出逢えた幸せ

ずーちゃ

文字の大きさ
上 下
262 / 351
Extra3:幸せのいろどり ―透side―

(27)

しおりを挟む
 ******


 カーテンの隙間から射し込む明るい日差しの中で微睡みながら、直くんの背中をそっと抱きしめて、確かに腕の中に直くんがいる事を確認してホッとする。

 安心して、またうとうとし始めると、腕の中の身体が僅かに身じろぐのを感じて意識が呼び戻される。

 目を閉じたまま様子を窺っていると、じっと見詰められているような視線を感じる。

「あんまり、見つめないでくれる?」

 思わずそう言って、目を閉じたまま笑ってしまった。

 おはよう、とキスをして、二人で布団の中で抱き合っていると、ずっとこのままでいたい……なんて思ってしまう。

 誰かと一緒に、こんな風に暖かい気持ちになれた朝は、初めてだった。

 身体がだるそうな直くんに、「もう少し、ゆっくりしてて」と言って、先に寝室を出て、遅い朝食の準備をしながら、さっき起きてからの会話を思い返していた。

 ――――
 ――『言い訳するとね、その……、こないだ直くんが起きる前に仕事に行かないといけなかったから……、メモに俺の携帯の電話番号を書いておいたんだけど……』

 ――『だから、連絡くるまで待とうと思ってたんだけど、数日しか経ってないのに、連絡が来ないのが寂しくて不安だったりしてね』

 昨夜、何度も直くんを抱いてしまった言い訳を、並べ立てた俺。

 ――『……食事に誘ったら、直くんがOKしてくれて、凄く嬉しかったんだよ』

 でもそれは、本当の気持ちだった。

 ――『すみません、俺……あの時、番号を控えるの忘れてて……』

 直くんは、そう言ってたけど。多分……忘れていたというのは嘘だろう。

 でも昨夜、また逢って、俺の誘いを断らずに、ついてきてくれた……。

 直くんにとっては、ただ流れのままの行動だったのかもしれないけれど。

 それでも……もしかしたら、このまま……と、そこまで考えて、また性懲りも無く期待をしていることに気付いて自嘲する。

 ――ありえない、そんなことは、ありえない。

 自分の気持ちでさえ、ずっと変わらない自信もないのに……。

 それでも……どうしても直くんの存在が、俺の中でどんどん大きくなっていくのを感じずにはいられない。

 朝食を並べ終わったダイニングテーブルの椅子に座って、そんな事を考えていると、不意に後ろから声をかけられた。

「透さん……」

 振り向けば、直くんがパジャマ姿で立っている。

「直くん、身体、大丈夫なの?」

「うん、俺、腹減っちゃって……」

 身体は辛そうなのに、お腹の辺りを押さえて照れくさそうに言う直くんに、思わず頬が緩んでしまっていた。

「朝食できてるよ、食べようか」

 俺がそう言うと、みるみる嬉しそうな顔になる。

「うわーっ、美味そう! いただきまーす」

「どうぞ」

 二人で向かい合って席に着いて、食卓を囲む。

 本当に美味しそうに食べる直くんの顔を眺めながら、今日くらいはこんな風に、二人でのんびりと過ごしたいな。なんて、考えていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染から離れたい。

June
BL
アルファの朔に俺はとってただの幼馴染であって、それ以上もそれ以下でもない。 だけどベータの俺にとって朔は幼馴染で、それ以上に大切な存在だと、そう気づいてしまったんだ。 βの谷口優希がある日Ωになってしまった。幼馴染でいられないとそう思った優希は幼馴染のα、伊賀崎朔から離れようとする。 誤字脱字あるかも。 最後らへんグダグダ。下手だ。 ちんぷんかんぷんかも。 パッと思いつき設定でさっと書いたから・・・ すいません。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

[R-18] 奴隷のレッスン:騎士団所属の末っ子王子は、イケメン奴隷に身も心も奪われる

山葉らわん
BL
【縦読み推奨】 ■ 第一章(第1話〜第9話)  アラディーム国の第七王子であるノモクは、騎士団長ローエの招きを受けて保養地オシヤクを訪れた。ノモクは滞在先であるローエの館で、男奴隷エシフと出会う。  滞在初日の夜、エシフが「夜のデザート」と称し、女奴隷とともにノモクの部屋を訪れる。しかし純潔を重んじるノモクは、「初体験の手ほどき」を断り、エシフたちを部屋から追い返してしまう。 ■ 第二章(第1話〜第10話)  ノモクが「夜のデザート」を断ったことで、エシフは司祭ゼーゲンの立合いのもと、ローエから拷問を受けることになってしまう。  拷問のあと、ノモクは司祭ゼーゲンにエシフを自分の部屋に運ぶように依頼した。それは、持参した薬草でエシフを治療してあげるためだった。しかしノモクは、その意図を悟られないように、エシフの前で「拷問の仕方を覚えたい」と嘘をついてしまう。 ■ 第三章(第1話〜第11話)  ノモクは乳母の教えに従い、薬草をエシフの傷口に塗り、口吻をしていたが、途中でエシフが目を覚ましてしまう。奴隷ごっこがしたいのなら、とエシフはノモクに口交を強要する。 ■ 第四章(第1話〜第9話)  ノモクは、修道僧エークから地下の拷問部屋へと誘われる。そこではギーフとナコシュのふたりが、女奴隷たちを相手に淫らな戯れに興じていた。エークは、驚くノモクに拷問の手引き書を渡し、エシフをうまく拷問に掛ければ勇敢な騎士として認めてもらえるだろうと助言する。 ◾️第五章(第1話〜第10話)  「わたしは奴隷です。あなたを悦ばせるためなら……」  こう云ってエシフは、ノモクと交わる。 ◾️第六章(第1話〜第10話)  ノモクはエシフから新しい名「イェロード」を与えられ、またエシフの本当の名が「シュード」であることを知らされる。  さらにイェロード(=ノモク)は、滞在先であるローエの館の秘密を目の当たりにすることになる。 ◾️第七章(第1話〜第12話)  現在、まとめ中。 ◾️第八章(第1話〜第10話)  現在、まとめ中。 ◾️第九章(第一話〜)  現在、執筆中。 【地雷について】  「第一章第4話」と「第四章第3話」に男女の絡みシーンが出てきます(後者には「小スカ」もあり)。過度な描写にならないよう心掛けていますが、地雷だという読者さまは読み飛ばしてください(※をつけています)。  「第二章第10話」に拷問シーンが出てきます。過度な描写にならないよう心掛けていますが、地雷だという読者さまは読み飛ばしてください(※をつけています)。

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

【運命】に捨てられ捨てたΩ

諦念
BL
「拓海さん、ごめんなさい」 秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。 「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」 秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。 【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。 なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。 右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。 前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。 ※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。 縦読みを推奨します。

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

処理中です...