91 / 123
第九幕 砂の楼閣
第九幕への前奏曲 ~ジゴさんからの手紙~
しおりを挟む
ソウタ! 生きてたんだな! 良かった、良かったよ。
半年ほど前、お前たちが大海峡に落ちて消息不明という報せが入って来て、そりゃもう、どんだけ心配したか、どんだけ気をもんだか。
生きてる、きっと生きてる、そう信じてはいたが、時間が経つにつれてだんだん自信がなくなってきて、ナギなんか食事がのどを通らなくなってげっそり痩せちまった。
それがお前たちが元気だと分かって、今は俺の横でむしゃむしゃ肉を食ってる。って書いたところで頭を1発はたかれたよ(笑)。いや、もう、良かった。本当に良かった。
しかも、心強い仲間が増えたそうだな。そうだ。歌い手には一緒に旅をするメンバーが必要だからな。
ナラさんっていうのは鹿なのか。先代の歌い手はレジスタンスとの接触が少なくって、その旅も戦いも謎だらけなんだ。まさか魔物やゴブリンや鹿と一緒に旅をしてたとはな。驚いたよ。
ただ俺としてはぜひそのアミちゃんという美少女にお目にかかりたいな。あのエメの娘さんならさぞかし美人だろう。って書いたところでまたナギに頭をはたかれたよ(笑)。
それにしても、先代の歌い手のメンバーに癒術師の踊り子なんて、強力な助っ人が来てくれたもんだな。ソウタ、それもお前の人望だぞ。お前のその人柄がみなを惹きつけるんだ。そりゃニコも惚れるはずだ。
そうそう、ニコのことだ。
ソウタが嫁にもらってくれるなら、俺もナギも大賛成だ。というか、元々俺たちの方では勝手にそのつもりになってたんだ。
あの子は空気読めないし、時々爆弾発言するし、村では適応できなくって引きこもってたんだ。それが、ソウタが来てくれた途端にすっかり元気になっちまった。髪まで黒くなったなんて、まるで前世でも縁があったのかと思うぐらいだ。ソウタをおいて他に嫁にもらってくれる適任者はいない。
親として自信を持って送り出せる娘ではないが、よろしく頼んだよ。農作業に、お料理に、お裁縫に、身の回りのこと……一通りのお嫁入り修行はしてるが、今もきっとあれこれソウタの足を引っ張ってるだろう。前もって謝っておくよ。ふつつかな娘で申し訳ないが、どうかよろしく。
余計なお世話かもしれないが、子供を作るタイミングには十分気をつけておけよ。ニコができたのはちょっと予想外のタイミングで、いろいろと差し障りがあったからな(笑)。
平和な世の中ならちゃんと結婚式を挙げたいところだがな……大陸のあちこちで不穏な動きが起こってる。
各地の親衛隊が、大陸政府の統制から外れて、好き勝手する事件が増えてる。裏で何者かが扇動している気配もある。
政治家は、世襲を重ねるうちに腐りきって、私欲のために好き放題やってる。黙呪王の力が弱まってるという噂もある。それなのにレジスタンスは相変わらずバラバラで、組織間の連携もほとんどとれてない。嘆かわしいことだ。
ただお前も手紙で教えてくれたが、ボナキャンプの事件から、黙呪兵についていろいろと分かって来たことがある。詳しくは書けないが、俺とナギも重要な情報をつかんだ。真偽を確認しようといろいろ動いているところだ。
お前たちは十分気をつけて、早く安全な場所を見つけるんだぞ。黙呪王と戦おうとか、絶対に考えるなよ。お前の歌の力は、自分とニコと仲間を守るために使ってくれ。戦うのは俺たちオッサン、オバさんに任せろ。俺たちはもう老い先短いが、お前たちには未来がある。決して生き急ぐなよ。
俺たちはこれから古都ニルに向かう。手紙はニルのレジスタンス組織あてに送ってくれ。
ニコにはナギが手紙を書いてる。ハルにも書いてやりたいところだが移動中で時間がない。お前からよろしく言っといてくれ。それともちろん、ナラさん、アミちゃんにもよろしくな。落ち着いたらまたこっちからも手紙書くよ。じゃあな。
ジゴより
半年ほど前、お前たちが大海峡に落ちて消息不明という報せが入って来て、そりゃもう、どんだけ心配したか、どんだけ気をもんだか。
生きてる、きっと生きてる、そう信じてはいたが、時間が経つにつれてだんだん自信がなくなってきて、ナギなんか食事がのどを通らなくなってげっそり痩せちまった。
それがお前たちが元気だと分かって、今は俺の横でむしゃむしゃ肉を食ってる。って書いたところで頭を1発はたかれたよ(笑)。いや、もう、良かった。本当に良かった。
しかも、心強い仲間が増えたそうだな。そうだ。歌い手には一緒に旅をするメンバーが必要だからな。
ナラさんっていうのは鹿なのか。先代の歌い手はレジスタンスとの接触が少なくって、その旅も戦いも謎だらけなんだ。まさか魔物やゴブリンや鹿と一緒に旅をしてたとはな。驚いたよ。
ただ俺としてはぜひそのアミちゃんという美少女にお目にかかりたいな。あのエメの娘さんならさぞかし美人だろう。って書いたところでまたナギに頭をはたかれたよ(笑)。
