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機械人形の思い
③
しおりを挟む「式を挙げた後ではいけませんか?」
『そう言うと思った』とでも言うように目でモノを言うシュリは、もう一つ衝撃的な言葉を吐いた。
「お前が逸れを望むなら、俺は一向に構わないが、元の姿に戻れないから少し面倒な事が起こるかも知れない」
「面倒な事……ですか? 」
首を傾げるイシスに、シュリは、意地悪な笑みを浮かべた。
後ろ手で、自室としてあてがわれた部屋の扉を開けて、彼女を抱えたまま滑り込み、閉める。
そして、メイクされたベッドにイシスを降ろすと、彼女に覆い被さった。
掻き分けるイシスの額には、彼の瞳の色と同じ宝石。
彼と共に有ると言う印が煌めく。
そうしてシュリは、漸く唇を開いた。
彼女の質問に答える為に。
「イシス、お前に力を与えた為に、人を操る能力を失った。だから、必要以上に人が寄ってくる」
「は…い? 」
「今までは、寄り付かれないよう、力ではねのけていたが、それも出来まい……」
「それは…………」
もしやと、勘ぐるイシスの瞳は、口ほどにモノを言い、シュリは、まるで本当に困ったような表情を美麗なかんばせに貼り付けた。
それこそ、処世術そのままに。
「人が……寄って来るのですよね…………。美しい女性も、例外無くですか? 」
「さぁ? どうかな? 人間だけで済むかどうかも疑わしいね。あしらうのが面倒だったから、力を行使していた訳だしねぇ……。どうなるか解らないな…… 」
シュリの言葉にイシスは彼の服の裾をギュッと握り締める。
そして、おずおずとシュリに言った。
「嫌です……。他の人を見ないで下さい……。シュリさまは、私だけの……」
「あぁ、俺は、お前だけのモノだ。イシス。そして、お前は俺だけの女神だ。誰にも渡すつもりは無い…… 」
シュリの告白に、イシスの瞳から涙の粒がこぼれ落ちる。
「シュリさまぁ……」
呟くイシスの唇を、素早く奪ったシュリは、深い深い口付けを彼女に落として。
「やっぱり、元の姿うんぬんに関わり無くイシスが欲しくなった。身も心も繋げ合おう。Noは受け付けない」
シュリの俺様的言動。
イシスは、はにかむように笑って、逸れを受け入れた。
二人の物語は、今漸く始まった。
END
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