63 / 123
第六幕 踊り子
間奏曲 ~作戦報告書~
しおりを挟む
作戦報告書 第23号
作戦開始日時:黙呪暦255年5月8日午前1時
作戦終了日時:同日午前2時40分
作戦地:北西区イズ地方 イズ町温泉街
責任部隊:北西区親衛隊イズ地方分隊
出動部隊:北西区親衛隊イズ地方分隊より分隊長を含む3名
出動眷属:タウロ
補佐眷属:ヌエ
作戦結果:成功
作戦成果:歌い手被疑者1(ソウタ) →死亡(死体は未確認)
歌い手被疑者2(ニコ) →死亡(死体は未確認)
その他 住宅損壊 2棟 部分焼失 5棟
味方被害:眷属 タウロ →死亡(確認済み)
黙呪兵300体 →全滅(確認済み)
分隊長 ゾラ →負傷(骨折6カ所、一部内臓損傷で全治2ヶ月)
作戦経過:
黙呪暦255年4月15日:被疑者1が潜伏先のボナを出て南方に向かったとの情報あり。
5月2日:被疑者1がイズ町にいるとの情報あり。
5月4日:黒髪の男女が温泉街近くの滝にいたとの情報あり。被疑者1と被疑者2が同行していると推測された。
5月5日:作戦会議にて作戦実行が決定される。作戦番号は255年度第23号。
5月7日午後11時30分:現地到着、黙呪丸の播種開始。
5月8日午前0時30分:黙呪丸の播種完了。
同午前0時50分:分隊展開、眷属配置、準備完了。
午前1時0分:作戦開始。黙呪兵孵化、「炎歌」指示。雨のため、なかなか住宅に着火せず。眷属待機。
午前1時15分:歌い手被疑者1が町にいないことが判明。分隊長判断で作戦は続行。
午前1時40分:被疑者1が町に現れる。被疑者2も同行。支援者2名(うち1名はナジャのレジスタンス組織責任者)と共に、歌術および剣術で黙呪兵を攻撃。黙呪兵50体以上が倒される。
午前1時50分:被疑者1・2が支援者2名とともに町の中央部に移動。奇妙な歌術と奏術を使う。残った黙呪兵が全て被疑者達の周りに集合、機能停止される。その上で奏鳴剣と思われる武器で大規模歌術を発動し、全黙呪兵が一気に殲滅される。
午前1時55分:待機中の眷属タウロが分隊長の制止を聞かず町の中央部に移動。
午前1時58分:タウロが制止する分隊長に暴力を振るい、分隊長は重傷を負う。隊員2名が癒歌を使い救護に当たる。
午前1時59分:被疑者1が歌術でタウロの左目を負傷させ戦闘開始。
午前2時06分:タウロが右手に重傷を負う。
午前2時13分:支援者の使った蔦歌でタウロが転倒。そこで被疑者1が何らかの歌術を使った模様。
午前2時15分:タウロが支援者を追い詰めるが、壊れた斧の刃が自身の背中に命中し瀕死の重傷を負う。
午前2時18分:被疑者1によりタウロが殺害される。
午前2時23分:親衛隊員が隙を見て橋を破壊し、被疑者1はイズ川に転落する。その後、被疑者2も自ら川に飛び込み、両名とも流される。
午前2時40分:両名ともイズ滝より落下、死亡した(ただし死体は未確認)。作戦を終了した。
作戦考察:
被疑者1は負傷しており十分な戦闘力を持たないとの事前情報があったが、作戦時点では上記のように驚異的な戦闘力を示した。イズ町に到着後、作戦実行までに時間があったことから、回復されてしまったものと思われる。
また歌い手の持つ属性耐性を鑑み、今回は物理攻撃を重視しタウロを派遣したが、準備期間が短かったこともあり親衛隊とのコミュニケーションがとれず、共闘作戦がほとんど機能しなかった。さらに分隊長判断で現地入りする親衛隊員を3名に絞ったのも失敗であった。
逃走手段として用意していた橋の爆破によって被疑者1がイズ川に転落したことと、被疑者2も自ら川に飛び込むという愚挙に出たことで辛くも作戦は成功したが、これは僥倖というべきであり、古参の眷属であるタウロを亡くし、少なくない数の黙呪兵は全滅、分隊長も重傷を負うなど、その犠牲は非常に大きく、反省すべき点も多い。結果を除けば作戦自体はほぼ失敗とも言える。
