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第3話

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「そんな理由で婚約破棄だと!?おのれフロイデン!ロスコーラー子爵家共々絶対に許さん!!」

理不尽な婚約破棄を知ったらお父様は激怒するに違いないと思っていたけど、予想通りだった。
こうなることを知らずに婚約破棄したというなら考えなしだという証明になるし、謝罪されようが婚約破棄を撤回すると言おうが認めないし許さない。
こうなることを覚悟しての婚約破棄だったなら今後待っていることも覚悟の上だろうし、あまりにも立派なフロイデンの覚悟に見合うだけの仕返しをしてあげないと。
そうしないと私もお父様も気が済まないから。
それにフィルド伯爵家の名誉の問題もある。

お父様が落ち着くのを待つ。

「…それにヴァローナ嬢のことも気になるな。病弱だという話は聞いていない。領地から出てこないのは事実だと思うが」
「まさか…病弱は嘘ということですか?」
「その可能性も考えられる」

わざわざ病弱だと嘘をつく理由は何だろう?
フロイデンはヴァローナ様が私から嫌がらせされているようなことを言っていた。

……病弱が嘘、私からの嫌がらせも嘘。
全部ヴァローナ様の嘘だったとでもいうの!?
だとしても嘘に踊らされたフロイデンを許す気はないけど。
嘘だとしても私やフィルド伯爵家に敵対する行為だから許せるものではない。

「もし…全部ヴァローナ様がフロイデンを奪うためにしていたと考えたらどうでしょうか?」
「ふむ……相手の庇護欲を刺激したか……。あり得る話だが、病弱が本当なのか嘘なのかはっきりしないと断定できんな。曖昧な根拠で決めつけてはフロイデンと同類になってしまうからな」
「そうですね」
「現時点ではヴァローナ嬢もフロイデンと同罪なのかは不明だが……ヴァローナ嬢をどうしたい?」

私から嫌がらせを受けているなんて嘘をついたことは許せないけど、フロイデンを奪ったことを責める気はない。
むしろあんなフロイデンを奪ってくれたなら感謝しなくてはならないくらい。

でも問題はフロイデンと共謀しているか。

「ヴァローナ様がフロイデンと共謀したのかによって変わりますが…共謀したのであれば容赦する必要はありませんし、共謀していなかったとしてもフロイデンに何かしらの影響を与えたことは間違いないでしょう。そもそもフロイデンはヴァローナ様のことを昔から大切にしていました。今回の件は二人が関係していることは明らかでしょう」
「ふむ……」
「明確な証拠を得るのは難しいかもしれません。証言だって嘘の可能性もありますし」
「その通りだな」

確実な証拠を待っていたら何もできなくなってしまう。
だからもう二人共々有罪でいいわ。
ヴァローナ様だってフロイデンのことをはっきり拒絶すればいいのに、そうしないからフロイデンがヴァローナ様を優先したのだと思う。
婚約者がいるのに適切な振る舞いができないのだから有罪よ。

「とはいえ何の証拠もなしに断罪しては当家が批判される可能性もあります。そこで考えついたのですが――」
「ほう?」

幸いなことに、お母様の実家は医師との関係が深く、その伝手を利用すれば本当に病気なのかはっきりする。
ヴァローナ様が本当に病気ならフロイデンを奪ってくれたお礼に名医を派遣してあげれば十分だろうし、病気が嘘かは医師の診断結果で真実が明らかになる。
どちらにせよ私は悪くないし、今必要な証拠も手に入る。
どうせ病気なんて嘘だろうけど。

「お母様の実家の伝手を頼ってはどうでしょうか?医師の診察の結果なら根拠として十分ですし、もしその結果を嘘だと言うようなことがあればロスコーラー子爵家は医師たちを敵にすることになりますし」
「そうだな、良い案だ。それでいこう」
「はい」
「手配はこちらで進めておく。それに慰謝料の請求もしないとな。ルミーネが今できることは、ゆっくり休養を取ることだな。しばらくは心と体を労わるように」
「わかりました。お気遣い、ありがとうございます」

どうするか方針は決まったし、今の私にできることはもうない。
お父様が言うように今は休んだほうがいいのだと思う。

安堵したら急に疲れを感じるようになった。
気が張っていたから気付けなかったのかもしれないけど、相当なストレスを溜め込んでいたのかもしれない。

「では失礼します」
「後は任せなさい。ルミーネはよく休むように」

私はお父様の部屋を後にする。

「フロイデンめ…。ルミーネにしたことを後悔させてやる……」

扉を閉める前に、お父様のそんな声が聞こえた。
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