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第九幕 砂の楼閣
オアシスの町
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それでもいつの間にか眠ったらしい。次の朝、ものすごい風の音で目が覚めた。
テントの裾があおられてバタバタしている。どこからか砂塵が吹き込んできて口の中がジャリジャリする。
ちょっとテントから顔を出してみるが、風で飛ばされた砂粒がまるで散弾のように頬に刺さってくる。痛い、痛い。もう目なんて開けてられない。
「アホ! そんなことしとったら目ぇ傷めてまうぞ」
ナラさんに怒られて顔を引っ込める。いつもは外で寝ているナラさんも今日はテントの中だ。
「これが噂に聞く砂嵐なのねえ」
「いやいや、こんなんまだ可愛い方やで。ひどい時はテント持って行かれるぐらいや」
「えっ! そんなことになったら命に関わりますね」
「そうや。大きな隊商が砂嵐で全滅とか、別に珍しいこっちゃないで」
「……」
砂嵐を甘く見てた。
「まあ歌術さえ使えたら、水歌と凍歌で砂の壁作ってしのぐとか、手はあるけどな」
ああ、なるほど。でも砂嵐の中じゃ、歌を歌うだけでも一苦労だ。できることならそんなシチュエーションにはなりたくない。
「キョウさんと旅をしてる時もそんなことがあったんですか?」
「おお、それな。あん時はマジやばかったな……」
野郎3人のテントでそんな話をしていたら、突然入り口がばっと開いて、砂混じりの突風と共に美少女二人が飛び込んで来た。
「あなたたち! 何やってんのよ!」
驚く俺たちをよそに、2人、涼しい顔で身体の砂をパタパタ払っている。
「ニコ、外はすごい砂嵐だったろ? 大丈夫か?」
「別に大したことなかったわよ」
アミの方が事も無げに答える。
「何や。どんな歌術使うたんや?」
ナラさんがニコに尋ねる。
「えと、あの、風歌を風が吹いてくる方に向かって……」
「すごいわよ。びゅーって。普通に砂嵐に勝っちゃうんだから」
遠慮がちなニコを遮ってアミが答える。
「はっはっは! さすがやな。キョウでもそんなことせんかったわ」
ナラさんは楽しそうに笑う。俺は苦笑だ。この女神様には砂嵐も勝てないらしい。
翌日、風が止んだと思ったら今度はまた約熱地獄だ。
頭上から太陽が容赦なく照りつけて来る。そしてまたジャンケンで負けた俺がアリジゴク釣りのエサをしながら進む。
夕方になるとわずかな岩場の陰を探してテントを張り、サソリやムカデに悩まされながら夜を明かす。そして朝になるとまた灼熱の砂の海に漕ぎ出す。そんな日が何日も続いた。
ひょっとして永遠に砂の海が続くのかと不安に襲われた頃、ようやっと景色が変わってきた。周囲に岩塊がゴロゴロし始め、日陰には低木や草がちらほら生えだした。
「そろそろやで」
ナラさんがそう言ってからさらに半日ほど歩いたか。低い岩山を登って、そして峠を越えたところで俺たちの足は止まった。
唐突に、本当に唐突に、眼下に水面が拡がった。湖というにはやや小さいが、池という大きさではない。これがジェフ湖だ。
そしてその湖畔にある茶色い町並みがジェフの町だ。やっと、ようやっと、たどり着いたよ。
ちょうど教えられた通り、南側から町に入る形になった。
湖畔にはヤシっぽい木が並び、湖面の青と木々の緑のコラボが美しい。絵に描いたようなオアシスの風景だ。
しかし町の方はオアシスのイメージと違う。
赤茶けた土を固めて作った平屋の家々はみすぼらしく、路地にはゴミが散乱している。扉はみな閉め切っていて歩く人の姿もない。何だか廃墟みたいな感じだ。
「何だかヘンな雰囲気ね」
「ゴーストタウンみたいですね」
いや、よく見ると、窓辺に洗濯物が干してあったりするので、人は住んでるようだ。みな息を殺して身を潜めて? 何でだ? 何かあったのか?
