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朱色の欠片
妲己と太公望
しおりを挟む『あいや理解した。妾は、誰の害にも、この世界の害にもならぬ。それ以前になれぬしのう…… 』
そう言うと女禍は、大きな眼でラスティエルを見た。
顔の上半分ほど有る目を、瞬かせながら。
「アイセンレイト様、太公望様、わたくし改めて、女禍様の見方をする事に致しました。つきましては、残りの2つの女禍の欠片を探しに行こうと存じます。聞くところによると、妲己と言う方が女禍様の欠片を探し、1つ手にしたようですわね」
ラスティエルの言葉に、アイセンレイトと太公望は驚いた。
確かにラスティエルの言う通りだった。
ひとつは妲己に奪われている。
それは太公望も知っていた。
『どうしてそれを……、と、言いたい所じゃが、女禍から聞いたと言うのが事実だろうな』
「はい、そうです」
頷くラスティエルは、当然と言った風体で頷いたのだった。
そんな時だった。
風がざわりと吹いて、アイセンレイトが何かに気付く。
「結界が破られた……。不味い、来るぞ」
『は? 何が…… 』
「太公望! 入れっ!! 」
アイセンレイトが太公望に向かって自分の中に入れと促し、すかさず2人は重なり、太公望がアイセンレイトに溶け込むように消えると、間髪入れずに領巾を翻して妲己が空から舞い降りた。
アイセンレイトは、ラスティエルを後ろ手に庇いつつ、降りてきた妲己を睨み付けた。
「やっほ~! 元気だったぁ? 太公望ちゃあん♥ 」
両手を胸の前まで上げて、手を振り、ウインクをかます白い髪の女、妲己。
『妲己、そなた地球から離れて此処に何をしに来た』
太公望が、アイセンレイトの身体を借りて言った。
「やだぁ、とぼけちゃって。勿論、女禍様の欠片の回収に決まってるじゃない♥ それ以下の何があるというのかしらん♥」
顎に人差し指を置いて、かくんと首を傾げる妲己の姿があざとい。
美人と可愛いの両方を兼ね備えている彼女は、魅了の力を有するだけあって自分の生かし方を良く知っていた。
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