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第9話

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「おらっ、そこの男!サボるな!」

監視員が鞭を地面に打ち付けて威嚇する。
俺は今、犯罪者として鉱山で働かされている。
どうしてこうなってしまったんだ……。

大きな理由は金がなくて、仕方なく食い逃げしたことだった。
必死に逃げたのに捕まって衛兵に突き出され、裁判もなしに有罪にされ鉱山送りにされてしまった。
きっとセシーリアが何か手を回したに決まっている。
そこまで俺を追い詰めたいのか。

そもそもセシーリアと婚約したことが間違いの始まりだった。
そうなった原因はヘインリード公爵にある。
きっと俺やギラルロイ家を嵌めるために俺とセシーリアを婚約させたに違いない。

平民の間でも噂になっていた。
どうやらギラルロイ家の悪評を広めて信用を地に落としたらしい。
俺が犠牲になってギラルロイ家にまで被害が及ばないようにしたはずなのに、ヘインリード公爵家は本気だったということだ。

「くそっ、どうしてこんなことに…」
「あぁん?俺に何か文句があるのか?」
「いや、ちがっ」
「紛らわしいこと言うな!」

鉱山で働かされているのは犯罪者ばかり。
こいつのように話が通じず蹴ってくるような人間ばかりだ。
どうして俺がこんな目に遭わないといけないんだ!

俺は死ぬまでこんなところで働かされるのか?
セシーリアは悪女だ。
間違いなく悪女。
気に入らない人間はとことん苦しめ追い詰めるような悪魔みたいな女だ。

俺やギラルロイ家がいなくなれば次はヘインリード公爵家が食い物にされるに決まっている。
俺をこんな目に遭わせて満足しているか?
次はお前たちの番だ。
いつか報いを受ける時が来るだろう。

「笑っていられるのも今のうちだ」
「あぁ?やっぱ文句あんのか?」
「だからちが――ごぼっ」

どうして殴られないといけないんだ。
俺はこんな場所にいるべき人間なんかではない。
ギラルロイ家の人間なんだ。
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