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魔術師ふたり

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「じゃあ、言う」


そう言って、スーハーと深呼吸する男。

カッコ良く真顔になっても、数分と持たない。

至極、残念な男だった。


「あのね、…… 落ち着いて聞いてね。実は……… 突破されちゃったぁ~」


てへぺろ。


間延びした声音で、てへぺろっと言う態度で、ごまかしに掛かってみたが、シュリの反応は、無表情。

その無表情のまま、


「宇宙空間で、星をくるむように本体あんた、展開していたと思ってたんだが、違ったのか? 」

「う~、違わない。その通りです」

「なら、何故、侵入を許した? 」

「何故と言うより、誰って、聞いてほしい……… 」


そしたらなんとな~く侵入理由が解るから~と、会話を違う方へ進めようとする父。

はぁ……、と、溜め息を吐く息子がふと目を細めた。

そして、それと同時に彼の父も弾かれたように勢い良く顔を上げた。

シュリの雰囲気が何となく違う。

何がどう違うのか、表現はしにくいのだが、何かが違う。

今現在、3割り増しで既に美貌の主と化しているシュリだ。

この時点で、ハスターが混ざり込んできても、見た所、代わり映えしない。

これを踏まえての、父親の行動は流石と言えよう。

この男、完全体では無いと言うのにだ。








そう、シュリの父は今現在、完全体では無い。

シュリの言った通り、この星を取り囲んで浮遊している巨大なタコモドキが本体なのである。

正確には、タコに似た頭部、イカのような触腕を無数に生やした顔、巨大な鈎爪のある手足、ぬらぬらした鱗に覆われた山のように大きなゴム状の身体、背中にはコウモリのような細い翼を持った異形の生物。

それが、とある人間の身体に取り付き、我が者にしたのが、この父親な訳だ。

勿論、宿主の意識は壊されていない。

むしろ、意識同士が合わさって溶け合っているとでも言おうか。

異形の者の方があれこれ考える意識が無い分彼が全面に押し出されていた。


っと、大分話が脱線したな。

戻すとしよう。


シュリの、ガラス玉のような青碧の瞳が、じっと父親を見据えている。

青色をベースに、碧色が滲み込まない程度に混ざり合っている、彼の瞳。

まるで其処に、小さな地球が嵌まっているように見える。

俗に言う、アースアイと言う瞳だった。

その双眸が父を射抜く。


「で、何時までだんまりを決め込むつもりですか? さっさと言いなさい」

「は……あぁ、つっ………… やっぱり君だったんだねぇ…… 」


シュリを君と呼んだ父が、がっくりとうなだれる。

そんな彼の両頬をシュリは両手で挟み込んでジッと父の顔を覗き込む。


「何、不抜けて居るんですか。突破されたのが悔しいのは察しますよ。後は私が片を付けます。少し手伝って頂きますが、まずは誰か、言いなさい」


明らかに口調が違う。

シュリなのに、別人のようだ。


「クトゥルフ… 兄上」

「ははっ……… やっぱ、ハスターだったか…… 」








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