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第1章

68話 もう一人の勇者

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68話

時は少し前のダンジョンテレポートに遡る。

「一夜くーん!」

私の大切な人が目の前でモンスターに囲まれていた。しかし、助けに行くことはできなかった私の職では戦闘することができない付与の魔導師だからだ。それでも助けたいけどタジール隊長に止められていた。そして、大切な人は自ら犠牲になった。

「タジール隊長!沙知を連れて早く地上へ」

「すまん」

私は涙を流しながら歪んだ空間に引き込まれた。

「......どこ?みんなは?」

次に目を開けた時には見知らぬ場所にいた。地上にテレポートするとは聞いていたけどランダムで転移するとは予想していなかった。

「一夜くん.....」

想像もしたくないことが頭を駆け巡った。

「....きっと大丈夫。信じてる一夜...く...ん」

宮田沙知は信じるしかなかった。しかし、あの状況で助かるのは絶望的だということも知っていた。

「嫌なことを考えるのはやめよう。まずは自分の安全を確保しないと。けど....地上に出るんじゃなかったの?」

私は辺りを見渡したが明らかにダンジョンの中だった。灯りは灯っているが先ほどのダンジョンとはまた違う色の光を放っていた。

「なんで転移先が別のダンジョンなのー」

ザッザッ

近くから足音が聞こえる。明らかに人間のものではない。私は息を殺して岩陰に隠れたモンスターの足音が目の前で止まった。

「殺されちゃう」

モンスターが岩を壊そうとするその時だった。遠くから足音が聞こえてきた。その足音は綺麗に飛び跳ねるとモンスターの頭上を捉え剣で真っ二つに両断した。

「はっはっはっ、どうだモンスターめ。私のこの流水神剣には叶うまい」

「............」

私は足音を主と目が合った。


「......何やってるの?夢ちゃん?」

「なっ!宮田さん」

彼女の名前は笹織夢奈、クラスメイトだ。元の世界から夢ちゃんは少し他の人とは変わっていたけどこちらの世界にきてからさらに様子がおかしくなっていた。

「夢ちゃんもここに転移させられたの?」

「.......そっそうだよ...」

夢ちゃんは少し人と話すのが苦手だった。
しかし、自分の情熱が持てるものに関しては人が変わったように騒がしくなる。

「宮田さんも無事だったんだ....」

「うん、ありがと夢ちゃん。助かったよ」

「.....えへへ」

「夢ちゃん強いんだね。びっくりしたよ」

「私も一応...職が勇者だしこのくらいなら」

勇者というと榊に目が行きがちだがこの笹織夢奈も立派な勇者の職を持っていた。


続く
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