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疾風の天使
第24話 トッキー
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「イオリ!危ない!」
電光石火の動きで紫電を纏った王子が齋藤さんを抱きしめアーローの鉤爪からかろうじて避けた。
「トキオ!行きましょう!」
「おう!」
時夫とルミィも齋藤さんの方へ急いで向かう。観客達が急いで逃げ惑う中、流れに逆らう様に急ぐ。
「トキオ、手を!」
ルミィが手を伸ばしてきたので、その手を掴む。ルミィが杖を出して、その杖に跨りながら時夫を後ろに乗せて飛ぶ。
時夫はどこを掴めば良いのかわからないので、レミィの細い肩にそっと手を置いている。
風圧が凄いんじゃ無いかと思ったが、どういう魔法の運用をしているのか、振り落とされる雰囲気もないし、跨っている杖も特に食い込まずに全身が空気に包まれている……と言うよりしっかり落ちない様に押さえつけられてるような感じがする。
女神アルマに増やして貰った魔力のお陰で時夫ごと浮かぶことが出来るまでになっているのだろうが、だとしても中々の高等技術なのでは無いか?
こんなに便利そうな魔法を普段使わない理由は、恐らく目立ち過ぎるのと、長時間の運用は無理なのだろうな。
実際、逃げ惑う生徒や来賓の頭上を超えていくが、時夫達を指差す人々は皆驚きに満ちた顔をしている。
人によっては足を止めてしまっている。ちゃんと逃げろ。
それにしてもルミィ何者なんだ?クラス2冒険者ってそんな凄いのか?
先ほど決勝でアナウンスがあった騎士団長の息子らしい赤毛のイーサンがファイアボールをアーローに向けて飛ばす。
だが、アーローが翼をバサリと強く羽ばたかせただけで強い風が吹き荒れて、ファイアボールが四散し、散り散りになった火の粉がまだ逃げ切っていない観客に降り注ぐ。
『散水』
植物に水をやる魔法を極大魔力で。とりあえず周囲一帯にザーザー雨を降らす勢いで水を撒く。
「な、何だ!?」「うわ!雨!?」「きゃっ!冷た!」
あ、まずい。
観客だけじゃなくイーサンも王子も齋藤さんもガッツリ濡れた。時夫はルミィが風の魔法で周囲の空気を操って色々弾き飛ばしてくれたので無事だった。
…………うーん、風の魔法ってすごいなー便利だなー。雷とか炎はダメですね。
時夫は己のやらかしから現実逃避をすることで難を逃れた。
「よし!とにかく観客は大方逃げたな。契約上の仕事は終えたんじゃ無いか?」
今回の依頼は観客を魔法ダメージから守ることである。
それを時夫は見事やりきってみせた。冒険者として成長を感じる。
「なに一仕事(ひとしごと)終えた感出してるんですか!?
邪教徒そこにいるんですよ!あなたが突然水ばら撒いてサリトゥ様とか濡らしたから邪教徒も驚いちゃってるじゃ無いですか!」
アーローは突然現れて聖女達をずぶ濡れにした時夫たちを、どう対処すべきか考えている様だ。
ルミィがヒソヒソと時夫に耳打ちする。
「王子は雷魔法の使い手ですけど、多分濡れちゃったから使用に大分制限掛かってます」
「俺のせいかな?…………そうだな。俺のせいだな」
時夫は自らの過ちを素直に認めた。過ちを認めることで人間的に大いに成長した。
「リカバリーが必要だ。乾かしてあげる魔法とか覚えておけば良かったな。
……ファイアボールとルミィの風の魔法を合わせて温風を作って乾かしてやるってのはどうだ!?」
ピンチから合体魔法を思いついた。特許申請とかこの世界にもあるのかな?
しかし、そんな暇は無さそうだった。
「あなたたちは何かしら?聖女を守りに来たの?さっきの魔法は何かしら。あんなに広範囲に雨の様に水を出現する魔法なんて聞いたことが無いわ」
アーローが時夫たちに興味を持ってしまった。仕方ない。自己紹介するか。
「俺は……新進気鋭の冒険者にして生活魔法のカリスマ……」
ふと王子たちの目線が気になった。本名名乗るのは不味いかな?