しばらく歩くともう町の中心部だ。
土塀に囲まれた区画があり、内には珍しく2階建ての建物がある。しかし、しっかり扉が閉まっていて中には入れない。
「ここかしら? 親衛隊の駐屯所って」
「っぽいですよね」
「でもどこから入るのかしら、これ」
「裏に回ってみましょうか」
「ちょ、ちょお、待てや、お前ら。マジであの手紙信用してんのか? いきなり親衛隊と話するつもりか?」
ナラさんはやはり罠だと思ってるようだ。
「だって、話してみなければ本当かウソかも分からないじゃないですか」
「ウソやったらどないすんねん?」
「だったら戦うまでです」
「くくく……」
ナラさんは笑い出した。
「ソウタ。お前、だんだん歌い手らしいなってきたやんか」
「え? だって、黙って捕まるわけにいかないじゃないですか」
「ホンマにその通りや。親衛隊と話するんやったら、いつでもケンカを始められる心つもりでな」
他のみんなもうんうんとうなずいている。
ぐるっと回り込むと裏口らしき扉があるが、これもガッチリ鍵がかかっている。
どうしたものか、俺たちが困っていると、向こうから男が3人歩いてくる。
良かった。あの人たちに訊いてみよう……と思ったが、ちっとも良くなかった。
近づいてくるにしたがって男たちの風体がまともではないのが分かった。しかも血に飢えた表情をしてる。『ならず者』という言葉がピッタリだ。
男たちは真っ直ぐ俺たちの方に歩いてきた。リーダー格なんだろうか、ボロボロの革鎧を着て長刀を背負ったヒゲ男が一歩前に出る。
「おやおや。見かけねえ奴だな。どっから来たんだ?」
まともに返事すべきかどうか。
こんな奴らにあれこれ尋ねてもちゃんと教えてくれるとは思えない。しかし無用なトラブルは避けたい。ナラさんはもう噛みつきそうな顔をしてるしな。
一歩前に出て俺が返事をする。
「初めまして。僕たち、南の方から来ました」
「はあ、南の方? その人数でか?」
男は後の2人を振り返った。
「お前ら、今の聞いたか? 僕たち、南の方から来ました、らしい。ぐわっはっはっは!」
「うひひひひひひ!」
「ぶはっ、ぶはっ、ぶはっ!」
「僕たち、南の方から来ました! がっはっはっは!」
俺の口調を真似して嘲るように大笑いする。
「何か変なこと言ったかしら?」
ハルさんが怒りで眉をピクピクさせながら訊き返す。
「うっく、くくく……お前ら、そんな、4人とラクダ1頭で南の砂漠を越えて来れるわけねえだろ。適当なこと言ってんじゃねえ。おおかた道に迷って方角も分からなかったんだろ」
笑いを堪えながらヒゲ男が答えるが、ナラさんは爆発した。
「ラクダとちゃうわ! この立派な角が目に入らんのか! ぶっ殺すぞ、ワレぇ!」
「お、なんだ、しゃべるのか? このラクダ」
「ラクダちゃう、言うとるやろ!」
ヒゲはいきり立つナラさんを無視し、後のデブ男と何か良からぬことを話している。
「しゃべるラクダは市で高く売れるって聞いたぞ。いいんじゃねえか」
「この角も高く売れそうだ」
「しかし角の生えたラクダなんて見たことねえな」
「そういや、背中にコブもねえ」
「ひょっとするとレア物か? すんげえ高く売れるんじゃねえか」
この馬鹿ども、どうもラクダ以外の動物を知らないらしい。
ダメだ。こんな奴らと長く話し込んでもロクなことはない。とりあえず肝心なことだけ確認してサヨナラしよう。
「あの、この建物は親衛隊の建物ですか?」
「この建物が親衛隊だったらどうだってんだ?」
ヒゲ男が意地悪に返してくる。
「いや別にどうってことはないんですが、どこから入ったら良いのか分からなくて困ってたんです」
「ふふん」
いやらしい笑みを浮かべる。
「何だったら中に入れてやろうか」