イズ滝は落差1500メートル以上であり、落下して助かる者はいない。被疑者たちの死亡は間違いないと考える。ただし超高速で海面に叩きつけられるため、死体は四散してしまうことが多い。死体の回収、確認は困難と思われる。
被疑者1はともかく、急速に歌い手化が進んでいた被疑者2についても、死体解剖により身体変化を調べることができなくなったのは非常に残念である。
その他:
何はともあれ、被疑者1・2の死亡により、現時点で大陸に存在する脅威は一掃された。
南西区など過疎地域での親衛隊駐留は、人件費、維持費などで王国の財政をかなり圧迫しているため、いったん規模を縮小し負担を軽減することも考慮されるべきであろう。
また近年、今回のような親衛隊幹部職の独断専行が目につく。明らかに人の上に立つ資質に欠ける者が幹部職にあぐらをかいているケースも散見される。今後も黙呪王様の治世を永く続けて行くためには、親衛隊組織の根本的な機構改革が望まれる。
添付資料:イズ地方地図、イズ温泉街見取り図、黙呪丸播種予定図
報告日:黙呪暦255年5月9日
報告者:眷属 ヌエ
作戦開始日時:黙呪暦255年5月8日午前1時
作戦終了日時:同日午前2時40分
作戦地:北西区イズ地方 イズ町温泉街
責任部隊:北西区親衛隊イズ地方分隊
出動部隊:北西区親衛隊イズ地方分隊より分隊長を含む3名
出動眷属:タウロ
補佐眷属:ヌエ
作戦結果:成功
作戦成果:歌い手被疑者1(ソウタ) →死亡(死体は未確認)
歌い手被疑者2(ニコ) →死亡(死体は未確認)
その他 住宅損壊 2棟 部分焼失 5棟
味方被害:眷属 タウロ →死亡(確認済み)
黙呪兵300体 →全滅(確認済み)
分隊長 ゾラ →負傷(骨折6カ所、一部内臓損傷で全治2ヶ月)
作戦経過:
黙呪暦255年4月15日:被疑者1が潜伏先のボナを出て南方に向かったとの情報あり。
5月2日:被疑者1がイズ町にいるとの情報あり。
5月4日:黒髪の男女が温泉街近くの滝にいたとの情報あり。被疑者1と被疑者2が同行していると推測された。
5月5日:作戦会議にて作戦実行が決定される。作戦番号は255年度第23号。
5月7日午後11時30分:現地到着、黙呪丸の播種開始。
5月8日午前0時30分:黙呪丸の播種完了。
同午前0時50分:分隊展開、眷属配置、準備完了。
午前1時0分:作戦開始。黙呪兵孵化、「炎歌」指示。雨のため、なかなか住宅に着火せず。眷属待機。
午前1時15分:歌い手被疑者1が町にいないことが判明。分隊長判断で作戦は続行。
午前1時40分:被疑者1が町に現れる。被疑者2も同行。支援者2名(うち1名はナジャのレジスタンス組織責任者)と共に、歌術および剣術で黙呪兵を攻撃。黙呪兵50体以上が倒される。
午前1時50分:被疑者1・2が支援者2名とともに町の中央部に移動。奇妙な歌術と奏術を使う。残った黙呪兵が全て被疑者達の周りに集合、機能停止される。その上で奏鳴剣と思われる武器で大規模歌術を発動し、全黙呪兵が一気に殲滅される。
午前1時55分:待機中の眷属タウロが分隊長の制止を聞かず町の中央部に移動。
午前1時58分:タウロが制止する分隊長に暴力を振るい、分隊長は重傷を負う。隊員2名が癒歌を使い救護に当たる。
午前1時59分:被疑者1が歌術でタウロの左目を負傷させ戦闘開始。
午前2時06分:タウロが右手に重傷を負う。
午前2時13分:支援者の使った蔦歌でタウロが転倒。そこで被疑者1が何らかの歌術を使った模様。
午前2時15分:タウロが支援者を追い詰めるが、壊れた斧の刃が自身の背中に命中し瀕死の重傷を負う。
午前2時18分:被疑者1によりタウロが殺害される。
午前2時23分:親衛隊員が隙を見て橋を破壊し、被疑者1はイズ川に転落する。その後、被疑者2も自ら川に飛び込み、両名とも流される。
午前2時40分:両名ともイズ滝より落下、死亡した(ただし死体は未確認)。作戦を終了した。
