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第7話

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アレーラはベッドで寝ていたけど、私の姿を確認したら露骨に嫌そうな顔をした。

「お父様はいいけど、どうしてヴィオーラお姉様までいるの?」

やはりアレーラは私の存在が疎ましいようだった。
体調が悪くて寝込んでいても口だけは相変わらずね。

「そんなことよりもアレーラ、ヴィオーラの持ち物で見つからないものがあるのだが、何か知らないか?」
「知らないわよ、指輪なんて。私は病人なのよ?病人を泥棒扱いするなんて酷いわ」

泣き真似をして顔を覆った手、その指には指輪が嵌っていた。
やはりアレーラは頭が悪い。
指輪なんて一言も言っていないのに自白したようなものだし、指に嵌っている指輪は私がランファス殿下から贈られた物に間違いない。
自白と証拠までセットになっているのだから、もう言い逃れはできない。

「酷いのはアレーラのほうよ。どうして指輪だとわかったの?」
「ランファス殿下から贈られたものをひとり占めするなんて酷いわ。使わないようだったから私が使ってあげたのよ?使わないなんてランファス殿下に失礼じゃない」

まるで悪い事だとは思っていないようなアレーラに幻滅した。
言い訳にもなっていないし。
でもそれ以上に幻滅したのはお父様だと思う。

「……今までは家族だと思ったから甘く対処してきた。だが盗んだとなれば話は別だ。ティスアート公爵家に泥棒なんて不要だ!」
「酷いです、お父様。私が可愛くないの?」
「泥棒なんか可愛くもない。反省できないようなら修道院送りもやむを得ないか…」
「修道院!?冗談でしょ!?どうして私がそんなところに行かないといけないのよ!?」
「お前が盗みを働くからだ」
「酷い…。どうしてヴィオーラお姉様ばかりランファス様から大切にされるのよ……。差別だわ」
「……………」

呆れて何も言えないのは私もお父様も同じだった。
婚約者か否かは大きな違いであり、婚約者と他者を同様に扱っていいはずがない。
アレーラのことだから自分が婚約者の立場だとしても他者を同様に扱うことに文句を言うに違いない。
とにかく自分が優遇されないと満足できないのだろう。

「ともかく指輪は返してもらう」

その言葉は通達だった。
アレーラの意思がどうあれ実力行使に出るという意思表明。
アレーラが抵抗しても構わずにお父様は指輪を取り上げた。

* * * * * * * * * *

喚くアレーラを無視して私とお父様は部屋から出た。

「これで間違いないな」
「はい」
「では専門家に頼むとするか。だが結果がどうあれアレーラが盗みを働いた事実は問題だ。これからは厳しくする」
「それがよろしいかと思います」

本当にアレーラは何がしたかったのか理解できない。
でもこれで指輪が原因なのか判明するはず。

もし指輪が原因不明の体調不良を引き起こしたのであればランファス殿下が私に贈った意図は悪意によるものだと判断せざるを得ない。
アレーラにしろランファス殿下にしろ、どうして頭のおかしい人が私の身近に集まってくるのだろうか。
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