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短編的なの書こうかなの章

閑話6-1 人魚のいる島

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「伝説のアイテム!?」

「はい。大迷宮に保管されていた資料に記述があったんです。
 人魚の守っている島に光魔法を補助する強力な魔道具があると。
 イーナは光魔法の使い手ですし、戦闘力強化のために行きませんか?」

「イーナ……これ以上強くするのか。別にいいけど」

 イーナの弱点は肉体がお子様なので早く起きたり遅くまで起きてられなかったり程度で、戦闘力は多分世界屈指だと思われるのだが……。

 イーナは数夫が本来の勇者だったと知ってからは、時夫に宝剣を貸し出して戦い方を教えようとしてくる。
 別に孫だからって性質を受け継いではいないけど、ツノありウサギを剣で倒すのは何匹かできた。冒険者やってるって感じで楽しかったし、時夫も瘴気を剣で払う奴出来るみたいだった。
 とはいえ勇者歴が違うのでイーナの剣捌きを見ると秒でやる気を無くした。
 
 虫だけじゃなく、ウサギも絶滅させそうな勢いで狩りまくってた。
 うちの女子はなんでこうも戦闘狂なんだ……。
 見た目だけなら国で一、二を争いそうな可愛い系なのに。

 閑話休題。

「イーナはその強化武器についてなんて言ってる?」

「もちろん是非とも欲しいそうです」

 そんな訳で人魚に会いに行く事になった。
 ……多分すんなりと宝物をくれる訳はないよな?

「でも、その資料書かれたの相当昔だろ?
 他の人がもう手に入れたりしてないか?」

「調べてみたんですけど、それらしい物を入手してる国や冒険者が記載された歴史資料は今のところ無いんです。
 だから、もしかしたらまだ誰の手にも渡らずに、そこにあるんじゃ無いかと思いまして。
 無かったら無かったで、旅を楽しみましょう」

 時夫は時夫でまた旅の前に人魚について知ってそうな人に話を聞きに行く。

 先ずは何でも知ってる薬屋の店主だ。
 困った時の時夫のアドバイザーにしてる。

「おっすー。お、ラビン。元気にしてるか?」

「……うん」

 毛が生えすぎる体質で、魔獣のフリをさせられていたウサギ獣人のラビンが店番をしていた。
 脱毛剤を上手く使って今は普通に可愛い姿になっている。
 ラビンが着ているカラフルな可愛い衣装はイーナの作品だ。
 モチーフは不思議の国アリスの時計のウサギか。

「店主は奥か?」

「うん……呼んでくる」

 待っている間に棚に並ぶ薬を眺める。
 げっ!!あの緑と紫が渦巻き光ってる小瓶は……タークが酷い事になったやばい自白剤だ。
 日本円に換算して一本30万円ちょっとのお値段か。
 そんな物は店の奥に厳重に閉まっといて欲しい。
 間違って落として容器割ったら泣く。
 そして、分かってはいたがルミィが密室殺人の推理での薬の購入先はここだったんだな。
 
 法律詳しく無いからうるさい事は言わないけど、非合法っぽいものも普通に売ってるんだよなぁ。
 モルガー刑事もっと仕事しろ。

「お、いらっしゃい。何が欲しいの?」

 とんがり帽子の魔女がいつものニヤニヤした顔で出迎えてくれた。
 こんなんでもラビンの良き母親代わりをやってるらしい。
 ラビンの母親になるにしては若いけど……若いんだよな?
 時夫には女の人の年齢はよく分からない上に、この店長は五百歳とか言われても何故か納得させる貫禄がある。

「人魚のいる島に宝探ししに行くんだよ。
 人魚とかお宝について知ってる事無い?」

「んー?お宝は分からないけど、人魚の涙が欲しいんだよねぇ。
 魔法薬の触媒に使いたいから。頼むよ」

 頼まれた。
 世話になってるから叶えてやりたいが、泣かせるのかぁ……。

「できるか分かんないけど、分かったよ。
 で、何作るんだ?また怪しい薬?」

「ふふふ……そんなんじゃないよ。
 そうだねぇ……作りたいのは何種類かあるんだけど。
 お客さんが興味を持ちそうな奴だと、媚薬なんてどう?恋人さんと盛り上がるよ?」

