出逢えた幸せ

ずーちゃ

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Extra3:幸せのいろどり ―透side―

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「透と飲みに行くって言ったら、こいつらも行きたいって聞かないからさ」

「だってー、篠崎さんて仕事以外で話すチャンスがなかったから……ねぇ?」

 道の隣に座った女の子が、俺の隣の女の子に同意を求めるように目配せをする。

「そうなんですよ。一度くらいゆっくりお話したかったのに、急に転勤するって言うから」

「透は、モテるのに鈍感だからな」

 そう言いながら道は、俺のグラスにビールを注ぐ。

 お前みたいにモテないよ。と否定すると、「だから、鈍感だって言ってるんだよ」と、楽しそうに笑われた。

「まあまあ、透の前途を祝して乾杯しようぜ」

 道の言葉が合図になって、『かんぱーい』と言いながら、それぞれのグラスをぶつけ合う。

「御栄転おめでとうございます」

「おめでとうございます」

「……ありがとう」

 3人に礼を言いながら、心の中は複雑な思いがしていた。

 少し前の俺なら、何も悩むこともなく、自然に受け入れていたかもしれないけれど、今は……。

「でも急だよな。月曜からだと、引越しとかどうすんの?」

 道の言葉に、俺が「いや……」と首を振ると、今まで笑っていた道は、何かを察したのか急に真面目な顔をする。

「何だ? 何かあったのか?」

 道にだけは言っておこうとは思っていたけど、予想外だった女の子二人の存在に、どうしようかと少し迷うが、俺は言葉を続けた。

「実は……会社を辞めようと思ってる」

「……」

 3人が3人とも声を出さずに、ただ動きを止めて次の言葉を待つような態度に、俺の方がなんだか驚いてしまった。

「驚かないんだね?」

 それはまるで、俺が会社を辞めることを前から勘付いていたように見えた。

「んー、なんとなく、そうなるんじゃないかなって、思ってたよ、なあ?」

 道の言葉に、女の子二人も頷いている。

「どうして?」

 友人である道にだって、胸の内を話したことはないはずだ。

「なんとなく……だよ。さっきも透が来る前に話してたんだよな」

 そう言って、道は隣に座っている女の子に視線を向ける。道と目が合った女の子は、少し遠慮気味に話し出した。

「そうなんです。篠崎さん、最近好きな人できたんじゃないかって、噂してて」

「え……?」

 好きな……って、直くんのことだろうか。そんなに顔に出ていたなんて、信じられなかった。

「透って、いつも淡々としてるじゃん? なのに、昨年の暮れぐらいからやけに楽しそうにしてたかと思えば、急に落ち込んでたり」

「そうそう」

 道の言葉に、俺の隣の女の子が相槌をうちながら、俺の顔を覗きこむ。

「だからここんとこ、篠崎さんの人気、急上昇だったんですよ?」

 女の子の言葉に、首を傾げることしかできない。それでどうして、人気が上がるのか、全く分からなくて。

「だから、鈍感だって言ってんだよ。で? 誰なの? 透の相手って、うちの社長令嬢じゃないんだろ?」

 三人が言うには、社長令嬢との結婚を破談にするのなら、会社は辞めるんじゃないかと予想していたらしい。

 確かにその予想は当たっていて、俺は密かに苦笑してしまった。

「どんな人なんですか?」「篠崎さんの恋人だもん、可愛いんでしょうね」

 興味津々に訊いてくる3人に、苦笑しながら俺は……直くんのことを思い出していた。

「……うん。とても可愛いよ」

 つい、言ってしまった自分の言葉に、顔が熱くなった。そんな俺を見て、3人は大騒ぎしている。

「……あの、それで俺……」と、言いかけると今まではしゃいでいたのが、面白いくらいにぴたりと止まって俺に注目する。

「……今から、その人に逢いに行こうと思ってるんだ」
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