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第6話
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寝込むアレーラを医師が診察したけど、原因は不明だった。
それどころか医学的に不可解だとも言っていた。
まさかそのようなことになるとは予想していなかったため、私もお父様も困ってしまった。
「医師では手に負えないようだな」
「そのようですね。ですが逆に言えば普通の病気ではないということです」
「そうなるな。ではどういった原因だと思う?」
お父様の問いかけに私はしばし考える。
医師の手に負えないような普通ではないもの。
あり得ないかもしれない、でも可能性は否定できないもの。
そのようなものであってもお父様なら一笑に付したりはしないはず。
「魔法や呪いの類でしょうか?」
躊躇いがちに言った私の言葉に、お父様は真剣な表情で考え込む。
「可能性は低いが…医師の分野でないならそうかもしれんな。専門家に頼むか」
「それがよろしいかと思います。原因が判明すればいいですけど、魔法や呪いの類でないと判明することも一歩前進ですから」
魔法や呪いなんて一般人には縁がないけど、過去の遺物では不思議な力を持つ物も存在している。
効果があるのかないのか怪しい物も含めて好事家たちが集めているという。
いわく付きの骨董品みたいなものね。
ごく稀に本当に危険なものもあるみたいだけど。
専門家なら何かわかるかもしれないし、ティスアート公爵家の力なら専門家に依頼することも可能。
アレーラのせいで余計な支出になるけど、あれでも一応はティスアート公爵家の一員だもの。
足を引っ張ってばかりだけど。
「よし、手配しよう。それでも原因がわからないとなれば、いよいよお手上げだな」
「アレーラも今までわがまま放題でしたし、好き勝手してきた報いなのかもしれませんね」
「ははは、そうだな。とはいえあれでも娘だから善処する。とてもではないがティスアート公爵家の娘としては相応しくないが、それでも家族だからな」
アレーラのしてきたことを思い返せば何かを欲しがったりズルいズルいと言った記憶ばかりだ。
…ふと、思いついてしまった。
ランファス殿下から頂いた嫌な雰囲気の指輪はどうなっているのか。
嫌な雰囲気は私の気分の問題ではなくて、本当に何らかの悪い力を秘めていたのかもしれず、それを感じ取っていたのかもしれない。
目につかないところにしまっておいたけど、あの指輪が何かしらの災いを引き寄せたのかもしれない。
深まる疑惑は確認するに限る。
「お父様、しばらく席を外します」
私は指輪をしまった場所へ急いだ。
* * * * * * * * * *
再びお父様のところへ戻った。
「用事は済んだか?」
「はい。ランファス殿下から頂いた指輪は覚えていますよね?」
「ああ。ヴィオーラが嫌な印象を受けたものだろう?」
「はい、それです。その指輪をしまっておいたのですが…無くなっていました」
私の物を盗むような不届きな使用人はティスアート公爵家にはいない。
盗むとすれば……一人しかいない。
「もしかしてアレーラか?」
「まだわかりませんが、恐らくは」
「………事実を確認しよう。アレーラの部屋に行くぞ」
「はい」
それどころか医学的に不可解だとも言っていた。
まさかそのようなことになるとは予想していなかったため、私もお父様も困ってしまった。
「医師では手に負えないようだな」
「そのようですね。ですが逆に言えば普通の病気ではないということです」
「そうなるな。ではどういった原因だと思う?」
お父様の問いかけに私はしばし考える。
医師の手に負えないような普通ではないもの。
あり得ないかもしれない、でも可能性は否定できないもの。
そのようなものであってもお父様なら一笑に付したりはしないはず。
「魔法や呪いの類でしょうか?」
躊躇いがちに言った私の言葉に、お父様は真剣な表情で考え込む。
「可能性は低いが…医師の分野でないならそうかもしれんな。専門家に頼むか」
「それがよろしいかと思います。原因が判明すればいいですけど、魔法や呪いの類でないと判明することも一歩前進ですから」
魔法や呪いなんて一般人には縁がないけど、過去の遺物では不思議な力を持つ物も存在している。
効果があるのかないのか怪しい物も含めて好事家たちが集めているという。
いわく付きの骨董品みたいなものね。
ごく稀に本当に危険なものもあるみたいだけど。
専門家なら何かわかるかもしれないし、ティスアート公爵家の力なら専門家に依頼することも可能。
アレーラのせいで余計な支出になるけど、あれでも一応はティスアート公爵家の一員だもの。
足を引っ張ってばかりだけど。
「よし、手配しよう。それでも原因がわからないとなれば、いよいよお手上げだな」
「アレーラも今までわがまま放題でしたし、好き勝手してきた報いなのかもしれませんね」
「ははは、そうだな。とはいえあれでも娘だから善処する。とてもではないがティスアート公爵家の娘としては相応しくないが、それでも家族だからな」
アレーラのしてきたことを思い返せば何かを欲しがったりズルいズルいと言った記憶ばかりだ。
…ふと、思いついてしまった。
ランファス殿下から頂いた嫌な雰囲気の指輪はどうなっているのか。
嫌な雰囲気は私の気分の問題ではなくて、本当に何らかの悪い力を秘めていたのかもしれず、それを感じ取っていたのかもしれない。
目につかないところにしまっておいたけど、あの指輪が何かしらの災いを引き寄せたのかもしれない。
深まる疑惑は確認するに限る。
「お父様、しばらく席を外します」
私は指輪をしまった場所へ急いだ。
* * * * * * * * * *
再びお父様のところへ戻った。
「用事は済んだか?」
「はい。ランファス殿下から頂いた指輪は覚えていますよね?」
「ああ。ヴィオーラが嫌な印象を受けたものだろう?」
「はい、それです。その指輪をしまっておいたのですが…無くなっていました」
私の物を盗むような不届きな使用人はティスアート公爵家にはいない。
盗むとすれば……一人しかいない。
「もしかしてアレーラか?」
「まだわかりませんが、恐らくは」
「………事実を確認しよう。アレーラの部屋に行くぞ」
「はい」
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