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第四章:想う心と○○な味の……
(13)
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「自分の足で、自分の気持ちを、好きな人に伝えに行きたいんです」
透さんへ、想う気持ちを伝えたい。今更遅くても、当たって砕けたとしても。
「……は?」
桜川先輩は、何の話してんだ? こいつ、って、感じの顔をしている。
俺の言葉は端折りすぎていて、きっと桜川先輩にしてみれば、何の事だかさっぱり解らないと思う。
でも、自分の気持ちを口に出してみたら、なんか止まらなくなってしまった。今の俺、すげえテンション高いかも。
苦手な桜川先輩の前でこんなになってるの、本当に不思議だけど。
「みっきーがメキシコに行ってしまったら寂しいけど、それでも、もし二度と会えなくなったとしても、遠く離れていても、みっきーには幸せになってほしいって、心から願えると思ったんです」
「え?」
「でも俺には、今日も明日も未来も……ずっと一緒に居たい人がいるんです」
透さんの傍に居たい。一緒に幸せになりたい。
それが叶わない願いだとしても、もう会えなくなるなんて、とても考えられなかった。
今、会わないと……。今、伝えないと……って。
このまま、透さんが俺の事を忘れてしまったら……。もう二度と会うことが出来なくなってしまったら……。
そう考えるだけで、自分の人生が終わってしまうような気がして。激しい焦燥感に胸が締め付けられる。
透さんが、少しでも俺という存在を覚えていてくれる。たったそれだけの事が、どんなに幸せな事なのかって、気付いたから……。
「……ちょっ、ちょっと待て! 兄貴がメキシコって何? なんの事だ?」
俺が言いたい事を全部言って、勝手に透さんへ想いを馳せていたら、桜川先輩が焦ったように詰め寄ってきた。
「……え……? みっ……、お兄さんがメキシコに……行くって……」
「だから! なんの話だよ、それ!」
早く言えと、俺の胸ぐらを掴んでくる桜川先輩の真剣な表情。
――え……? もしかしてメキシコの話、桜川先輩は知らないのか?!
みっきーが、まだ家族に伝えていない事を、俺が先にばらした形になった事に気付いて、めちゃめちゃ焦る。
「う、あ……、あの……、なんかメキシコに行くって……あ! 遊びに行くのかなぁ~」
苦し紛れに誤魔化してみたけど、桜川先輩が納得するわけ……ねぇ……よな……。
「お前……今、二度と会えなくなってもって、言ったよな?」
「いや、あ、それはただの例え話っつーか……」
問い詰められてもまだ誤魔化す俺を、桜川先輩は「ふんっ」と、不満そうに一瞥し、胸ぐらを掴んでいた手を荒々しく突き放した。
「まぁいい。兄貴に確認すればいい話だな」
やっと解放された事に少しホッとして、掴まれていた襟元を直しながら桜川先輩を盗み見ると、顎に手を添えて何やら考え込んでいる。
「あ……、あのぅ……俺、もう行ってもいいですか?」
恐る恐る訊く俺に、キッと、きつい視線を送ってくる桜川先輩。
「お前、本当に兄貴とは恋人の関係ではないんだな?」
「違います……」
「信じていいんだな?」
「……はい」
――桜川先輩は、何故そんなに俺とみっきーの関係を気にするんだろうか……。
ふと、そんな疑問が頭に浮かぶ。
俺やみっきーのいい加減な性格が嫌いだとは言ってたけど……。今日の先輩は、恋人かどうかなのかを気にしているように思える。
「分かった。もう用はないから、早く行けよ」
それだけ言い残し、踵を返して去って行く桜川先輩の後ろ姿を見送りながら、――ま、そりゃ弟だからか……。と、俺は一人で勝手に納得する。
大事な兄が、俺みたいないい加減で、その上気に入らない奴と恋人だなんて、阻止したいに決まってるよな。