「え? 本当ですか? あなた方、親衛隊の人だったんですか」
「ああ、そうだ。ただし条件がある」
「条件?」
「そうだ。人にものを頼んでタダってことはねえよなあ? そのラクダと、そっちの美人の姉ちゃんを置いて行け」
そう言って背中の刀を抜き、切っ先でアミを指した。
「そっちの胸の大きな女でもいいぞ。顔が見えねえが、まあ胸と尻さえあれば顔なんざ、どうでもいい」
確かにニコは黒髪ごとターバンで顔を隠してる。しかしニコに向かって顔なんかどうでもいいとはまた、失礼を通り越してる。
ってか、やっぱりこういう展開になるんだな。もうこれ以上、話をする必要もない。
「そんなことはできないです。もう結構です。では」
しかしそれで、ハイさよなら、になるわけもない。
「おおい、兄ちゃん、ちょっと待てや……うわっ!!」
男が俺に長刀を向けようとした瞬間、アミが俺の前に割って入り、ヒゲ面に曲刀を突きつけていた。
「胸が小さくて悪かったわね。それにそっちの子は私よりずっと美人よ」
曲刀の刃に触れた男のヒゲ先がぱらぱらと風に舞った。
「こ、このアマ……ぶっ殺してやるうっ!」
始まった。
と思ったら数秒後にはもう終わっていた。
ヒゲ男はアバラを何本かたたき折られ、地べたでうめいていた。
デブ男はナラさんの雷歌を食らい、泡を吹いてケイレンしていた。
もう1人、ドレッドヘアの男はツタで全身を締め上げられ、既に意識がなかった。
まあ、いくらくだらない連中とはいえ、あっけないこと。俺とニコの出番はなかった。
その時、唐突に建物の裏口が開いた。女性が顔を出して俺たちを呼ぶ。
「早く! 早くお入りなさい!」
一瞬、どうしようか迷う。
みんなの顔を見る。
ニコもアミもハルさんもナラさんも、こっちを見ている。そうだ。俺がリーダーだ。俺が決めないといけない。
俺は扉の中に飛び込んだ。
テントの裾があおられてバタバタしている。どこからか砂塵が吹き込んできて口の中がジャリジャリする。
ちょっとテントから顔を出してみるが、風で飛ばされた砂粒がまるで散弾のように頬に刺さってくる。痛い、痛い。もう目なんて開けてられない。
「アホ! そんなことしとったら目ぇ傷めてまうぞ」
ナラさんに怒られて顔を引っ込める。いつもは外で寝ているナラさんも今日はテントの中だ。
「これが噂に聞く砂嵐なのねえ」
「いやいや、こんなんまだ可愛い方やで。ひどい時はテント持って行かれるぐらいや」
「えっ! そんなことになったら命に関わりますね」
「そうや。大きな隊商が砂嵐で全滅とか、別に珍しいこっちゃないで」
「……」
砂嵐を甘く見てた。
「まあ歌術さえ使えたら、水歌と凍歌で砂の壁作ってしのぐとか、手はあるけどな」
ああ、なるほど。でも砂嵐の中じゃ、歌を歌うだけでも一苦労だ。できることならそんなシチュエーションにはなりたくない。
「キョウさんと旅をしてる時もそんなことがあったんですか?」
「おお、それな。あん時はマジやばかったな……」
野郎3人のテントでそんな話をしていたら、突然入り口がばっと開いて、砂混じりの突風と共に美少女二人が飛び込んで来た。
「あなたたち! 何やってんのよ!」
驚く俺たちをよそに、2人、涼しい顔で身体の砂をパタパタ払っている。
「ニコ、外はすごい砂嵐だったろ? 大丈夫か?」
「別に大したことなかったわよ」
アミの方が事も無げに答える。
「何や。どんな歌術使うたんや?」
ナラさんがニコに尋ねる。
「えと、あの、風歌を風が吹いてくる方に向かって……」
「すごいわよ。びゅーって。普通に砂嵐に勝っちゃうんだから」
遠慮がちなニコを遮ってアミが答える。
「はっはっは! さすがやな。キョウでもそんなことせんかったわ」
