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第10話

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父上からの呼び出しは嫌な予感しかしない。
ウルーナへの対処をイリアナに任せてしまったことで何か言われるのかもしれない。
不安というよりも恐怖。

だが、俺へ伝えられたことは予想外のものだった。

「イリアナとの婚約は解消ですか!?」
「ああ、そうだ」

やっとイリアナから解放された。
俺への敬意もなく従者のように振る舞うよう強要したりと酷い女だった。
だがもう父上が認めた婚約関係の解消によって俺は自由を手にしたのだ!

「それと、新たな婚約者はウルーナ嬢だ。異論は無いな?」
「…ありません」

ウルーナの俺への気持ちは十分理解している。
話を聞かないところがあっても俺への気持ちが強すぎるからだろう。
何よりもイリアナに比べれば可愛いものだ。
きっと今までよりも良い関係になるに違いない。

ウルーナだってベルネスク公爵の娘。
王家とベルネスク公爵家の関係を悪化させない意図も含まれるのだろうが、悪くない案だと思った。
さすが父上、見事だ。
さすが父上、尊敬してしまう。
こんな案を思いつく才能は称賛に値する。

「ウルーナ嬢が学園を卒業したらミハイにはウルーナ嬢と一緒に辺境の王家直轄領を治めてもらう」
「…辺境ですか?」
「そうだ。異論があるのか?」

流れが変わった。
どうして王位を継ぐはずの俺が辺境になんか行かないといけないんだ?

…これは領地を運営することで将来の王になる訓練を兼ねているのだろう。
……しかし…本当にそうなのだろうか?

父上に逆らうと恐ろしいことになりそうなので受け入れる以外の選択肢はあり得ない。

「いえ、ありません。ですが…俺は王位を継ぐのではありませんか?」
「ははっ、相変わらずつまらない冗談だな。チャンスをふいにしたのだから約束通り廃嫡だ。まだ王族でいられることを感謝しろ」
「そんな…………」

これでは辺境送りは一生ものではないか!

こうなったのも全部イリアナのせいだ。
この処分だってイリアナが何かしらの手を回した結果に違いない。
あのような女をのさばらせてしまえば将来国がおかしなことになるかもしれない。

俺は王太子。
王太子として忠告しなければならない。
目の曇った父上に真実を知らせなくてはならない!

「父上!イリアナは絶対に問題を起こします!この国の未来のためにも、どうかイリアナへの警戒を怠らないでください!!」
「ほざけ。イリアナ嬢はお前よりも余程信頼できる。問題を起こすのはお前のほうだろう?」
「確かに俺は何度も問題を起こしてきました!ですが!それとイリアナの危険性は関係ありません!!」
「お前のほうが余程危険ではないか。素直に辺境に行くならともかく、もし従わないようなら厳しい処分をせねばなるまい」

父上には俺の言葉が届かないのか…。
あるいはイリアナの毒牙にかかってしまい手遅れなのか……。

俺は無力だ。
だが警告はした。

「まだ何かあるか?」
「ありません」

もう諦めた俺は父上の言葉には絶対服従だ。
こうして俺の未来は決まった。
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