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 これで彼は満足しただろうか。少しは長年の恨みを晴らせられたなら良いのだが。
 そう思っているが同時に心が張り切れそうになる。私は想定外だったが想い人から抱かれたのだから。もしかして私の想いに気づいていたのだろうか。情けでなのか、ただそれを踏みじろうとしているのか。
 まぁ、どんな理由であろうか、もうロバートくんとは終わりだ。
 私はなんとか身体を起こす。ズギズキと腰辺りが痛む。

「ロバートくん…これで気が済んだかな…」

「……はい。」

 はいとは言ったが表情はまだ満足してなさそうな雰囲気だった。けど気づいてないふりをして話を続けることにした。

「あのね、ロバートくん。こんなタイミングで言うのもあれなんだけど、今言わないとずるずる引きずりそうだから…」

「なんでしょうか。」

 ようやく決意し、口に出した。

「離婚しよう。」

「……えっ?」

 離婚しようと言った瞬間、ロバートくんは目を開き、そして徐々に真っ青になっていた。

「そ、それは俺があなたに手を出したからですか!?」

「違うよ!第一それは結果的に私から誘ったようなものだし…じゃなくて!元々考えていたんだ。私達は政略結婚だった。ずっとロバートくんを縛り付けていたことを、申し訳ないと思っていた。」

「いえ、そんなこと…」

「初めてあった時からずっと君の気持ちに気づいてた。けど、ずっと気づかないフリをしてきた。本当にごめんね、ロバートくん。」

 私は必死に涙を流すのを我慢した。涙を流す権利は私にはなかった。

「ブレア家は君のお兄さんのおかげでだいぶ持ち越せたと聞いたよ。だからもうオーバトリー家からの支援は必要ないはずだ。安心してほしい。ブレア家の名誉はちゃんと守るよ。」

 正直なことをいうと、父上はそこまでブレア家にはこだわっていない。あくまで友人を助けたいという思いがあっただけだ。元々病弱な三男、期待だってされてなかったし。だから離婚しても多少の文句は言われるだろうがそこまでではないはず。

「……さっきから勝手なことおっしゃりますね。俺はずっと我慢してきたんですよ。ずっと我慢してきました。本当はあんたにずっと言いたかった。けど、俺は当時は子供だったし、身分では俺の方が低く立場上それを言う権利はなかった。」

 段々とロバートくんの口調が崩れていく。エメラルドグリーンの瞳が強く私を睨みつけている。

「滑稽でした?俺を弄ぶことを。」

「ち、違う、わたしは…」

「こんなことなら恐れず我慢しなければよかった…立場が低がろうが子供だろうが…言うべきだった。俺は、あなたが好きだってことを。」
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