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第4話
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帰宅してお父様に報告したら驚いていた。
「まさかディレイス殿下が浮気するとは…」
「しかも相手は男爵令嬢ですよ」
「はぁ……。手ごろな女性ならお構いなしなのか?」
「そうかもしれませんね。何しろ体を武器にしたようですから」
「…所詮ディレイス殿下はその程度か。クオリビアとの婚約が無くなって良かったな」
「ええ」
ディレイス殿下に婚約破棄したことは驚かれたけど納得もしてくれたようだから問題なし。
問題は国王陛下への件ね。
「それと…国王陛下に呼び出されて既に説明等は済んでいるのですが……」
さすがに国王陛下に喧嘩を売ったなんて言ったらお父様も怒るかもしれない。
言い淀んでいる私にお父様は優しい表情を浮かべて言った。
「怒らないから言いなさい」
私は覚悟を決めた。
「ディレイス殿下との婚約を命じたことで国王陛下に不満を伝えました。謝罪も受けましたけど、私は明らかに不敬を働いたと思います。このままでは私だけではなくマクローシュ公爵家も不利益を被るかもしれません」
「………そうか。だがディレイス殿下の責任もある。そこまで酷いことにはならないのではないか?」
「国王陛下次第ですから安心はできません。ですので私を切り捨ててください。そうすればマクローシュ公爵家は無事でしょう」
「どうして婚約者に浮気された被害者であるクオリビアを切り捨てなくてはならないのだ……」
「悲しいですが相手は国王陛下ですから。でも私を守ることにもなります。マクローシュ公爵家の娘でなくなれば他の王子との婚約者には選ばれないでしょうし」
「そうか」
いくら望まない婚約を防ぐためとはいえ親子の縁を切るのはお父様にも抵抗があるのだろう。
私は既に覚悟ができているのだから、お父様は理性的に判断を下せばいい。
私一人縁を切るだけでマクローシュ公爵家は安泰なのだから。
「縁を切れば私は平民扱いになるでしょう。ですが援助してはいけないという決まりはありません。何の考えもなしに私はそのような提案をしているのではありませんから」
「………そうか、ならばクオリビアの意思を尊重しよう」
お父様にとっては苦渋の選択だったと思う。
「いろいろと準備をしなくてはならないので正式に縁を切るのは少し先にしてください」
「ああ、問題ない。もし気が変わったら言ってくれ。ここだけの話だから無かったことにだってできる」
「ありがとうございます」
申し訳ないけどお父様の気持ちに応えることはできない。
私一人の犠牲で済むならそうしたほうがいいに決まっているもの。
対外的にも責任を取ったことになれば陛下もディレイス殿下もこれ以上の追及はしないはず。
もし追及されようものなら逆に非難されるのは相手のほう。
「どうしてこのような結果になってしまったのだろうな」
お父様が独り言のようにつぶやいた。
ディレイス殿下との婚約がなければこんなことにはならなかった。
ディレイス殿下が浮気しなければこんなことにはならなかった。
どちらもお父様の力ではどうにもならなかったこと。
あまり自分を責めないでほしい。
私は何も言わずに退室した。
「まさかディレイス殿下が浮気するとは…」
「しかも相手は男爵令嬢ですよ」
「はぁ……。手ごろな女性ならお構いなしなのか?」
「そうかもしれませんね。何しろ体を武器にしたようですから」
「…所詮ディレイス殿下はその程度か。クオリビアとの婚約が無くなって良かったな」
「ええ」
ディレイス殿下に婚約破棄したことは驚かれたけど納得もしてくれたようだから問題なし。
問題は国王陛下への件ね。
「それと…国王陛下に呼び出されて既に説明等は済んでいるのですが……」
さすがに国王陛下に喧嘩を売ったなんて言ったらお父様も怒るかもしれない。
言い淀んでいる私にお父様は優しい表情を浮かべて言った。
「怒らないから言いなさい」
私は覚悟を決めた。
「ディレイス殿下との婚約を命じたことで国王陛下に不満を伝えました。謝罪も受けましたけど、私は明らかに不敬を働いたと思います。このままでは私だけではなくマクローシュ公爵家も不利益を被るかもしれません」
「………そうか。だがディレイス殿下の責任もある。そこまで酷いことにはならないのではないか?」
「国王陛下次第ですから安心はできません。ですので私を切り捨ててください。そうすればマクローシュ公爵家は無事でしょう」
「どうして婚約者に浮気された被害者であるクオリビアを切り捨てなくてはならないのだ……」
「悲しいですが相手は国王陛下ですから。でも私を守ることにもなります。マクローシュ公爵家の娘でなくなれば他の王子との婚約者には選ばれないでしょうし」
「そうか」
いくら望まない婚約を防ぐためとはいえ親子の縁を切るのはお父様にも抵抗があるのだろう。
私は既に覚悟ができているのだから、お父様は理性的に判断を下せばいい。
私一人縁を切るだけでマクローシュ公爵家は安泰なのだから。
「縁を切れば私は平民扱いになるでしょう。ですが援助してはいけないという決まりはありません。何の考えもなしに私はそのような提案をしているのではありませんから」
「………そうか、ならばクオリビアの意思を尊重しよう」
お父様にとっては苦渋の選択だったと思う。
「いろいろと準備をしなくてはならないので正式に縁を切るのは少し先にしてください」
「ああ、問題ない。もし気が変わったら言ってくれ。ここだけの話だから無かったことにだってできる」
「ありがとうございます」
申し訳ないけどお父様の気持ちに応えることはできない。
私一人の犠牲で済むならそうしたほうがいいに決まっているもの。
対外的にも責任を取ったことになれば陛下もディレイス殿下もこれ以上の追及はしないはず。
もし追及されようものなら逆に非難されるのは相手のほう。
「どうしてこのような結果になってしまったのだろうな」
お父様が独り言のようにつぶやいた。
ディレイス殿下との婚約がなければこんなことにはならなかった。
ディレイス殿下が浮気しなければこんなことにはならなかった。
どちらもお父様の力ではどうにもならなかったこと。
あまり自分を責めないでほしい。
私は何も言わずに退室した。
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