ナラさんは楽しそうに笑う。俺は苦笑だ。この女神様には砂嵐も勝てないらしい。
翌日、風が止んだと思ったら今度はまた約熱地獄だ。
頭上から太陽が容赦なく照りつけて来る。そしてまたジャンケンで負けた俺がアリジゴク釣りのエサをしながら進む。
夕方になるとわずかな岩場の陰を探してテントを張り、サソリやムカデに悩まされながら夜を明かす。そして朝になるとまた灼熱の砂の海に漕ぎ出す。そんな日が何日も続いた。
ひょっとして永遠に砂の海が続くのかと不安に襲われた頃、ようやっと景色が変わってきた。周囲に岩塊がゴロゴロし始め、日陰には低木や草がちらほら生えだした。
「そろそろやで」
ナラさんがそう言ってからさらに半日ほど歩いたか。低い岩山を登って、そして峠を越えたところで俺たちの足は止まった。
唐突に、本当に唐突に、眼下に水面が拡がった。湖というにはやや小さいが、池という大きさではない。これがジェフ湖だ。
そしてその湖畔にある茶色い町並みがジェフの町だ。やっと、ようやっと、たどり着いたよ。
ちょうど教えられた通り、南側から町に入る形になった。
湖畔にはヤシっぽい木が並び、湖面の青と木々の緑のコラボが美しい。絵に描いたようなオアシスの風景だ。
しかし町の方はオアシスのイメージと違う。
赤茶けた土を固めて作った平屋の家々はみすぼらしく、路地にはゴミが散乱している。扉はみな閉め切っていて歩く人の姿もない。何だか廃墟みたいな感じだ。
「何だかヘンな雰囲気ね」
「ゴーストタウンみたいですね」
いや、よく見ると、窓辺に洗濯物が干してあったりするので、人は住んでるようだ。みな息を殺して身を潜めて? 何でだ? 何かあったのか?
しばらく歩くともう町の中心部だ。
土塀に囲まれた区画があり、内には珍しく2階建ての建物がある。しかし、しっかり扉が閉まっていて中には入れない。
「ここかしら? 親衛隊の駐屯所って」
「っぽいですよね」
「でもどこから入るのかしら、これ」
「裏に回ってみましょうか」
「ちょ、ちょお、待てや、お前ら。マジであの手紙信用してんのか? いきなり親衛隊と話するつもりか?」
ナラさんはやはり罠だと思ってるようだ。
「だって、話してみなければ本当かウソかも分からないじゃないですか」
「ウソやったらどないすんねん?」
「だったら戦うまでです」
「くくく……」
ナラさんは笑い出した。
「ソウタ。お前、だんだん歌い手らしいなってきたやんか」
「え? だって、黙って捕まるわけにいかないじゃないですか」
「ホンマにその通りや。親衛隊と話するんやったら、いつでもケンカを始められる心つもりでな」
他のみんなもうんうんとうなずいている。
ぐるっと回り込むと裏口らしき扉があるが、これもガッチリ鍵がかかっている。
どうしたものか、俺たちが困っていると、向こうから男が3人歩いてくる。
良かった。あの人たちに訊いてみよう……と思ったが、ちっとも良くなかった。
近づいてくるにしたがって男たちの風体がまともではないのが分かった。しかも血に飢えた表情をしてる。『ならず者』という言葉がピッタリだ。
男たちは真っ直ぐ俺たちの方に歩いてきた。リーダー格なんだろうか、ボロボロの革鎧を着て長刀を背負ったヒゲ男が一歩前に出る。
「おやおや。見かけねえ奴だな。どっから来たんだ?」
まともに返事すべきかどうか。
こんな奴らにあれこれ尋ねてもちゃんと教えてくれるとは思えない。しかし無用なトラブルは避けたい。ナラさんはもう噛みつきそうな顔をしてるしな。
一歩前に出て俺が返事をする。
「初めまして。僕たち、南の方から来ました」
「はあ、南の方? その人数でか?」
男は後の2人を振り返った。