王子たちの中での王宮から追い出した時夫の評価がわからない。
「トッキーだ!!」
学生時代のあだ名です。
電光石火の動きで紫電を纏った王子が齋藤さんを抱きしめアーローの鉤爪からかろうじて避けた。
「トキオ!行きましょう!」
「おう!」
時夫とルミィも齋藤さんの方へ急いで向かう。観客達が急いで逃げ惑う中、流れに逆らう様に急ぐ。
「トキオ、手を!」
ルミィが手を伸ばしてきたので、その手を掴む。ルミィが杖を出して、その杖に跨りながら時夫を後ろに乗せて飛ぶ。
時夫はどこを掴めば良いのかわからないので、レミィの細い肩にそっと手を置いている。
風圧が凄いんじゃ無いかと思ったが、どういう魔法の運用をしているのか、振り落とされる雰囲気もないし、跨っている杖も特に食い込まずに全身が空気に包まれている……と言うよりしっかり落ちない様に押さえつけられてるような感じがする。
女神アルマに増やして貰った魔力のお陰で時夫ごと浮かぶことが出来るまでになっているのだろうが、だとしても中々の高等技術なのでは無いか?
こんなに便利そうな魔法を普段使わない理由は、恐らく目立ち過ぎるのと、長時間の運用は無理なのだろうな。
実際、逃げ惑う生徒や来賓の頭上を超えていくが、時夫達を指差す人々は皆驚きに満ちた顔をしている。
人によっては足を止めてしまっている。ちゃんと逃げろ。
それにしてもルミィ何者なんだ?クラス2冒険者ってそんな凄いのか?
先ほど決勝でアナウンスがあった騎士団長の息子らしい赤毛のイーサンがファイアボールをアーローに向けて飛ばす。
だが、アーローが翼をバサリと強く羽ばたかせただけで強い風が吹き荒れて、ファイアボールが四散し、散り散りになった火の粉がまだ逃げ切っていない観客に降り注ぐ。
『散水』
植物に水をやる魔法を極大魔力で。とりあえず周囲一帯にザーザー雨を降らす勢いで水を撒く。
「な、何だ!?」「うわ!雨!?」「きゃっ!冷た!」
あ、まずい。
観客だけじゃなくイーサンも王子も齋藤さんもガッツリ濡れた。時夫はルミィが風の魔法で周囲の空気を操って色々弾き飛ばしてくれたので無事だった。
…………うーん、風の魔法ってすごいなー便利だなー。雷とか炎はダメですね。
時夫は己のやらかしから現実逃避をすることで難を逃れた。
「よし!とにかく観客は大方逃げたな。契約上の仕事は終えたんじゃ無いか?」
今回の依頼は観客を魔法ダメージから守ることである。
それを時夫は見事やりきってみせた。冒険者として成長を感じる。
「なに一仕事(ひとしごと)終えた感出してるんですか!?
邪教徒そこにいるんですよ!あなたが突然水ばら撒いてサリトゥ様とか濡らしたから邪教徒も驚いちゃってるじゃ無いですか!」
アーローは突然現れて聖女達をずぶ濡れにした時夫たちを、どう対処すべきか考えている様だ。
ルミィがヒソヒソと時夫に耳打ちする。
「王子は雷魔法の使い手ですけど、多分濡れちゃったから使用に大分制限掛かってます」
「俺のせいかな?…………そうだな。俺のせいだな」
時夫は自らの過ちを素直に認めた。過ちを認めることで人間的に大いに成長した。
「リカバリーが必要だ。乾かしてあげる魔法とか覚えておけば良かったな。
……ファイアボールとルミィの風の魔法を合わせて温風を作って乾かしてやるってのはどうだ!?」
ピンチから合体魔法を思いついた。特許申請とかこの世界にもあるのかな?
しかし、そんな暇は無さそうだった。
「あなたたちは何かしら?聖女を守りに来たの?さっきの魔法は何かしら。あんなに広範囲に雨の様に水を出現する魔法なんて聞いたことが無いわ」
アーローが時夫たちに興味を持ってしまった。仕方ない。自己紹介するか。
「俺は……新進気鋭の冒険者にして生活魔法のカリスマ……」
ふと王子たちの目線が気になった。本名名乗るのは不味いかな?
王子たちの中での王宮から追い出した時夫の評価がわからない。
「トッキーだ!!」
学生時代のあだ名です。
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