今までの自分のだらしなさの所為だと分かっているけど、随分嫌われてるんだなと、小さな溜息がひとつ漏れた。
透さんへ、想う気持ちを伝えたい。今更遅くても、当たって砕けたとしても。
「……は?」
桜川先輩は、何の話してんだ? こいつ、って、感じの顔をしている。
俺の言葉は端折りすぎていて、きっと桜川先輩にしてみれば、何の事だかさっぱり解らないと思う。
でも、自分の気持ちを口に出してみたら、なんか止まらなくなってしまった。今の俺、すげえテンション高いかも。
苦手な桜川先輩の前でこんなになってるの、本当に不思議だけど。
「みっきーがメキシコに行ってしまったら寂しいけど、それでも、もし二度と会えなくなったとしても、遠く離れていても、みっきーには幸せになってほしいって、心から願えると思ったんです」
「え?」
「でも俺には、今日も明日も未来も……ずっと一緒に居たい人がいるんです」
透さんの傍に居たい。一緒に幸せになりたい。
それが叶わない願いだとしても、もう会えなくなるなんて、とても考えられなかった。
今、会わないと……。今、伝えないと……って。
このまま、透さんが俺の事を忘れてしまったら……。もう二度と会うことが出来なくなってしまったら……。
そう考えるだけで、自分の人生が終わってしまうような気がして。激しい焦燥感に胸が締め付けられる。
透さんが、少しでも俺という存在を覚えていてくれる。たったそれだけの事が、どんなに幸せな事なのかって、気付いたから……。
「……ちょっ、ちょっと待て! 兄貴がメキシコって何? なんの事だ?」
俺が言いたい事を全部言って、勝手に透さんへ想いを馳せていたら、桜川先輩が焦ったように詰め寄ってきた。
「……え……? みっ……、お兄さんがメキシコに……行くって……」
「だから! なんの話だよ、それ!」
早く言えと、俺の胸ぐらを掴んでくる桜川先輩の真剣な表情。
――え……? もしかしてメキシコの話、桜川先輩は知らないのか?!
みっきーが、まだ家族に伝えていない事を、俺が先にばらした形になった事に気付いて、めちゃめちゃ焦る。
「う、あ……、あの……、なんかメキシコに行くって……あ! 遊びに行くのかなぁ~」
苦し紛れに誤魔化してみたけど、桜川先輩が納得するわけ……ねぇ……よな……。
「お前……今、二度と会えなくなってもって、言ったよな?」
「いや、あ、それはただの例え話っつーか……」
問い詰められてもまだ誤魔化す俺を、桜川先輩は「ふんっ」と、不満そうに一瞥し、胸ぐらを掴んでいた手を荒々しく突き放した。
「まぁいい。兄貴に確認すればいい話だな」
やっと解放された事に少しホッとして、掴まれていた襟元を直しながら桜川先輩を盗み見ると、顎に手を添えて何やら考え込んでいる。
「あ……、あのぅ……俺、もう行ってもいいですか?」
恐る恐る訊く俺に、キッと、きつい視線を送ってくる桜川先輩。
「お前、本当に兄貴とは恋人の関係ではないんだな?」
「違います……」
「信じていいんだな?」
「……はい」
――桜川先輩は、何故そんなに俺とみっきーの関係を気にするんだろうか……。
ふと、そんな疑問が頭に浮かぶ。
俺やみっきーのいい加減な性格が嫌いだとは言ってたけど……。今日の先輩は、恋人かどうかなのかを気にしているように思える。
「分かった。もう用はないから、早く行けよ」
それだけ言い残し、踵を返して去って行く桜川先輩の後ろ姿を見送りながら、――ま、そりゃ弟だからか……。と、俺は一人で勝手に納得する。
大事な兄が、俺みたいないい加減で、その上気に入らない奴と恋人だなんて、阻止したいに決まってるよな。
今までの自分のだらしなさの所為だと分かっているけど、随分嫌われてるんだなと、小さな溜息がひとつ漏れた。
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