「お前ら、今の聞いたか? 僕たち、南の方から来ました、らしい。ぐわっはっはっは!」
「うひひひひひひ!」
「ぶはっ、ぶはっ、ぶはっ!」
「僕たち、南の方から来ました! がっはっはっは!」
俺の口調を真似して嘲るように大笑いする。
「何か変なこと言ったかしら?」
ハルさんが怒りで眉をピクピクさせながら訊き返す。
「うっく、くくく……お前ら、そんな、4人とラクダ1頭で南の砂漠を越えて来れるわけねえだろ。適当なこと言ってんじゃねえ。おおかた道に迷って方角も分からなかったんだろ」
笑いを堪えながらヒゲ男が答えるが、ナラさんは爆発した。
「ラクダとちゃうわ! この立派な角が目に入らんのか! ぶっ殺すぞ、ワレぇ!」
「お、なんだ、しゃべるのか? このラクダ」
「ラクダちゃう、言うとるやろ!」
ヒゲはいきり立つナラさんを無視し、後のデブ男と何か良からぬことを話している。
「しゃべるラクダは市で高く売れるって聞いたぞ。いいんじゃねえか」
「この角も高く売れそうだ」
「しかし角の生えたラクダなんて見たことねえな」
「そういや、背中にコブもねえ」
「ひょっとするとレア物か? すんげえ高く売れるんじゃねえか」
この馬鹿ども、どうもラクダ以外の動物を知らないらしい。
ダメだ。こんな奴らと長く話し込んでもロクなことはない。とりあえず肝心なことだけ確認してサヨナラしよう。
「あの、この建物は親衛隊の建物ですか?」
「この建物が親衛隊だったらどうだってんだ?」
ヒゲ男が意地悪に返してくる。
「いや別にどうってことはないんですが、どこから入ったら良いのか分からなくて困ってたんです」
「ふふん」
いやらしい笑みを浮かべる。
「何だったら中に入れてやろうか」
「え? 本当ですか? あなた方、親衛隊の人だったんですか」
「ああ、そうだ。ただし条件がある」
「条件?」
「そうだ。人にものを頼んでタダってことはねえよなあ? そのラクダと、そっちの美人の姉ちゃんを置いて行け」
そう言って背中の刀を抜き、切っ先でアミを指した。
「そっちの胸の大きな女でもいいぞ。顔が見えねえが、まあ胸と尻さえあれば顔なんざ、どうでもいい」
確かにニコは黒髪ごとターバンで顔を隠してる。しかしニコに向かって顔なんかどうでもいいとはまた、失礼を通り越してる。
ってか、やっぱりこういう展開になるんだな。もうこれ以上、話をする必要もない。
「そんなことはできないです。もう結構です。では」
しかしそれで、ハイさよなら、になるわけもない。
「おおい、兄ちゃん、ちょっと待てや……うわっ!!」
男が俺に長刀を向けようとした瞬間、アミが俺の前に割って入り、ヒゲ面に曲刀を突きつけていた。
「胸が小さくて悪かったわね。それにそっちの子は私よりずっと美人よ」
曲刀の刃に触れた男のヒゲ先がぱらぱらと風に舞った。
「こ、このアマ……ぶっ殺してやるうっ!」
始まった。
と思ったら数秒後にはもう終わっていた。
ヒゲ男はアバラを何本かたたき折られ、地べたでうめいていた。
デブ男はナラさんの雷歌を食らい、泡を吹いてケイレンしていた。
もう1人、ドレッドヘアの男はツタで全身を締め上げられ、既に意識がなかった。
まあ、いくらくだらない連中とはいえ、あっけないこと。俺とニコの出番はなかった。
その時、唐突に建物の裏口が開いた。女性が顔を出して俺たちを呼ぶ。
「早く! 早くお入りなさい!」
一瞬、どうしようか迷う。
みんなの顔を見る。
ニコもアミもハルさんもナラさんも、こっちを見ている。そうだ。俺がリーダーだ。俺が決めないといけない。
俺は扉の中に飛び込んだ。
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