作戦考察:
被疑者1は負傷しており十分な戦闘力を持たないとの事前情報があったが、作戦時点では上記のように驚異的な戦闘力を示した。イズ町に到着後、作戦実行までに時間があったことから、回復されてしまったものと思われる。
また歌い手の持つ属性耐性を鑑み、今回は物理攻撃を重視しタウロを派遣したが、準備期間が短かったこともあり親衛隊とのコミュニケーションがとれず、共闘作戦がほとんど機能しなかった。さらに分隊長判断で現地入りする親衛隊員を3名に絞ったのも失敗であった。
逃走手段として用意していた橋の爆破によって被疑者1がイズ川に転落したことと、被疑者2も自ら川に飛び込むという愚挙に出たことで辛くも作戦は成功したが、これは僥倖というべきであり、古参の眷属であるタウロを亡くし、少なくない数の黙呪兵は全滅、分隊長も重傷を負うなど、その犠牲は非常に大きく、反省すべき点も多い。結果を除けば作戦自体はほぼ失敗とも言える。
イズ滝は落差1500メートル以上であり、落下して助かる者はいない。被疑者たちの死亡は間違いないと考える。ただし超高速で海面に叩きつけられるため、死体は四散してしまうことが多い。死体の回収、確認は困難と思われる。
被疑者1はともかく、急速に歌い手化が進んでいた被疑者2についても、死体解剖により身体変化を調べることができなくなったのは非常に残念である。
その他:
何はともあれ、被疑者1・2の死亡により、現時点で大陸に存在する脅威は一掃された。
南西区など過疎地域での親衛隊駐留は、人件費、維持費などで王国の財政をかなり圧迫しているため、いったん規模を縮小し負担を軽減することも考慮されるべきであろう。
また近年、今回のような親衛隊幹部職の独断専行が目につく。明らかに人の上に立つ資質に欠ける者が幹部職にあぐらをかいているケースも散見される。今後も黙呪王様の治世を永く続けて行くためには、親衛隊組織の根本的な機構改革が望まれる。
添付資料:イズ地方地図、イズ温泉街見取り図、黙呪丸播種予定図
報告日:黙呪暦255年5月9日
報告者:眷属 ヌエ
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件
エース皇命
ファンタジー
前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。
しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。
悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。
ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語!
※小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
お疲れエルフの家出からはじまる癒されライフ
アキナヌカ
ファンタジー
僕はクアリタ・グランフォレという250歳ほどの若いエルフだ、僕の養い子であるハーフエルフのソアンが150歳になって成人したら、彼女は突然私と一緒に家出しようと言ってきた!!さぁ、これはお疲れエルフの家出からはじまる癒されライフ??かもしれない。
村で仕事に埋もれて疲れ切ったエルフが、養い子のハーフエルフの誘いにのって思い切って家出するお話です。家出をする彼の前には一体、何が待ち受けているのでしょうか。
いろいろと疲れた貴方に、いっぱい休んで癒されることは、決して悪いことではないはずなのです
この作品はカクヨム、小説家になろう、pixiv、エブリスタにも投稿しています。
不定期投稿ですが、なるべく毎日投稿を目指しています。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる