。
アルマシア様ならそこまでやっても不思議ではないと思われたということ。
単純に落ち目だから面倒なことはしなかっただけかもしれないけど。
「…それで私にどうしろというのですか?」
「別に?ただ、これからもリフィン殿下に協力してほしいだけだよ。僕個人としてはクロエ嬢を評価しているから」
…私の本性を知った上で評価してくれるのは嬉しいのやら悲しいのやら。
でもそこまで知っても私を評価してくれたグラハント様に好感を抱かずにはいられなかった。
「だからクロエ嬢、これからは僕たちと一緒にリフィン殿下を支えてくれないか?」
愛の告白ではなかった。
私が望んでいたものとは違う。
てっきりこんな場だし、私に婚約を申し込んでくるのかと少しだけだけど期待したのに!
私は男爵令嬢。
グラハント様と釣り合いが取れないことも理解している。
これも貴族社会の在り方だ。
そのようなことも学べる場が王立学園。
「……はい、喜んで」
パーティー会場内には幸せそうな人たちもいるけど、私には無縁だった。
噂ではロンカスター公爵閣下が激怒し、アルマシア様に責任を取らせて誰かと結婚させることになったという。
…責任を取らせるための結婚なら、きっと相当訳ありの相手との結婚だと思う。
リフィン殿下と結婚できれば将来は王妃様だったかもしれないけど、見事な転落人生だ。
くだらない嫌がらせをするような人だから、それが本来結ばれるべき相手なのかも。
でも噂なんて所詮噂だし、事実は異なるのかもしれない。
とにかく学園に平和が戻ったのだから、それで良しとする。
* * * * * * * * * *
改めて開催されることになったパーティー。
今回は断罪もなかったので大きな問題もなく進んでいった。
そしてダンスの時間がやってきた。
婚約者のいない私は誰かに声をかける勇気もなく、大人しく壁の花になろうとしていたけど、そんな私に声をかけてくれた人がいた。
「グラハント様」
「クロエ嬢、少しいいかな?」
「はい」
このタイミングなのだからダンスのお誘いかと思ったけど、どうやら違ったみたい。
ダンスに夢中の人も多いし、秘密の話をするなら都合がいいのだろう。
こんなタイミングで声をかけてくるのだから勘違いしてしまった。
「クロエ嬢のこともあって計画以上に上手く運んだよ。これは政治的な問題も絡んでくるけど、リフィン殿下とアルマシアをあのまま結婚させる訳にはいかなかったんだ」
「そうだったのですか」
「アルマシアも悪かったけど、それ以上にロンカスター公爵が問題だった。これで殿下と結婚されてしまってはロンカスター公爵の力が強くなりすぎてしまう。そこでアルマシアの有責で婚約破棄する必要があった」
何やら話が大規模になってきた。
ただの公爵令嬢の嫌がらせだけでは済まされない問題が絡んでいたなんて考えたこともなかった。
「…そのような話、私が聞いてしまってもよろしいのでしょうか?」
「ははは、クロエ嬢だって当事者だろう?少しくらい裏事情を知っておいたほうがいいと思うけど」
「それはそうかもしれませんけど…」
私はただの男爵令嬢。
宰相のご令息であるグラハント様が政治的な問題に詳しいのは理解できるけど、私を巻き込もうとするのは理解できない。
「クロエ嬢のお陰だよ。あそこまで徹底的にアルマシアをやりこめたのはね」
グラハント様の目が、まるで私の全てを見透かすように思えた。
……きっとグラハント様は私が何をしたのか把握しているのだろう。
だからわざわざこうやって内密に話すべく声をかけてきたのだろう。
私はアルマシア様から受けた嫌がらせについて、自作自演で被害を増やしておいたのだ。
アルマシア様が否定しようとも事実のほうが多いのだから私が被害を捏造しても誰も信じないはず。
その考えは正しく、実際にアルマシア様が否定しても誰も信じなかった。
「ちなみにアルマシアの取り巻きを買収したのは僕だからね」
察してしまった。
取り巻きはアルマシア様に無理矢理嫌がらせするよう言われていたのではなく、実際にはあまり関わっていなかったのかもしれない。
それをグラハント様が買収してアルマシア様の指示だったということにしたのだろう。
アルマシア様は信じていた取り巻きにも裏切られた。
私が自作自演で被害を割り増ししていたことも含めてアルマシア様が事実を認めなかったのも当然。
でも…周囲の人は誰もアルマシア様を擁護しなかった。
それが普段の行いの報い。
アルマシア様ならそこまでやっても不思議ではないと思われたということ。
単純に落ち目だから面倒なことはしなかっただけかもしれないけど。
「…それで私にどうしろというのですか?」
「別に?ただ、これからもリフィン殿下に協力してほしいだけだよ。僕個人としてはクロエ嬢を評価しているから」
…私の本性を知った上で評価してくれるのは嬉しいのやら悲しいのやら。
でもそこまで知っても私を評価してくれたグラハント様に好感を抱かずにはいられなかった。
「だからクロエ嬢、これからは僕たちと一緒にリフィン殿下を支えてくれないか?」
愛の告白ではなかった。
私が望んでいたものとは違う。
てっきりこんな場だし、私に婚約を申し込んでくるのかと少しだけだけど期待したのに!
私は男爵令嬢。
グラハント様と釣り合いが取れないことも理解している。
これも貴族社会の在り方だ。
そのようなことも学べる場が王立学園。
「……はい、喜んで」
パーティー会場内には幸せそうな人たちもいるけど、私には無縁だった。
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