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第6話

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バドンの件も一区切りついたので、私はレンヴィル家の別邸に招待された。
シェリアと会うのも久々だし、夫のオースティー様との仲も良好のようで良かった。
お茶を頂きながら今回の件を振り返る。

「まずは謝罪を。私がバドンに婚約破棄した結果がこのような事態になってしまい申し訳ありませんでした」
「ファーニア嬢は悪くない。悪いのはバドンだけだ」
「そうよ、お姉様は悪くないわ」

許されると思っていたけど、謝罪せずに済ませたくはなかった。
とりあえず面倒なやり取りもこれで終了。

「バドンには本当に迷惑をかけられてばかりだったわ。婚約中もそうだし、まさか婚約破棄してからも問題を起こすなんて……」
「そんなに私のことが好きだったなんて知らなかったわ。知っていてもバドンとは婚約すらしたくなかったけどね。……でもそのせいでお姉様に迷惑をかけてしまったのかも」
「もう済んだことよ。だからシェリアも気にしないで。それよりもオースティー様との関係を大切にして?」
「ははは、気を使わせてしまったな。俺はシェリアの事を愛している。バドンが何をしようとシェリアは渡さないさ」
「まあ、嬉しい」

幸せそうに惚気られると私も複雑な気持ちになってしまう。
本当は私もこういった幸せなパートナーを得たかった。
バドンとの婚約は時間の無駄だけでなく私の幸せすらも奪ったのだ。

「幸せそうなところ申し訳ないのですが、バドンの処分はレンヴィル公爵家として、あれでよろしかったのですか?」
「良くは無いのかもしれないが、ああするしかなかったんだ。あの程度のことで処刑にはできないし、あれからデーゲル伯爵家からバドンとの縁切りと追放処分を下したと連絡があった。先を越されたかもしれないが、これ以上の責任追及は難しいだろうな」
「そうでしたか………」

デーゲル伯爵家としては十分に責任を取ったとみなされるだろう。
でも私の感情はそれでは満たされないし、シェリアへの危害が排除されたとも言い切れない。
むしろデーゲル伯爵家という押さえが無くなった今、バドンが何をするかわからない。
バドンという狂犬が解き放たれてしまったのだ。

嫌な気持ちを振り払うためにもお茶を口にする。
せっかくの良い葉なのに味を十分に感じることはできなかった。

「もしバドンが何かしてきたとしても警備を掻い潜ることはできないだろう。身分を失ったのであれば夜会に顔を出すこともない。移動は馬車を使うから問題ないだろう」
「そうですね、それならシェリアも安心です」
「何より俺がいればシェリアを危険には曝さないさ」
「ふふ、頼りにしているわ」

二人だけの世界を作られると私はいたたまれなくなる。
シェリアは幸せを手にできて良かったと思う。
羨ましくも思う。
嫉妬なのかもしれない……。

二人の幸せそうな姿を見ると、私の中でバドンへの恨みが募っていく。

その時だった。
部屋に入ってきた使用人がオースティー様に近づき、何かを囁いた。
オースティー様の顔が真面目なものになった。

「……バドンの身柄をミュレー伯爵家が拘束したようだ」

驚きのあまり何も言えなかった。

「お姉様……」

心配そうにシェリアが見つめてくる。
バドンが何かしたのだろうけど被害は不明。
警備だって強化していたから、きっと大丈夫。
被害があるなら何か伝えるはずだから、大丈夫に違いない。
とはいえ何がどうなったのかを知らない状態では落ち着けない。

「申し訳ありませんが、私はお暇させていただきます」
「事情が事情だ。早くミュレー伯爵のもとへ向かうといい」
「ご配慮、痛み入ります」
「きっと大丈夫よ、お姉様」
「ありがとう」

私は不安に駆られつつ、馬車で帰路についた。
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