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第6話

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理不尽な扱いには慣れているので動揺することもなく、ディクス様が何について怒っているのか冷静に確認する。

「私が何をしたというのですか?」
「どうせ裏で手を回したに決まっている!」
「私は何もしていませんよ」
「ならばどうしてだ!他の貴族家はディップトン男爵家を利用してばかりだ!自分たちの利益を貪るくせにディップトン家の利益になるようなことをしない!ロロウズ子爵家が何かしたに決まっている!」

事情を察した。
他の貴族家との繋がりを求めてロロウズ子爵家と縁を結んだのだから、他の伝統的な貴族家との繋がりを作ったのだろう。
ディップトン男爵家は所詮成り上がり者だと見下されるだろうし、意地の悪い伝統的な貴族家からすれば金蔓のようなものだろう。
浪費して当然という貴族家との繋がりを作ったところでメリットはあまりないと思うけど、そんなこともわからなかったのだろうか。
ディップトン男爵も所詮は成り上がり者だったということだろう。

「貴族家なんてそんなものです」
「くそっ、こんなことになるなら無理にルルシーと結婚なんてしなければ良かったんだ!」

成り上がり者が身分不相応な野心を抱くから失敗したのだ。
私がディクス様と結婚するはめになった時点で私にとって結婚は失敗だったし、ディップトン男爵も窮地に陥っているなら結婚は失敗だったということ。
嬉しいわ、私だけが不幸ではなくなるのだから。

「今になって何を言おうと過去は変わりません。これからどうするか考えたほうが建設的です」
「くっ……。そうだ、ロロウズ子爵家への援助を打ち切るように父上に言ってみよう。そうだとも、役立たずだったロロウズ子爵家にする援助なんて必要ない」

私への当てつけなのか、実家への援助を打ち切ると言ったけど、私への脅しにはならない。
こんな望まない結婚を強要されたのだから実の親であっても思いやる気持ちは無くなってしまった。

ディクス様の発言がきっかけで、私はこんなにも両親のことを恨んでいたのかと気付かされた。
両親のせいで私の人生は狂わされてしまった。
こんな現実、望んでなんかいなかった…。

悲しみのあまり、涙が溢れてきてしまった。

「泣こうがロロウズ子爵家への援助を打ち切ることは変わらない。これは制裁だ。役立たずには相応しい罰だろう?」
「…………」

勘違いしたディクス様はそのままにしておく。
別に今となってはロロウズ子爵家がどうなろうともどうでもいいように思えた。
私にとって大切なものはオーネストとオルトだもの。

「ルルシーも悪いと思うならロロウズ子爵を説得するんだな。役立つところを見せれば援助の再開を考えてもいいぞ」
「……あの両親ですから期待しないでください」
「それでいいのか?援助がなければ厳しいんだろう?」
「それは事実ですけど………」

脅すだけでなく実際に行動すればいいのに。
援助を打ち切ろうが私には関係ないのだから。
むしろディクス様がどうしてそこまで必死になるのかわからず、必死さが不自然に思えた。

もしかしたら、ディップトン男爵も相当に追い込まれているのかもしれない。
それこそ私の両親を上手く動かさないと挽回できないような状況なのかもしれない。
それならそれでいい。
ディップトン男爵も酷い目に遭えばいい。

「とにかくだ、ロロウズ子爵を説得しろ。役立つところを見せろ。ルルシーもロロウズ子爵もだ」
「………ご期待に沿うことは難しいと思います」
「クソがっ!もう勝手にしろ!!」

無理だと思うから軽々しく請け負ったりしなかったのに、ディクス様は私が思い通りにならなかったから怒ったのだろう。
でも無関心でいられない状況に追い込まれているから怒ったのだと考えれば納得できる。
ディクス様が追い込まれているならそれでいい。
ディップトン男爵家が追い込まれているならそれでいい。
私だけ不幸では不公平だもの。
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