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第7話

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幸いなことに実家へ帰る分の金はギリギリだがあった。
あと一泊していたら足りなかったぞ…。
やはりあの時ハンナと別れて正解だった。
もし決断していなければ金もなく歩きで何も食べずに家を目指す羽目になっていただろう。
自分の決断を褒めてやりたかった。

そして辿り着いた我が家。
俺の顔を見た使用人が慌てて父上を呼びに行ったようだった。

…駆け落ちしたはずの人間が戻ってくれば当然の反応か。
だが父上は俺を許すだろうか?
不安はあるが、こうなってしまった以上、覚悟を決めるしかない。

そして父上がやってきた。

「ローアン!ハンナをどうした!?」
「落ち着いてください、父上。ハンナとはもう別れました」
「そうではない。ハンナが行方不明なのだ」
「…ハンナは一人で帰ったのでは?」
「まだ帰っていないようだ。それにローアン、お前は誘拐の容疑で出頭するよう騎士団から連絡があったぞ」
「違います!誘拐なんてしていません!」
「だから事情を訊くために出頭するよう求められたのだ。ローアンには言いたいことがたくさんあるが、まずは騎士団のほうを優先しろ」
「はい……」

俺の知らない間に大変なことになっていたようだ。
容疑者というのは納得できないが、騎士団だって調べれば俺が無実だと理解するだろう。
仕方ないが事情を話しに行くとしよう。

* * * * * * * * * *

騎士団の取り調べは厳しくなかったが、俺の容疑が晴れるまで身柄を拘束されることになった。
一応貴族なのでまともな部屋が与えられたが軟禁だ。
自由はないし、何度も繰り返し事情を訊かれた。

やがて俺の容疑が晴れたのか、解放されることになった。
どうせなのでハンナのことを訊いてみる。

「それでハンナは見つかったのか?」
「いえ、まだ見つかっていません」

別れたのは遠くの街だし、その後の足取りを掴みにくいのだろう。
少なくとも俺の容疑は晴れたのだから問題ない。
別れたハンナがどうなろうとも、もう俺の責任ではない。

* * * * * * * * * *

今度こそ家に帰ってきたはずだが、何やら家の前で修道女らしき人物が騒ぎを起こしていた。
どうやら老婆のようだ。
そのような女性に知り合いはいない。

近づいていくと使用人が俺に気付いたようなので、事情を訊くことにした。

「どうしたんだ?」
「ローアン様!こちらの修道女がローアン様に用があるとのことです。具体的な日時の約束は無かったようですが、会う約束自体はあったと言っています」
「そんな約束知らないが…」
「婚約者の方が言っておられました。孤児院に寄付して下さるというのでお伺いいたしました」
「そんな話は知らん。帰ってくれ」
「待ってください!話だけでも聞いてください!」
「やれやれ、最近の修道女は勝手に押しかけてきて寄付を強要するのか?そんな孤児院なんて知らん。俺を怒らせる前に消えるんだな」
「……申し訳ありませんでした」

老婆は落胆したようで、肩を落として歩き去っていった。
まるで俺が悪者みたいだ。
勝手にやって来て言いがかりをつけて寄付を強要するほうが悪だろう?
そもそも当家には寄付するほどの余裕は無い。
強請るにしても相手を間違えたな。

まったく面倒事が多いな。
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