それにしても、先代の歌い手のメンバーに癒術師の踊り子なんて、強力な助っ人が来てくれたもんだな。ソウタ、それもお前の人望だぞ。お前のその人柄がみなを惹きつけるんだ。そりゃニコも惚れるはずだ。
そうそう、ニコのことだ。
ソウタが嫁にもらってくれるなら、俺もナギも大賛成だ。というか、元々俺たちの方では勝手にそのつもりになってたんだ。
あの子は空気読めないし、時々爆弾発言するし、村では適応できなくって引きこもってたんだ。それが、ソウタが来てくれた途端にすっかり元気になっちまった。髪まで黒くなったなんて、まるで前世でも縁があったのかと思うぐらいだ。ソウタをおいて他に嫁にもらってくれる適任者はいない。
親として自信を持って送り出せる娘ではないが、よろしく頼んだよ。農作業に、お料理に、お裁縫に、身の回りのこと……一通りのお嫁入り修行はしてるが、今もきっとあれこれソウタの足を引っ張ってるだろう。前もって謝っておくよ。ふつつかな娘で申し訳ないが、どうかよろしく。
余計なお世話かもしれないが、子供を作るタイミングには十分気をつけておけよ。ニコができたのはちょっと予想外のタイミングで、いろいろと差し障りがあったからな(笑)。
平和な世の中ならちゃんと結婚式を挙げたいところだがな……大陸のあちこちで不穏な動きが起こってる。
各地の親衛隊が、大陸政府の統制から外れて、好き勝手する事件が増えてる。裏で何者かが扇動している気配もある。
政治家は、世襲を重ねるうちに腐りきって、私欲のために好き放題やってる。黙呪王の力が弱まってるという噂もある。それなのにレジスタンスは相変わらずバラバラで、組織間の連携もほとんどとれてない。嘆かわしいことだ。
ただお前も手紙で教えてくれたが、ボナキャンプの事件から、黙呪兵についていろいろと分かって来たことがある。詳しくは書けないが、俺とナギも重要な情報をつかんだ。真偽を確認しようといろいろ動いているところだ。
お前たちは十分気をつけて、早く安全な場所を見つけるんだぞ。黙呪王と戦おうとか、絶対に考えるなよ。お前の歌の力は、自分とニコと仲間を守るために使ってくれ。戦うのは俺たちオッサン、オバさんに任せろ。俺たちはもう老い先短いが、お前たちには未来がある。決して生き急ぐなよ。
俺たちはこれから古都ニルに向かう。手紙はニルのレジスタンス組織あてに送ってくれ。
ニコにはナギが手紙を書いてる。ハルにも書いてやりたいところだが移動中で時間がない。お前からよろしく言っといてくれ。それともちろん、ナラさん、アミちゃんにもよろしくな。落ち着いたらまたこっちからも手紙書くよ。じゃあな。
ジゴより
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
魔拳のデイドリーマー
osho
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生した少年・ミナト。ちょっと物騒な大自然の中で、優しくて美人でエキセントリックなお母さんに育てられた彼が、我流の魔法と鍛えた肉体を武器に、常識とか色々ぶっちぎりつつもあくまで気ままに過ごしていくお話。
主人公最強系の転生ファンタジーになります。未熟者の書いた、自己満足が執筆方針の拙い文ですが、お暇な方、よろしければどうぞ見ていってください。感想などいただけると嬉しいです。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される
マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。
そこで木の影で眠る幼女を見つけた。
自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。
実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。
・初のファンタジー物です
・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います
・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯
どうか温かく見守ってください♪
☆感謝☆
HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯
そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。
本当にありがとうございます!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる