出逢えた幸せ

ずーちゃ

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第四章:想う心と○○な味の……

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 それにやっぱり気になっている事がまだひとつある……。

「透さん……、あの……、俺をマンションまで送ってきてくれた人、透さんの……」

 そこまで言いかけた言葉が、透さんにチュッと、リップ音を立てて短いキスを落とされて遮られてしまう。
  
 最後まで言えなかった俺の代わりに、「俺の高校の先輩だった……」と、透さんが言葉を続けた。

「やっぱり……気付いて……」

 それが余計に透さんを傷つけていたんじゃないかって思う。

「ごめんなさ……」そう言いかけた唇に、透さんの人差し指が押しあてられた。

「そのことは、いいんだよ。謝らなくても……。今こうして直くんの気持ちを知ることができたんだから」

 そう言いながら、きつく抱きしめてくれる。それだけで心がホッと落ち着いていく。

 俺も透さんの背中に手を回して強く抱き返すと、腕の中に抱えていた紙袋が二人の身体の間で、カサリと音を立てた。

「あ……、」

 この公園でまた偶然出逢って、突然訪れた幸せに浸っていてすっかり忘れていたけど……!

 腕に抱えたままのクッキーシューを潰してしまうところだった。

 透さんは、抱きしめる力を緩めて、俺が抱えている紙袋に視線を落とす。

「これ、カフェの?」

「うん、今日、誕生日だから……。カフェのスタッフの皆から、誕生日祝いにって……」

「そう……、誕生日だよね」

 透さんは、そう言うとポケットからリボンの付いた小さな箱を取り出して、俺の掌の上にのせる。

「……え? これ……」

「19歳おめでとう」

「お、覚えてたの?」

 確か、出逢った日に一度だけ、透さんに俺の誕生日を教えた記憶がある。

 一度しか言った事なかったのに、覚えてくれてたんだ。

「今日、本当はカフェに逢いに行くつもりだったんだけど……なかなか勇気が出なくて。その……、きっと嫌われてしまっていると思っていたから。ここで待ってても駄目だと思ってたんだけど、もし逢えたらこれを渡そうと思っていたんだ」

 少し照れたように、そう言ってくれる透さんがすごく好き。

 開けてごらん、と促されて、綺麗にラッピングされた箱を開ける。

「うわ……綺麗」

 中に入っていたのは、ブルーのクリスタルのキーリング。

 ダークブルーのクリスタルの中に、ライトブルーの小さな星が散りばめられている。

「……宇宙みたい……」

「直くんと初めて逢った時、星が綺麗だったから。これを見かけた時、直くんを思い出して、気が付いたら買っちゃってたんだ」

 そう言うと、色白の頬を少し赤く染めて、俺から微かに視線を逸らせている。

 透さんが時々見せる、年上なのに可愛いその仕草をされると、いつも俺の顔が緩んでしまう事、知ってるのかな。

「透さん、ありがとう。俺、これ一生の宝物にする!」

「一生って……、大げさだよ直くん」

 またお互いの視線が絡んで、短いキスを交わした。

 クリスタルを街灯の灯りに透かしてみると、中の薄いブルーの星が煌いていて綺麗だった。

 その時、冷たい風が吹いて、桜の花びらがひらりと舞い落ちる。

 頭上を見上げると、美しい満開の花を纏った枝の隙間から見える夜空は、さっきまで覆っていた雲が途切れて、美しい星が瞬いていた。

 ――まるで、透さんと出逢ったあの夜のように。

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