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第3話

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授業を終え帰宅した私は、お父様の帰宅を待ち一連の出来事を報告した。

「まさかピート殿が浮気したとはな…。しかも相手がピンクルー伯爵家のご令嬢だとはな……。これは面倒だ」

お父様が困惑するのも当然だ。
学園に通う私とメーベル様ならまだしも、お父様とピンクルー伯爵では明確に爵位の差が影響してしまう。
下手に文句を言おうものなら我がスターブ子爵家が潰されてしまうかもしれない。
だから今はメーベル様のことは放っておいて、ピート様だけをターゲットにすべき。

「メーベル様への制裁は難しいでしょうから無理にとは言いません。それよりもピート様です。モーゲット子爵家に慰謝料を請求してください」
「もちろんだとも。だがピート殿は浮気を認めつつ本気ではなかったとぬかしているのだろう?慰謝料の支払いも渋るかもしれん」
「そうなったらそうなったで構いません。今は慰謝料の請求だけでもすべきです」
「それはそうだな。明日にでも抗議し慰謝料を請求するとしよう」
「ありがとうございます」

これで当家の意思は示せる。
モーゲット子爵家が誠意ある対応をするかは疑問だけど…。

「一応確認しておきたい。リブはピート殿から謝罪があったらどうする?」
「謝罪があろうと許しません。婚約破棄を撤回することはありません」
「わかった」

穏便に収めるつもりはない。
もう信頼関係が破綻しているのだから謝罪されてもされなくてもどうでもいいし、婚約破棄を撤回することもない。

「リブはメーベル嬢についてどの程度知っている?」
「ほとんど知りません。ピンクルー伯爵家の令嬢であることくらいでしょうか」
「そうか…。なら一応覚えておいてくれ。メーベル嬢は悪い噂が多い。特に男性関係でな」

きっと婚約者がいてもお構いなしに誘惑しているのだろう。
噂として広まるくらいだから多くの前科があるはず。
ピート様が言っていた遊びというのも納得できる。

「時には刃物を持ち出して相手に怪我をさせたこともあったみたいだ。リブ、恨みは買わないようにするんだぞ」
「…わかりました」

ただの性に奔放な女性というだけではなく、何をするかわからない女性ということね。
メーベル様は怒らせないように気をつけよう。
ピート様もメーベル様とどうなるのか気になってしまう。
本当に遊びの関係で終わるのか、刃物を持ち出すほど愛されているのか……。

「ピート殿のような相手と婚約させてしまってすまなかった」
「お父様は悪くありません。どのような事情だあろうとも浮気するようなピート様が悪いのです」

謝るお父様を責める気持ちはない。
貴族家の子女の婚約なんて自由にならないものだと理解している。
それでもお父様が謝罪する気持ちも理解できる。

だから私は空気を変える。
冗談の一つでも言って事態を小さなものにしてしまう。

「こうなったらピート様とメーベル様の恋を応援してあげましょう」
「ははは…そうだな……」

力なく笑うお父様の反応で、私は冗談のセンスがなかったのかと落ち込んでしまった。
悔しいから本気で二人の恋を応援してあげる。
もしかしたら恋ではないのかもしれないけど、二人が結ばれる結果になれば恋だったに違いないと考えることにする。
少しくらいでも相手に好意がなければ体の関係を持つはずが無いのだから。
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