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prologue

聖女は泣く泣くその場を後にしました。

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「あ、あ、あ、あ、だ大丈夫ですっ!考え事をしていただけですので!! 」

「なんだ、私と居るのに考え事か? 」

「でもっ、考え事と言っても、アッシュ様の事ですから問題ないですっ! 」


と、アッシュの事を考えていたと思わず暴露してしまったわたくしでしたが、そこで初めて恥ずかしい事を言った事に気付いて……。

嫌、もう真っ赤っかになりました。


「えっ、そ、そうなのか? 」


返ってくる声が動揺を隠せないようです。

少しどもった声に動揺を感じ取ったわたくしは、何処かほっとしてしまいました。

お姿が見えない分、何だかわたくしを気にかけて下さっている様で、嬉しくなったのです。

その時、タイミングよく、紅茶とお菓子が目の前に出されました。

あくまで優雅におしとやかに、公爵令嬢ですから、頂きます。

でもその時です、「お嬢様~っ!お戻りを~っ! 」と、焦った声が聞こえました。

それはわたくしの専属侍女の声でした。


「珍しいですね? シンディー様の専属侍女のノンナでは無いですか? 」


と、セジューが問うとわたくしは頷きました。


「シンディー嬢、残念だが御開きだ」


うん、本当、この人は……、淡白にあっさりバッサリと、この逢瀬を切り捨ててくれますわね。

このひとはわたくしに弱いと言いながら、わたくしの急用●●を優先させてしまう。

わたくしの急用よりも、御自身が優先されて然るべき御方ですのに、アッシュ様は、御自身を蔑ろになさる。

わたくしは、それが悔しいのです。


「お嬢様~っ! シンディー様っ! 」


ノンナの声が近くに響きます。

ノンナには、彼女にだけは、わたくしアッシュ様との逢瀬を話しているのです。

わたくしが、アッシュ様をお慕いしている事もノンナは知っていて、応援してくれているのです。

そのノンナが、此処までわたくしを迎えに来るとは、只ならぬ何かがあった証拠です。

わたくしは残念ですが、この場を辞さなくてはなりません。


「アッシュヴィン様、お名残惜しいのですが、失礼させて頂きますわ…… 」


そう言ってカーテーシーをアッシュの前で作り、後ろ髪引く思い出この場を後にしました。

うううっ、ノンナのバカァッ。


わたくしは、放り出されるようにノンナの前に現れました。

いえ、文字通り放り出されたようなものですわね。

突然出現したわたくしに、ノンナは一瞬目を見張りましたが、何事も無かった風でわたくしに言いましたの。


「お嬢様、王宮から至急のお呼びだしで御座います。今からすぐお支度を…… 」


王宮からの呼び出し……。

一体、何なのでしょう。

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