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北の大森林の主

急患③

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「さぁ、冗談はさて置きちょっと離れて。注射で薬を入れるから」


アイセンレイトはそう言って騎士達を下げてしまった。

不思議に思って声をかけたのは、副団長だった。


「飲ませるのではないのですか? 」

「流石にこの状況で飲ませるのは、正解では無いね。効き目が悪いし、時間も掛かる」


アイセンレイトは、言葉を紬ながらストレージから注射器を入れてある、銀のケースを取り出した。


「だから静脈から痛み止めを注射する」

「なっ、我等を騙したのか!? 」

「嫌、試したんだ」


ケースから注射器を取り出し、小瓶から吸い出す。

腕をゴムで圧迫すると、


「手も足も無いこんな人間を生かすんだ、本人の血を吐くような努力が必要だし、生き残っても誰かの手を煩わす。それも、一時では無く一生だ。コイツの周りの人間になるあんた達の覚悟の程が知りたかった。其処まで考えてたか、お前ら」


そう言って、男に注射を打ち込んだ。

騎士達ははっとして、アイセンレイトを見た。


「そう言う事だよ。生かしても、死なせてくれとわめき散らすのが普通の中で、あんた達は、この男をどう扱う? この儘では排泄すら人の手を借りなければならない。副団長さん」


そう言って、アイセンレイトは副団長を見やった。


「スウェンと申します。アイセンレイト様。私達は浅はかでした。ただ、ただ、団長に助かって欲しくて後先や団長の気持ちを考えて居ませんでした。私は…… 」

「親友、だもんねぇ…… 」


アイセンレイトはスウェンを横目で見て溜め息を吐いた。

すると、周りの気落ちした様子に居たたまれなくなったのか、どうなのか。

アイセンレイトの服の袖を引く手があった。


「アイセンレイト様…… 」


心優しいラスティエルの見上げる顔が其処に有る。

『目は口ほどにものを言う 』

あぁ、これは正しくそれだ。

アイセンレイトは彼女を見下ろして、そう思ったのだった。





病人と、騎士を数名客室に置いておくと、アイセンレイトはリビングへと残りの騎士を連れ、移動してきていた。

これから彼等はどうしたら良いのか。

それを指示する為、此処に彼等を集めたのだ。

今一度、長丁場になるこの事態を、彼等に自覚してもらう為と、自身の彼等を受け入れた責任と覚悟を改めて決めることを。

アイセンレイトは己に課した。




 
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