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prologue
神が近しい世界に産まれた女の子はとびきりの可愛い女の子です
しおりを挟む神々と人間が近いこの世界は、神々の伴侶に人間の血を混ぜた。
強すぎる神力では到底地上を統べる事は出来ない。
様々な制約が厳しく、神を敬い信じる総てのものに慈悲と慈愛を注ぐ為、彼等は人の子を伴侶に求めた。
その神々の伴侶となった者を、聖女あるいは聖者と称した。
そして、此処に今正に生まれ落ちた命があった。
その赤ん坊は赤ちゃんだと言うのに、それはそれは見目麗しかった。
雪のように真っ白な肌。
それに映える血色の良い桃色の唇は、瑞々しく潤い可愛い。
切りそろえ整えられて弧を描く様な眉は何も手を加えられていないと言うのに何というか、ととのい過ぎている。
目はぱっちりとして二重で大きく、水色と深い青と白がマーブル模様のように入り混じる瞳は、まるで小さな地球のように輝いていた。
そんな赤ん坊は、幼き身にもかかわらず、成長すれば美しくなるであろう事が伺える赤ん坊であった。
そんな美しい赤ん坊は、女神の祝福を受けていた。
愛と美と豊穣の女神の愛し子。
赤ん坊はそんな肩書きを持って産まれたのだった。
籐の乳母車に乗せられ薔薇園を散歩中の事だった。
「うふふふ……、シンディーったら、本当に可愛いわ。ん~~、風が気持ち良い? ん~~、そうなの? 」
母親が、赤ん坊のぷくっとした頬をつつくと、キャッキャッと手を降ってはしゃぐ。
そよ風がシンディーと呼ばれた赤子の頬をくすぐった。
その時だった。
フワッと風が舞い、白くて小さな花びらが舞飛んだ。
薔薇園に無い薄桃色の小さな花弁が一面に舞い散る様は圧巻だ。
一言で言えば美しい舞。
小さな花びらは、桜と言われる花の花弁だったが、問題は其処では無かった。
此処に桜の花弁が舞う、その事実が問題だった。
赤子の母の瞳が、驚愕の二文字を表すかのように揺れる。
「何て事なの……。この子はまだ赤ん坊なのよ……。なのに何故神は…… 」
母の言葉尻に絶望が滲む。
シンディーの母は、舞い散る桜の花弁に、神の啓示を読み取った。
『愛と豊穣の女神の愛し子よ。そなたを我が嫡男の花嫁に……。水神の花嫁とする』
神のお告げは絶対。
逃れることは出来ない。
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