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prologue
prologue⑦
しおりを挟むそれと同時に、森へと駆け込む銀狼。
逸れを見て、騎士達が続けて森へと侵入して来た。
部隊は二手に別れ、大半が森の中心部に向かい、残った10人程度がフェンリルに対峙していた。
「やはり此処は魔物の巣くう森だったか! 王子のおっしゃった通りだ! 皆の者! 森をこの手に!! 魔物達を退治してこの森を王子に捧げるぞ! 」
『ふむ、本来の目的はそっちか。欲深いのぅ…… 』
騎士の言葉にレイが呟くと、弾かれたように背中のラスティエルが言う。
「申し訳御座いません! わたくしが此方へ来てしまったせいで…… 」
『嬢ちゃんのせいでは無いぞ。この森は常に欲深き者共に狙われておるゆえ…… 』
「でも…… 」
『嬢ちゃんはあ奴等の出汁に使われただけじゃよ。気にするでない。逸れより、奴らを蹴散らすでな。ちと、耳を塞いでおれ…。でなければ鼓膜を破くぞ…… 』
そう言うと、レイはラスティエルが耳を塞ぐのを待って大きく息を吸った。
ドオォン
そんな感じだった。
大地を震わすかの如き大音。
ラスティエルを乗せたまま、レイは更に体躯を大きくして、吼えた。
その衝撃波で、騎士達は無様に弾き飛ばされた。
衝撃波で、耳から血を流す者も居る。
その様な者達は皆、音を失った。
フェンリルであるレイからすれば、当然の報いと言えた。
「よし、行くぞ」
そう言ってレイは踵を返した。
跳ねるように宙をかけると、ラスティエルが心配そうに騎士達を見やった。
「あのままにしておいて良いのでしょうか? 」
「良い良い。お嬢も人が良すぎるのぅ。あれらは、そなたの命も狙っておったと言うのに」
「彼等は命令に従っているだけですもの。個人の意識は其処に有りませんもの」
「はっはっ、何と、こりゃあ、一本取られたわ」
ラスティエルの考え方に、レイは豪快な笑い声を上げた。
それが唐突に止むと、ラスティエルは不思議に思い、レイと同じ場所を見やった。
その先には、あの別れた騎士団がいた。
此方は、団と言って良い程の人数が陣形を取って点在していた。
まるで何かを取り囲むように。
その陣形の中心部には、銀色に光る何かが佇んでいた。
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