「おいコラ!子供の教育に悪いだろ。ラビンの前で何言ってんだ」

 ラビンはキョトンとしている。
 よし、意味はわかって無さそうだな。

「後は……ふむ。これはとんでもない薬なんだけどねぇ、お客さんの恋人さんが古代遺跡の資料を少し見せてくれて何種類が載ってた中にあったやつ」

「……何だよ」

 普通の魔法すら、日本人的には奇跡そのものだが、古代魔法はさらにその上を行く。
 何で街の薬屋さんがそんなのに手を出そうとしてるんだ。

「女の子に飲ませれば百発百中、一撃必殺で懐妊させちゃうお薬だよ。どう?
 作れたらお裾分けするよ?」

「いらねぇ!そんなの……その……もっと必要なご家庭があるだろ!」

 ちょっとだけ言い淀んだのは、もし日本に帰れなかったら必要になる可能性もあるのかななんて思ってしまったのだ。
 変な妄想をしそうになったが慌てて脳内から打ち消す。

「材料費だけで一般家庭では手が出ないだろうからねぇ。
 王族レベルなら欲しい人いくらでもいそうだね。
 特に妃が複数いる国ならいくらでも出してくれそうだよ。
 お客さんが材料持ってきてくれるなら、そんな品をお裾分けと思ったんだけどね」

「いや、もう良いから!
 とにかく人魚の涙だな!できたら持って帰ってくるけど、ダメな時はお土産に饅頭でも探して買ってくるから!」

 時夫は慌てて店を出た。
 改めてこの店が合法なのかモルガー刑事に捜査してもらいたい。

 次に時夫は冒険者ギルドに行った。
 確かギルド長が船旅してたとか何とか言ってたし。

「お疲れ様ーっす!」

「いらっしゃいませ……あ、トキオさん!」

 受付のコニーが笑顔で手と尻尾をパタパタさせて出迎えてくれた。
 狐耳もぴこぴこ動いている。

「くそっ!俺もクラスがもっと上がれば……」
「髪型変えようかな……」

 モヒカン系冒険者達がコニーと親しい時夫に羨望と嫉妬の入り混じった眼差しを向けてくる。
 ふむふむ……気分が良いなぁ。

「ギルド長いる?」

「はい!待っててくださいね!」

 コニーが尻尾をフリフリ呼びに行ってくれた。

「お!どうしたんだ?今日は一人か」

 ムキムキマッチョのギルド長がニカっと白い歯並びの良さを見せつけつつ笑いかけてくる。
 そして、何故か腕を曲げて二の腕の筋肉も見せつけてくる。
 それは時夫は無視して本題を速やかに話す。

「人魚のいる島に行くんだよ。
 なんか光魔法の凄い武器が手に入るとか何とかで。
 ギルド長は人形見たことある?」

 時夫のいた世界では、人魚は歌で人間を惑わすとか、肉を食べると長生きとかあったけど、こちらの世界ではどういう扱いなんだろな。

「ああ……なんか獣人の仲間なんだか、怪物なんだかよく分からないけど、魔法が人間より上手いとかいうよな。
 俺は会ったこと無いけど、知り合いは見たって言ってたよ。
 でも、目が合うと海の中にすぐに逃げるから見たと言っても一瞬だったらしいな。
 美人だって嬉しそうだったなぁ」

「そっか。じゃあ、いきなり襲ってきたりは無いか」

「もし会えたらどんな風だったか教えてくれよな」
 
 あまりギルドでは多くの情報は得られなかったが、恐ろしい存在では無いようでホッとした。

 そして、出発の日を迎えた。
 いざ、南の島へ!
 気分は半分バカンスだ。
 
 そして、旅には時夫、ルミィ、イーナのいつもの三人に合わせて、ルミィの忍者集団からお馴染みの調理担当トニーと、アイドルのレティ……メイドのレティシャが来る事になった。

「………………何ですか?」

 レティシャは射殺さんばかりの瞳で時夫を見てくる。こわっ!

「トキオさん!またお会いできて嬉しいです」

 トニーは癒し系だなぁ。

「よろしく頼むよ!……ところで人魚って美味しいのかな?」

「え!?……いや、食べないですよね!?冗談ですよね!?」

 時夫の無邪気な質問にトニーがドン引きしてる。

「あ、うん。冗談ダヨ」

 いや、人魚の肉って不老長寿とかいうし、味が少し気になったんだよ。
 今回はルミィの風と、風の魔石、そして自然の風での旅となる。
 船は前回より小さいが、楽しい旅になると良いな。

 
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